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準委任契約(じゅんいにんけいやく):法律用語解説|システム開発契約(基礎編)(2)
契約書に書かれている法律用語、トラブル時にIT訴訟で争点となるかもしれない契約の種類。エンジニアなら知っておきたいシステム開発契約にかかわる法律用語を、IT紛争解決の専門家 細川義洋氏が分かりやすく解説します。
準委任契約とは何か
準委任契約とは、発注者(委任者)が、法律行為(※)以外の事務を受注者に依頼するタイプの契約です(民法第656条)。
受注者が約束した時間だけ「発注者の仕事を手伝ってあげる」「代わりにやってあげる」という契約で、仕事を完成させる義務を負いません。システム開発でしたら、発注者側が行うべき要件定義や受入テストを受注者が代わりに行ってあげる場合などに、準委任契約を結びます。
※法律行為とは、それを行うことにより法的な権利が発生したり消滅したりする行為のことです。例えば、契約や遺言などがそれに当たります。システムの開発やITサービスは通常、法的な権利の発生や消滅を招く行為ではありませんので、法律行為とはなりません
準委任契約の特徴
準委任契約は、原則「一定のスキル、知識を持った人が決められた時間働く」ことを約束するもので、受注者は完成した「モノ」は納めませんが、代わりに「作業報告書」を提出します。
また、作ったモノに不具合があっても、それを無償で補修しなければならず、損害賠償の可能性もある「瑕疵担保責任」は発生しません。何らかの事情で期間内に約束したモノが完成しなくても、契約上の義務は果たしたことになります。
ただし現実には、約束の時間が来たからと出来かけのモノを途中で放り出して引き上げると問題になりますので、モノを完成させるまで、約束した時間を超えて働かざるを得ないケースも、多く見受けられます。
派遣契約との違い
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