4分の3近くのIoTプロジェクトは「失敗」? しかしその先に──シスコ調査:「成功要素」とパートナーエコシステムの関係
シスコの調査によると、「4分の3近く」のIoTプロジェクトは何らかの失敗を経ていることが分かった。一方、あらゆるフェーズでパートナーを起用していた企業や組織は、「完全に成功した」とする回答率が高かった。
米シスコシステムズは2017年5月23日(現地時間)、英国ロンドンで開催された「IoT World Forum」(IoTWF)で、米国、英国、インドの企業で1つ以上のIoT(Internet of Things)プロジェクトの戦略や方向性の策定に携わったITリーダーや経営層に対して行った調査結果(2017年4月実施、回答者1845人)を発表した。
調査によると、携わったIoTプロジェクトが「完全に成功した」経験のある企業や組織は、全体の26%にとどまり、全体の60%はPoC(Proof of Concept:概念実証/導入前実機検証)の段階で行き詰まっていたことが分かった。なお、完了したプロジェクトも、その3分の1は「成功したとは考えられていない」ことも明らかになった。
「成功した」企業に尋ねたIoTプロジェクトの成功要因は、「人的要素」が多くを占めた。回答率の多かった上位4つの項目のうち、3つは人員やパートナーシップに関わるものだった。中でも、戦略計画から導入後のデータ分析まで、あらゆるフェーズでパートナーを起用していた企業や組織は、「完全に成功した」とする回答率が高かった。
IoTプロジェクトが成功した要因 | 回答率 |
---|---|
IT部門とビジネスサイドの協力 | 54% |
技術重視の文化(トップダウンのリーダーシップなども含む) | 49% |
社内外のパートナーシップによるIoTのノウハウ | 48% |
一方、IoTプロジェクトが「想像よりはるかに困難だった」と回答した企業は全体の6割に上った。プロジェクト完遂が困難だった要因は、「プロジェクトの納期」「限られた社内ノウハウ」「データ品質」「チーム間の連携」「予算超過」が挙げられた。特に、プロジェクトの全段階でパートナーエコシステムの力を借りなかった企業や組織にその傾向が多く見られたという。
完了したIoTプロジェクトは、想定内の効果として「顧客満足度の向上」(70%)、「業務効率の向上」(67%)、「商品/サービス品質の向上」(66%)につながったと回答。また、想定外の効果として「収益率の向上」(39%)も挙げられた。
そして回答者の64%は、初期に行ったIoTプロジェクトは行き詰まりや失敗があったものの、それで得られた教訓が「IoT投資を加速させるのに役立っている」と答えている。「IoTの取り組みの初期段階のつまずきは、決して無駄にはならない」と同社は総括している。
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