Windows 10 Mobile:Tech Basics/Keyword
スマートフォン/小型タブレット向けOSの「Windows 10 Mobile」。PC向けWindows 10との共通点や違いは? 注目すべき点をまとめる。
「Windows 10 Mobile」(ウィンドウズ・テン・モバイル)は、マイクロソフト開発のスマートフォン/小型タブレット(ファブレット)向けOSである(最初のリリースは2015年)。PC向けWindows 10と基本的なアーキテクチャは共通で、(制限はあるものの)同じアプリをWindows 10搭載PCでもWindows 10 Mobile搭載スマートフォン/タブレットでも実行できる。
PC向けWindows 10と共通アーキテクチャのモバイルOS
マイクロソフトはWindows 10の世代から、多様なデバイス/フォームファクタに対して、基本的に共通のソフトウェアアーキテクチャのOSを提供するという方針を打ち出している。
Windows 10 Mobileもまた、PC向けのWindows 10(Home/Pro/Enterpriseなどのエディション)と共通の基盤を備えている。それ故にPC向けWindows 10と同じ機能を数多く装備している。
PC向けと同様に、オンラインストレージ「OneDrive」や音声認識機能「Cortana」にも標準で対応している。また、OneDriveとMicrosoftアカウントを利用して、複数のPC/モバイル機器間でWindowsの各種設定を同期する機能も備えている。
画面のUIや操作方法も、PC向けWindows 10とよく似ている。
その上でWindows 10 Mobileは、以下のようにPCより性能の低いスマートフォン/タブレットでも実用的に使用できるように設計されている。
項目 | 内容 |
---|---|
フォームファクタ | スマートフォン、小型タブレット(ファブレット) |
画面解像度 | 800×480ピクセル〜2560×2048ピクセル |
画面サイズ | 3インチ〜8インチ |
メインメモリ | 512MB以上 |
ストレージ | 4GB以上 |
Windows 10 Mobileのシステム要件 |
同じバイナリの「UWPアプリ」がPCでもスマホでも実行できる
Windows 10では、新たに「UWP(Universal Windows Platform)」と呼ばれるアプリケーション仕様が定められた。これに従って作られた「UWPアプリ」は、Windows 10搭載PCでもWindows 10 Mobile搭載スマートフォン/タブレットでも、同じバイナリのまま実行できるとされている(もちろんアプリの開発段階では、画面サイズなどハードウェアの違いをある程度意識した設計が必要だが)。
そのため、アプリの開発や動作テスト、展開(インストール)といった作業を、PCでもモバイル機器でも共通の手順で実施しやすい(別々に対応せずに済む)というメリットがある。
PC向けWindows 10との大きな違いは?
一方、従来のWin32/Win64アプリ(デスクトップアプリ)や.NET Framework対応アプリ、Windows 8.x用のWinRTアプリはWindows 10 Mobile上では実行できない(以前のWindows Phone 7.x/8.x向けアプリは実行できる)。PC向けWindows 10とWindows 10 Mobileの両方で同じアプリを実行できるようにするには、UWPアプリにする必要がある。
その他の大きな違いとしては、デスクトップ画面やコントロールパネル、コマンドプロンプトがWindows 10 Mobileには存在しないことが挙げられる。
Windows 10 Mobile搭載機がPCに「化ける」Continuum
「Continuum(コンティニュアム)」という機能を利用すると、Windows 10 Mobile搭載スマートフォン/タブレットに外部ディスプレイやキーボード、マウスを接続したときに、自動的に、あたかもデスクトップPCのように操作できるようにUIが変わる。
Continuumによる画面表示
これはWindows 10 Mobile搭載機に外部の大型ディスプレイをつないだところ。実行中のPowerPointが大画面に合わせて全メニューを横一列に表示しているほか、ホーム画面がPowerPointに重なって表示されており、ちょっと見ただけではPC向けWindows 10と区別が付かない。
PCほどのハードウェア性能を必要としない用途であれば、スマートフォン/タブレット+外部ディスプレイなどでPCと同等の作業環境を実現できるということだ(マルチウィンドウには対応していないようだ)。
