「クラウド」とは何か:新人のための「クラウド」基礎講座(1)(1/3 ページ)
あなたは、「クラウド」を本当に正しく理解していますか? 新卒エンジニアやいきなり業務で必要になった若手、IT業界で働く営業担当者などのために、“やさしい先輩”が順番に「クラウド基礎講座」をお届けします。「そんなの知ってるよ」という人も、あらためて知識を確認・整理してみてはいかがでしょうか。
この連載は……
「クラウドコンピューティング」とは何でしょう。皆さんは、これを明快に説明できるほど正しく理解していますでしょうか。
今やクラウドは企業のビジネス成長に欠かせない存在として、エンタープライズ分野で普及が加速しています。しかし、データの保管(クラウドストレージ)やeメール(Gmailなど)といった身近な個人向けサービス以外は、ぼんやりとしか分からない。クラウドがビジネスとどう結び付くのか分からない……そんな人もいるはずです。
本連載は、そんな新卒エンジニア、クラウドの知識がないが業務で必要になった若手、オンプレミスエンジニア、IT業界で働くユーザー部門(営業担当者など)、IT業界に興味のある学生に向け、正しいクラウドの知識を身に付けてもらうことを目的にした、「やさしい先輩」からのメッセージです。「CompTIA SMEコミュニティ」に集う各企業の4人が協力し、それぞれの視点で「実務に役立つ、クラウドの基礎」を順番にお届けします。
初回は、ラック ITプロフェッショナル統括本部 サイバーセキュリティ事業部 理事の長谷川長一氏より寄稿いただきました。
「クラウドコンピューティング」とは何か
まず「クラウド」とは何か。正しくは、「クラウドコンピューティング」とは何かの概念を理解しましょう。
クラウドコンピューティングとは、従来は利用者が所有して使っていたハードウェアやソフトウェア、データなどの「さまざまなコンピュータ資源や機能」を、所有することなく「サービス」として、必要なときに、必要なだけ使えるIT環境、あるいは形態のことです。
クラウドコンピューティングの「クラウド(Cloud)」とは、文字通り「雲」を表しています。インターネット上のインフラやサーバ群は、あたかも雲の中にあるように、利用者からその実体は見えません。しかし、この雲の中で、サーバ群が互いに通信していたり、データを分散処理していたりします。利用者は、この雲の中がどうなっているかの全容を知ることなく、あるいは意識することなく、さまざまなコンピューティング環境を利用することができる──。それがクラウドコンピューティングです。
これまでコンピュータを利用するには、ユーザー(企業、個人など)がコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを自身で保有・管理していたのに対し、クラウドコンピューティングでは、インターネットの向こう側、雲の中にあるさまざまなIT資産を、「いつでも、どこからでも、すぐに、必要なだけ、サービス利用料金を払って使う」という形になります。つまり、「所有する」のではなく、「利用する/借りる」ことになるわけです。
クラウドコンピューティングによって提供されるサービス(以後、クラウドサービスと略します)を利用するに当たってユーザーが用意すべきものは、最低限の接続環境(PCやスマートデバイスなどのクライアント、ブラウザ、インターネット接続)のみで、あとはクラウドサービス利用料金を支払うためのクレジットカード程度です。
実際に処理を実行するコンピュータはサービスを提供するクラウド事業者側に設置されているので、それらのコンピュータ本体(サーバなど)の購入費用やデータを蓄積するストレージなどの機材はユーザー側では不要となるのです。
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