自動運転技術とは――課題、安全基準レベル、ロボットタクシー、その現状と未来:ロボットをビジネスに生かすAI技術(8)(1/2 ページ)
Pepperや自動運転車などの登場で、エンジニアではない一般の人にも身近になりつつある「ロボット」。ロボットには「人工知能/AI」を中心にさまざまなソフトウェア技術が使われている。本連載では、ソフトウェアとしてのロボットについて、基本的な用語からビジネスへの応用までを解説していく。今回は、人工知能によって、人が運転しなくても自律的に動く自動車で使われる自動運転技術について。
書籍の中から有用な技術情報をピックアップして紹介する本シリーズ。今回は、秀和システム発行の書籍『図解入門 最新 人工知能がよーくわかる本(2016年7月4日発行)』からの抜粋です。
ご注意:本稿は、著者及び出版社の許可を得て、そのまま転載したものです。このため用字用語の統一ルールなどは@ITのそれとは一致しません。あらかじめご了承ください。
※編集部注:前回記事「ロボットにDeep Learningを導入して画像認識の精度が向上すると、どう便利になるのか」はこちら
自動運転車の現状と未来
自動車の運転では、事故を未然に防いだり、より快適なドライビングに対して、以前よりAI関連技術が研究され、既に導入されてきました。米国のドラマ「ナイトライダー」に熱中した世代には、ある財団が開発した夢のクルマ「ナイト2000」との会話にワクワクした人もいるでしょう。
自動車に導入されるAI
スマートフォン等と連携したり、同様の機能を車載OS(オペレーティングシステム)で実現したり、車両の状態や周囲の道路状況、クルマのセンサーの情報をネットワークで集積・分析したりする機能を持つクルマを「コネクテッドカー」と呼びます。
一部のカーナビや自動車の機能にAI技術を活用して自然言語での会話は既に搭載されていて、クルマの中や周囲の温度を問い合わせたり、車両のふらつきから会話を促したり、周辺のコンビニや給油スタンドの場所を教えてもらう等が実現しています。
また現在、進行方向に障害物があるとストップ(制動)したり、何かが近付きすぎると警告音を鳴らすといった機能が、衝突防止機能や自動ブレーキ等に利用されています。急速に普及し始めている背景には、センサー技術の発達と低価格化、AIの活用等による処理技術の進展が挙げられます。これらは自動車だけでなく、ロボットの分野でも活用されています。
自動走行システムのレベル
ところで、自動運転車の実用化には、どのような計画が見込まれているのでしょうか。
工事現場や鉱山などの制限された区域内では、既に無人のダンプカーやロボットカーが実用化されています。しかし、公道を走るとなると話はまったく別です。
自動運転車にはいくつかの段階が設けられています。自動車や運転者の安全を監視する米国運輸省の部局である「NHTSA」(National Highway Traffic Safety Administration)が策定した自動運転車の基準にはレベル1〜4があり、日本もそれに準じて区分され、論議に使われています(レベル0を参考までに下記に追記)。
また、内閣府が発行している「自動走行システム 研究開発計画 2015」でも、同様の表がわかりやすく明記されています。
- ■レベル0
自動車の操縦はドライバーが行い、システムは短い車間距離に対する警告など、センサーからの情報をブザー等によってドライバーに警告するなどの段階です。 - ■レベル1
安全運転支援システム。自動車の操縦はドライバーが行うものの、加速・操舵・制動のいずれかをシステムが補佐的に行うことかできる段階。自動ブレーキ機能もこれに含まれます。 - ■レベル2
準自動走行システム(高度運転支援システム)。自動車の操縦はドライバーが行うものの、加速・操舵・制動の複数を同時にシステムが行うことができる段階です。 - ■レベル3
準自動走行システム(高度運転支援システム)。加速・操舵・制動のすべてをシステムが行い、システムの要請に応じてドライバーが操縦対応する段階です。 - ■レベル4
完全自動走行システム。加速・操舵・制動のすべてをシステムが行い、ドライバーは関与しない段階です(無人運転車/ドライバーレスカー)。
各レベルの内容を見るとわかりますが、レベル1は自動ブレーキなど「高度運転支援システム」(ADAS)で既に実現されています。歩行者などの障害物がクルマの前に予期せず飛び出した場合、自動でブレーキ操作を行う機能も含まれます。
次の段階として実用化が期待されているのがレベル2です。一定の状況下において、運転中に一時的な自動運転に切り替えるしくみのものです。渋滞で前のクルマと一定の間隔を保って低速走行したり(渋滞時追従支援システム、Traffic Assist)、高速道路でクルーズ運転を行ったり、自動追従走行をしたりするなどが例になります。どちらもいくつかのメーカーによって開発されていて、海外では使用されているものもあります。日本では安定性と検証を進めると共に、法律の整備を待つ段階でもあります。
国内の自動車メーカーでは、ロック歌手の矢沢永吉氏を起用し、専用の高速走行路で自動追従走行をイメージしたCMを展開した日産自動車が最も積極的な印象です。日産は2013年9月に自動運転システムの開発に向け、高度運転支援技術を搭載した車両のナンバーを取得したことを発表しました。試験運転車両は「日産リーフ」をベースにした車両で、周辺の道路状況等を検知して、ハンドルやブレーキ等を自動的に制御して運転者を支援するシステムを搭載しています。これは運転者が常に操作介入を行えることを前提としていますが、そのとき同時に2020年に自動運転技術の市販化を目指すことを発表し、車両のナンバープレートは「2020」としています。
COLUMN BMWが無人自動駐車機能を搭載
2016年5月、独BMWは量産車としては世界初、運転席にドライバーがいなくても自動で駐車できるシステム「リモート・パーキング」を搭載した最高級車種「7シリーズ」を日本で発売することを発表しました。
運転者は駐車場の車路でクルマを停止して一旦降り、外部からリモコンを操作することで、ハンドルやアクセルが自動制御されて駐車エリアに入るしくみです。車体に搭載された12基の超音波センサーと4台のカメラで周囲の状況を判断して、人や障害物を検知すれば停車します。現時点では前進と後進の駐車(基本的に直進)のみ対応となっていて、縦列駐車や一般によく行うバックでのL字駐車等には対応していません。駐車スペースが狭くてドアが開けにくい場合にこの機能が有効としています。
関連記事
- あなたの知らない自動運転技術の歴史とGoogle Carの自動運転に使用するセンサーの基礎知識
本連載では、公開情報を基に主にソフトウエア(AI、アルゴリズム)の観点でGoogle Carの仕組みを解説していきます。初回は、自動運転の歴史やGoogle Carの位置付け、Google Carで使われているセンサーの基礎知識などについて。 - 第162回 クルマの自動運転に求められること
自動車の自動運転技術に対する注目が急速に高まっている。自動運転というのは、いわばクルマに自前の目や脳を載せるという技術である。半導体技術が支える面も大きい。そこには、まだいくつかの課題がありそうだ。 - 日立、リアルタイムDBを備えた自動運転システム向けプラットフォームを開発
日立オートモティブシステムズと日立ソリューションズは、自動運転車向けのECUを共同で開発。リアルタイムデータベースを搭載しており、データ検索時間を従来の100分の1に短縮した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.