Snapdragon(スナップドラゴン):Tech Basics/Keyword
スマートフォンのプロセッサとして採用が多いクアルコムの「Snapdragon」とはどのようなものなのか。簡潔に特徴などを紹介する。
Snapdragonとは?
Android OSやWindows 10 Mobileを搭載するスマートフォンやタブレットなどのカタログなどを見ると、プロセッサ(CPU)欄に「Snapdragon(スナップドラゴン)」や「MSM8xxx(xは数字)」などといった表記をよく見かけるのではないだろうか。
Snapdragonは、ARMアーキテクチャのCPUをベースとし、電力制御や各種センサー、通信機能などの周辺機器を統合したSoC(System-on-Chip)製品のシリーズ名で、クアルコムが開発している。MSM8xxxは、Snapdragonの製品型番で、下から3桁目が「2」はHSPA+対応、「6」はCDMA対応、「9」は4G LTE対応といった具合に、サポートする通信モデムによって番号が振られている。
クアルコムは、CDMA方式の基本特許(3G携帯電話のコア技術)を多く持っており、現在主流の4G LTEでもさまざまな周波数バンドや無線方式に対応したチップを提供するなど、比較的高いシェアを誇っている。
Snapdragonは、そのクアルコムのスマートフォンや携帯電話向けの主力チップのシリーズ名である。
Snapdragonシリーズの概要
Snapdragonには、CPUの性能や統合している機能の違いなどによって、スマートフォンなど向けの「Snapdragon 200」「Snapdragon 400」「Snapdragon 600」「Snapdragon 800」、Android Wear搭載ウォッチ向けとして小型、省電力化した「Snapdragon Wear」の各シリーズがラインアップされている。
Snapdragonに内蔵されているCPUは、英ARM社が開発、設計情報などを提供している組み込み向けのARMプロセッサである。一部のモデルではクアルコム自身がカスタマイズした独自の「Scorpion(スコーピオン)」や「Krait(クライト)」、「Kryo(クライオ)」を採用するが、その他の製品はARMが設計したARM Cortex A7などをそのままSoCのCPUとして採用している。
GPU(グラフィックスプロセッシングユニット)は、2009年1月20日にAMDから買収した携帯端末向けのグラフィックス、マルチメディア技術などをベースに開発した独自の「Adreno(アドレノ)」が搭載されている。またHexagon DSPは、通信処理や画像処理、センサー類の処理、音声認識処理などの一部をCPUから肩代わり(オフロード)することで、高い性能を実現しながら消費電力を低減している。
さらにSnapdragonでは、クアルコムが開発した高速充電技術「Quick Charge(クイックチャージ)」を標準でサポートしている。スマートフォンの大画面化や高性能化に対応するため、搭載するバッテリが大型化している。ただ、大型バッテリでは、充電時間が長くなってしまうという欠点がある。そこで、Quick Chargeでは、電圧をUSB規格の5Vから9Vに上げて、バッテリへ充電する際に最適な電圧に降圧することで、充電時間を短くしている。
多くのメーカーで採用されているSnapdragon
Snapdragonは、すでに多くのスマートフォンで採用されている。例えば、Windows 10 Mobileを採用するfreetelのWindows Phone KATANA02は、ローエンド向けSoCながら通信モデムとしてLTEに対応しているSnapdragon 210を、ASUSのZenFone 2 LaserはSnapdragon 410を、ソニーモバイルコミュニケーションズのXperia Z5はSnapdragon 810をそれぞれ採用している。
なお最新のハイエンドスマートフォン向けのSnapdragon 820では、性能向上に加え、超音波を使った指紋認証技術「Sense ID」や60GHz帯を利用するWi-Fiの新規格「IEEE 802.11ad」に対応するなど、新しい機能のサポートも行われている。ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia X Performance」やサムスンの「Galaxy S7」、auから法人向けの販売が予定されているHPのWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「Elite X3」などがSnapdragon 820を搭載している。
Snapdragonの各シリーズの性能
クアルコムのニュースリリース「Snapdragon 820 and Kryo CPU: heterogeneous computing and the role of custom compute」より
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