“エンジニアの効率活用”も――進む運用管理自動化、マルチクラウド対応:調査リポート
IDCジャパンが国内のITインフラ運用管理サービスの動向に関する調査リポートを発表。マルチクラウドへの対応や運用自動化に注力する国内ITサービス事業者の姿が浮かび上がった。自動化後のIT人材の在り方も予測する。
IDCジャパンは2015年11月19日、国内のITインフラ運用管理サービスの動向に関する調査リポート「2015年国内ICTインフラ運用管理サービス動向:進む自動化とマルチクラウド対応」(J15020107)を発表した。SI事業者や通信事業者など11社のITインフラ運用管理サービスへの取り組み状況を調査したもの。
IDCジャパンでは、パブリッククラウド型のIaaS(Infrastructure as a Service)の需要の高まりとともに、国内ICTサービス事業者のICTインフラ運用管理サービスには、自社以外の複数の主要主要なIaaSを含むマルチクラウドへの対応が求められるようになってきている、と指摘する。
今回の調査に先立つ2015年3月にIDCジャパンが実施したユーザー調査では、IaaSを導入するユーザー企業の半数近くが、その監視をIaaSの標準監視機能以外のツールで行うと回答していた。この結果についてIDCジャパンでは、事業部門側の意向などにより、多様なシステムでパブリッククラウドを利用するようになった結果、ユーザー企業ではハイブリッドクラウド、マルチクラウドへの対応が求められていたものの、IaaSの標準監視機能側が十分に対応していなかったことが要因であったと分析している。
サービス提供側の事業者を対象とした今回の調査では、多くの事業者がユーザー企業のニーズに応えるために、自社の運用管理サービスでAWS(Amazon Web Services)やVMware vCloud Airなどの主要なパブリッククラウドサービスを管理できるよう取り組んでいることが分かったという。
この他、ユーザー企業において仮想化やマルチクラウドの利用が進むことで、ITインフラの運用管理は複雑化しつつあることも指摘。「一部のICTサービス事業者は、複雑化する運用管理を効率化するために、コグニティブ技術などを活用した自動化と、これを前提とする運用管理体制の変革にも取り組んでいる」(IDCジャパン)という。
これらの調査結果を受け、IDCジャパンでは、顧客専任担当者の業務や障害切り分けといったフロントエンドに近い業務を中心に、今後、運用管理の自動化が進むと予想している。また、バックエンドの専門エンジニアが複数の顧客に対応するなど、“エンジニアの効率活用”も進むとした。今後、このような運用管理の自動化への取り組みは、IT業界全体、さらには産業を超えた広がりを見せるとIDCジャパンでは見ている。
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