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現在そして未来のマイクロソフトを示す2つのキーワード特集: Build 2016(4/4 ページ)

Build 2016で示された2つのキーワードを通して、マイクロソフトはどんな会社になったのか、何を成し遂げようとしているのかを見てみよう。

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クラウドプラットフォームをインテリジェントなものに

 これらのエクスペリエンスは単一のデバイスで閉じる時代ではなくなっている。PCで入れた予定について、スマートフォンへ通知が届く。それに加えて、例えばユーザーが今どこにいるのか、今日どんな予定があるのか、Cortanaに何を指示したのかなどの状況を理解して、それに応じた処理を行ってくれる世界をマイクロソフトは目指している。「クラウドプラットフォームをインテリジェントなものに」することで、コンピューティングはよりリッチな体験になり、そして人だけではなし得なかったことが成し遂げられるようになる。

 そのために提供されるものの1つがCortana Intelligence Suiteだ。このスイートにはMicrosoft BOT FrameworkCognitive Servicesなどが含まれていて、自然言語を認識し、ユーザーとの受け答えを可能とするボットを作成できるようになる。

 ユーザーとユーザー、ユーザーとCortanaのようなPDA(Personal Digital Assistant)、それからユーザーと今述べたボット。加えて、PDAとボット。これらが「Conversation Canvas」(あるいは「 Conversational Canvas」)を介してやりとりをすることになる。上で見たHoloLensの画像は、HoloLensが提供するConversation Canvas上でユーザーとユーザー、それからリモートでセッションに参加しているもう1人のユーザーが会話を行っている場面だ。

 Conversation CanvasとはユーザーがPDA、あるいはボットとコミュニケーションをする場だ。例えば、Skype、LINE、Slackなどがそうだ。Build 2016ではSkype用のボットを開発するためのSkype Bot Platformも発表されている。

Conversation Canvas
Conversation Canvas

 PDAやボットが、機械学習や人工知能をベースとして自然言語を解し、文脈や状況を認識するようになれば、この「場」で行われる会話はその「場」限りのものではなくなる。さらに別のアプリやボットと協調するようになれば、ユーザーがほんのひと言指示をするだけで、そのユーザーの現在の状況、これからの予定などを考慮して、さまざまな処理が自動的に行われる。以下に例を示す。これは予定がかぶってしまったことをCortanaが検出して、ユーザーに判断を仰ぎ、再スケジューリングをしている場面だ。

予定の再スケジューリング
予定の再スケジューリング

 マイクロソフトがいうところの「Conversations as a Platform」とは、このようにコンピューティングのあらゆる場所にインテリジェンスを介入させることで、これまでよりも格段に優れたユーザー体験(UX)を得られるようにしようとするものだ。

これまでにない効率性とビジネスプロセス

 最後にOffice 365やPower BI、Microsoft Graph APIなどを利用して、膨大な量のOfficeドキュメントをクラウドベースで活用できるようにし、そこから「これまでとは違う効率性やビジネスプロセス」が生まれる。Cortana Intelligence Suiteとも連携が可能であり、Officeのデータを基に何らかの処理を自動化するといったことも可能だと思われる。上で見た2つの要素と関連するものとしてはOffice 365 Group Connectors、Skype for Business Web & Mobile SDKなどがある。Graph APIについては自分でもAPIを試してみることができるので、興味ある方は触ってみよう。

Microsoft Graph API
Microsoft Graph API

まとめ

 本稿では「Windows is home for developers」「Conversations as a Platform」という2つのキーワードを通して、Build 2016で発表された技術をまとめてきた。

 前者については、以前のマイクロソフトと現在のマイクロソフトのスタンスには明瞭な違いがあるように思える。つまり、以前のマイクロソフトは「Windows開発者のための会社」だったのが、現在では「全ての開発者のための会社」となったかのようにも思える。

 Windows 10へのbashの搭載とXamarin無償化は、マイクロソフトが「Windows(VS)を、開発者がほしいと思うものが全て取り揃えられた環境」とし、日々の開発環境として選択してもらおうという考えの象徴といえる。マイクロソフト自身がオープンになり、オープンソースの世界を指向しているのは事実だが、企業活動をしている以上は存続を維持する必要がある。その意味では、多様な選択肢を1つのプラットフォームに搭載することで、魅力的な製品を提供しようとするのは正しい方向だろう*1

 後者については、「風呂敷広げた」感も強いのだが。マイクロソフトは自然言語やジェスチャなどを利用したコンピューティングがGUI/Web/タッチ操作に並ぶほどの新しい潮流となると考えているようだ。これが実際のものになるならば、キーボードやマウスを敬遠していた人たちや、スマートデバイスでのタッチ操作におじけづいていた人たち、ハンディキャップを抱える人たちにとっては福音となるだろう。そして、開発者が自身の創造性やビジネス手段をそこにボットの形で組み込んでいければ、さまざまな意味で新しい世界がやってくるのかもしれない。

*1 .NET FrameworkもCLR+BCLという基盤に多様な技術を搭載するものだった(なぜか過去形)。Windows+VSという基盤にあらゆるプラットフォーム向けの開発技術を搭載していくのは、これと相似しているかもしれない。つまり、マイクロソフトのやり方は15年前と変わっていないのかもしれない。変わったのはそのレイヤーということだ。なお、これは単なる感想だ。


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