ただ、Continuumを利用できるのは、ハイエンドのスマートフォン/タブレットに限られる。日本国内で発表済みのContinuum対応スマートフォンは、本稿更新時点で次の製品に限られる。
- HP Elite x3(日本HP)
- MADOSMA Q601(マウスコンピューター)
- NuAns NEO(トリニティ)
- VAIO Phone Biz(VAIO)
生体認証を実現する「Windows Hello」をサポート
(PC向けと同様に)Windows 10 Mobileは虹彩や指、顔といった生体による認証機能を備えている。
例えばマイクロソフトが販売しているWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「Lumia」シリーズのうち、上位機種では赤外線センサーによる虹彩認証でサインインしたりロックを解除したりできる。
AD参加やGP適用は不可だが、Azure ADやMDMによる統一的な管理が可能
企業内システムでの利用という観点では、Windows 10 Mobileは従来のActive Directory(AD)に参加できず、グループポリシーの適用もできないことが筆頭に挙げられやすい。
ただし、Windows 10世代のID連携やMDM(モバイルデバイス管理)には対応している。
例えばマイクロソフトのID管理サービス「Azure Active Directory(Azure AD)」のアカウントで、Windows 10 Mobileにサインインできる。企業内設置のADとAzure ADを連携させれば、企業内システムでもパブリックなクラウドサービスでも同一アカウントでシームレスに認証できる、いわゆるシングルサインオン(SSO)を実現できる。
またマイクロソフトのデバイス管理サービス「Microsoft Intune」を利用すれば、Windows 10 Mobile搭載機にアプリを配布・展開したり、リモートから全データを消去したり、といった管理ができる。
以上の機能はPC向けWindows 10も対応しているので、Windows 10を搭載しているならPCやスマートフォン/タブレットといった区別なく、同じ手法で管理する術がある、ということだ。
OSの更新はマイクロソフトが配信
Windows 10 Mobileのアップグレードやセキュリティパッチ配信は、PC向けと同様、Windows Updateのシステムが用いられる。また(Android OS搭載機の場合のように)端末ベンダーや通信キャリアではなく、マイクロソフトがパッチなどを主体的に配信する。そのため、新たな脆弱性が発覚したとき、Windows PCと同程度の早さでセキュリティパッチが適用できることが期待される。
また企業向けエディションの「Windows 10 Mobile Enterprise」の場合、システム管理者がパッチ適用を管理できる「Windows Update for Business」をサポートしている。
Windows 10 Mobile日本語版を搭載したスマートフォンは、既に複数製品が日本国内で購入できる(ただしマイクロソフト「純正」であるLumiaシリーズは国内では未発売)。
ただモバイルOSでは後発ゆえ、アプリの数・質という点で先行のiOSやAndroid OSに大きく後れを取っている。
その一方で、Windows 10搭載PCとの連携や統一的な管理では、Windows 10 Mobileの方が秀でている面もある。これまでWindows PCを多用してきた企業にとって、Windows 10 Mobileは注目に値するかもしれない。
■関連リンク
- スマートフォン「Diginnos Mobile DG-W10M」の製品情報(ドスパラ)
- スマートフォン「EveryPhone」の製品情報(ヤマダ電機)
- スマートフォン「HP Elite x3」の製品情報(日本HP)
- スマートフォン「KATANA01」の製品情報(FREETEL)
- スマートフォン「KATANA02」の製品情報(FREETEL)
- スマートフォン「MADOSMA」の製品情報(マウスコンピューター)
- スマートフォン「MADOSMA Q601」のニュースリリース(マウスコンピューター)
- スマートフォン「NuAns NEO」の製品情報(トリニティ)
- スマートフォン「VAIO Phone Biz」の製品情報(VAIO)
- スマートフォン「WPJ40-10」の製品情報(geanee)
- スマートフォン「Lumia」シリーズの製品情報[英語](マイクロソフト)
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