IoT市場の本格化には価格面の改善に加え、セキュリティ面での「安心」が必要――アクセンチュア調べ:総合サービス開発にもいっそうの努力が必要
米アクセンチュアの調査によると、IoTデバイスの利用拡大を阻む理由として、価格の高さに加え、セキュリティ面の懸念が挙げられた。日本国内では、利便性への理解を促す取り組みが必要であることも明らかになった。
米アクセンチュアは、「2016 Accenture Digital Consumer Survey(2016年アクセンチュアデジタル消費者調査)」を公表した。それによると、家電業界を取り巻く環境は、2017年まで大きな好転が見られないという。高まるセキュリティへの懸念に加え、スマートフォンやタブレット端末の需要の停滞、IoT(Internet of Things)市場の足どりの重さなどが原因だと分析する。
同調査は、世界28カ国2万8000人の消費者を対象にしたもの。約半数(47%)の回答者が、IoTデバイスや関連サービスの購入を控える理由として、「セキュリティ上の懸念」「プライバシーリスク」を上位3項目以内に挙げた。
消費者向けスマートデバイスの需要停滞も明らかになった。「2016年中にスマートフォンを購入する」とした回答者は半数以下(48%)で、2015年の54%から6ポイント減少した。同様の傾向は他のスマート家電製品でも顕著で、「2016年中にテレビやタブレットを購入する」とした回答者はそれぞれ30%と29%で、2015年の38%から減少した。
同調査では、成熟したスマートフォン市場に代わり、今後の成長をけん引すると有望視されたIoTデバイス市場の成長が鈍く、踊り場から脱して大きく伸びていないことが明らかになった。
例えば、「2017年中にスマートウォッチを購入する」とした回答者は13%で、2015年の調査と比べて1%の微増にとどまった。また、フィットネスモニターやウェアラブルヘルス端末、スマートサーモスタット、コネクテッドホームといったIoTデバイスに購入意欲を示した回答者は9%と大きな成長が見られず、2015年の調査からあまり変化がないという。
日本市場では個人向けIoTデバイスが「分からない」という課題
日本市場を対象とした調査結果では、スマートフォンの購買意欲がピーク時の2014年と比較して8%程度低下しており、毎年徐々に鈍化傾向にある。買い替え需要はあるものの、既に日本のスマートフォン市場は成熟したことが判明した。
一方、スマートウォッチやウエラブルフィットネスモニターなどの次世代型IoT製品に関しては、他国と比較すると購買意欲に大きな遅れが見られる。これは通常見られる日本市場の特徴だが、その理由として、製品が高額であること、使用する価値が不明であることなど、複雑過ぎるIoT製品の特性と機能を消費者が課題視しているという結果が出た。
この調査結果について、アクセンチュア 執行役員 通信・メディア・ハイテク本部 統括本部長 中藪竜也氏は「消費者向けテクノロジー企業は、市場におけるエコシステム、データ共有、そしてホームセキュリティカメラ、サーモスタット、遠隔ドアロックなどを装備した“スマートホーム”といった統合サービスの創出について一層真剣に検討すべき」で、「革新的なサービスの実現に向けた投資拡大を検討し、インターネットに囲まれた日常生活の安全性、利便性、豊かさを追求する必要がある」と指摘している。
同調査は2015年10〜11月に、世界28カ国2万8000人の消費者を対象に、デジタル端末、コンテンツとサービス、購買パターン、サービスプロバイダーに対する嗜好や信頼度、コネクテッドライフスタイルの将来性に対する消費者意識を定量化したもの。
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