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IoTでいよいよ到来する“IPv6時代”――各事業者のIPv6対応の現状モバイルが迎えるIPv6時代(後)(1/2 ページ)

IoTの普及も相まって、モバイルキャリアやクラウドサービス事業者、ISPなどの各事業者がIPv6対応に向けた動きを進めています。本稿では前編に引き続き、各業界のIPv6対応について技術面から解説します。

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連載目次

IPv6対応のためのさまざまな技術

 モバイルキャリアやクラウドサービス事業者などの「IPv6対応」の現状、今後について解説する本連載。前編では、携帯キャリアのIPv6対応の背景と、それが各業界にどのような影響を及ぼすのかを考察しました。後編となる今回は、より技術的な視点から、各業界に求められる対応を考えます。

 IPv4からIPv6への移行を行うための技術としては、現在、以下のようなものがあります。これらの技術は既に、インターネットで利用される技術の標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)により、RFC(IETFの公式文書)として標準化され、さまざまなベンダーのネットワーク機器やオープンソースソフトウェア(OSS)などで利用できるようになっています(図1、図2)。

 ここからは、各サービス事業者が、これらの技術の利用を含めたIPv6対応をどのように進めていくのかについて考えます。


図1 IPv4枯渇対策/IPv6移行関連のRFC

図2 IPv4枯渇対策/IPv6移行関連技術の概要

モバイル通信事業者の対応

課題は「IPv4/IPv6の二重運用コスト」

 今後、携帯キャリア3社がIPv6接続対応を進めていった場合、その設備を利用するMVNO事業者や、モバイル無線事業者などでも同様にIPv6対応が進んでいき、モバイル通信事業者全体でIPv6の設備が構築されていくことになるでしょう。その際、モバイル通信事業者にとって何が課題となるのでしょうか?

 まず、新たにIPv6のための通信インフラを構築し、それを運用するための人材育成に大きな投資が必要になります。また、現時点ではIPv4に比べIPv6のネットワーク機器のコストパフォーマンスはあまり良くありません。これはハードウェアだけでなく、パケット処理を行うソフトウェア処理の効率もIPv4に比べて劣っているからです。さらにIPv6のアドレス長はIPv4よりも長くなっており(32ビット→128ビット)、パケットのヘッダサイズも最大パケット長も大きいため、IPv4よりもパケット処理に負荷が掛かります。IPv6対応機器のコストパフォーマンス向上のためには、今後、この製品の市場がさらに大きくなり、製品のコモディティ化が進むことが求められます。

 ただし、より高性能な製品へのアップグレードや、耐用年数などに伴う定期的なリプレース、新技術を身に付けるための人材育成などの投資は、通信事業者では常に行われていることです。従って、これらの投資は、そのタイミングや期間の設定により、ある程度解決できる問題です。むしろ通信事業者にとって大きな問題となるのは、IPv4とIPv6の2つの設備(IPv4/IPv6デュアルスタック)を構築した場合に、二重の運用のコストが掛かってしまうことです。

「IPv6オンリー」を成立させるための技術

 この課題に対する1つの回答は、IPv4を手放してしまうことです。例えば、スマートフォンに対して提供するのはIPv6接続だけにし、IPv4接続は提供しないといった方式が、海外のモバイル通信事業者では実際に採用されています。

 ただし、IPv4とIPv6の間には全く互換性がないため、IPv6オンリーにしてしまうと、IPv4との相互通信が一切行えません。IPv4インターネットとIPv6インターネットは物理的な設備を共有していたとしても、論理的には全く別の世界なのです。IPv6のインターネットはまだまだ小さく、インターネット上のコンテンツやサービスの多くはIPv4で提供されています。従って、IPv6接続だけでは今のインターネット上のサービスの一部しか利用できません。

 そこで、IPv6接続しか持たないスマートフォンからIPv4インターネットに接続するための技術の1つとして、「NAT64/DNS64」が用いられます。NAT64/DNS64はDNS名前解決の仕組みを利用することで、IPv6接続のスマートフォンアプリから透過的にIPv4インターネット上のサービスやコンテンツへ接続することを可能にします(図3)。


図3 「NAT64/DNS64」動作概要

 スマートフォンに関して言えば、アップルが「今後、IPv6接続とこのNAT64/DNS64変換への対応をiPhoneアプリの審査要件にする」と言っています。従って、通信事業者がサポートするのがIPv6だけであっても、iPhoneアプリの動作については問題ないといえるでしょう。

 一方Androidも「464XLAT」という技術をサポートしており、仮にIPv4でしか動作しないアプリであっても、Android内部のプログラム「CLAT」の機能によりIPv6に対応させることが可能となります。このときグローバル側では「PLAT」と呼ばれる機能によりアドレスがIPv4のものに再変換され、IPv4インターネットへの透過的な接続が実現されます(図4)。


図4 「464XLAT」動作概要

 また、現在モバイル通信事業者がCGN(Carrier Grade NAT)装置として導入している製品の多くは、NAT64/DNS64や464XLATをサポートしています。そのため、IPv4接続でCGNを利用しつつ、並行してNAT64/DNS64を利用してIPv6接続サービスを提供していくといったことも可能です(図5)。このように、モバイル通信事業者にとって、スマートフォンのインターネット接続をIPv6のみで提供するというのは実現性の高い選択肢の1つになっているといえます。


図5 モバイル事業者によるIPv6のみの接続サービス

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