「Oracle Databaseをやめる」という選択肢:実践 OSSデータベース移行プロジェクト(1)(1/2 ページ)
Oracle Databaseのライセンス体系が変更され、これまでSE1/SEを利用していたユーザーは「実質の値上げを受け入れる」か「Oracle Databaseをやめる」かの選択が迫られています。本連載では、商用DBMSからOSSデータベースへの移行を検討する企業に向け、「MySQL」への移行プロジェクトで必要となる具体的なノウハウをお届けします。初回は、本連載を展開する背景を説明します。
はじめに
ビッグデータ、クラウド、IoTなど、ITトレンドの変遷が激しい現在、「データ」の重要性がますます大きくなってきています。昨今のデータの取り扱いにおいては、NoSQLやKVS(Key Value Store)のように、個々のデータの欠損には目をつぶりつつも、データ分析のために大きなデータの“カタマリ”として処理することに注力する方式の注目度が高くなっていますが、その一方で、整合性やトランザクションを確実に管理し、トランザクション単位でデータの整合性を担保できる旧来の「データベース管理システム(以下、DBMS)」が持つ重要性も再認識されているといえます。
このような中で、エンタープライズシステムで特に利用されている商用DBMSの1つである「Oracle Database」が、2016年1月にライセンス体系を変更しました。Oracle Databaseライセンスの中で最も安価だった中小規模システム向けの「Oracle Database Standard Edition One(以下、SE1)」が廃止され、従来の「Oracle Database Standard Edition(以下、SE)」の内容を変更した新ライセンスである「Oracle Database Standard Edition 2(SE2)」に一本化されました。
例えば、約70万円だったSE1の最低価格は、SE2では210万円からと高額になります(2016年11月現在、以下同)。また、SEのユーザーとしても、物理サーバ単位の最大搭載CPUソケット数が、SEの4ソケットから、SE2では2ソケットに減ることから、システム環境によっては570万円からとなる上位のOracle Database Enterprise Edition(以下、EE)への移行が必要になることもあり得ます。結果としてSE1/SEのユーザーは、これまで運用してきたシステムを維持/継続するためにライセンスや保守サポート費用の増加を受け入れるか、それとも、Oracle Databaseの利用をやめることを検討することが迫られています。
一方で、DBMSには「MySQL」や「PostgreSQL」といったオープンソースソフトウェア(OSS)も存在します。これらは無償で公開されていることもあり、Oracle DatabaseやIBM DB2をはじめとする商用DBMSには性能面では“かなわない”と従来は考えられていました。しかし、近年の機能拡充やハードウェア性能の向上、安定性向上、コミュニティーの活発化などとともに、OSSのメリットを積極的に生かす土壌が整ってきました。日本でも、基幹システムやミッションクリティカルなシステムにOSSを積極的に採用する企業は増えています。DBMSでは、OSSが「Disruptive Technology(破壊的技術:新しい価値基準の下では従来の製品よりも優れた特長を持つ新技術のこと)」として顧客要件をクリアしたと見られています。
以上の背景を踏まえて、今後DBMSにおいても、商用製品からOSSへの移行を検討し、それを実践する企業が一層増えていくと筆者は考えています。本連載では、この機会に商用DBMSからOSSデータベースへの移行を検討する企業に向け、「Oracle Databaseから、MySQLへ移行する」際に必要となる、技術的な要素と具体的な方法をまとめて紹介していきます。
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