検索
連載

原因不明の処理遅延が「不定期」に発生する(パフォーマンストラブル)SQL Serverトラブルシューティング(49)(1/2 ページ)

本連載は、「Microsoft SQL Server」で発生するトラブルを「どんな方法で」「どのように」解決していくか、正しい対処のためのノウハウを紹介します。今回は原因の追及が難しい、「不定期に処理遅延が発生する場合の対処例」を解説します。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

連載バックナンバー

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブルについて、「なぜ起こったか」の理由とともに具体的な対処方法を紹介していきます。

トラブル 36(カテゴリー:処理遅延):処理遅延が「不定期」に発生する

 「Windows Server 2012 R2」上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境を想定して解説します。

トラブルの実例:運用開始から数年が経過したシステムで、処理遅延が不定期に発生するようになった。この処理遅延はオンライン業務へ著しく影響を及ぼすほどで、それが数分間続く。

 なお、この現象が発生する時期や時間帯にメンテナンスやシステム変更、アプリケーションリリースなどを行っていないことは確認済み。

トラブルの原因を探る

 前回は「特定のタイミングで」の条件だったために、原因追及の目星をある程度付けやすい事例でした。しかし今回は「不定期」に発生するトラブル事例のようです。

 まず、アプリケーションチームにトラブル発生時の状況をヒアリングします。すると、以下のことが分かりました。

  • 発生時間帯に、(処理遅延を招く)バッチ処理は実行されていなかった(○)
  • 発生時間帯には、「ほぼ全ての処理」で遅延が発生していた(×)
  • 発生直前までのレスポンスタイムに問題はなかった(○)

 この回答を踏まえて、インフラ側でリソースの調査を行います。以下のことが分かりました。

  • CPU利用率や待ち行列の長さに問題はなかった(○)
  • メモリの使用量は規定値以内で、Page Life Expectancyなどの指標でもメモリ不足を示していなかった(○)
  • ディスクI/Oは多少の増減があるものの、正常時と比べて特に大きな変化はなかった(○)

 なお、ユーザーは「これまで正常だったのに、いきなり遅くなった」と感じたそうですが、リソースに大きな問題はありませんでした。そこで「SQL Server Profilerによるトレースの取得」を検討しましたが、本番環境ではトレースを取得することそのもののリスク、つまり本例とは別の遅延要因によって思わぬトラブルを招くリスクがあったために、アプリケーションチームからこの対処は許容されませんでした。

 そこで、エラーログとエラーログ取得フォルダと同じ場所にある「デフォルトトレース」を確認することにしました(図1)(図2)。

photo 図1 デフォルトトレースの出力先
photo 図2 デフォルトトレースの出力内容

 デフォルトトレースとは、SQL Serverが規定動作として取得しているトレースと同じフォーマットのログのことです。SQL Server Profilerから内容を確認できます。トレースの採取はシステムにある程度の負荷を掛けるので、処理遅延を招く可能性があります。採取するデータが多いことから、I/O負荷とそれに伴ってSQL Server内部で待機が発生するためです。一方のデフォルトトレースは採取対象のイベントを極限まで絞り込んであることから、パフォーマンスへの影響はほとんどありません。

 このデフォルトトレースを確認したところ、処理遅延が発生した時間とデフォルトトレースに記録されていた時間がほぼ一致していました。このことから、「トランザクションログファイルの拡張」が原因で遅延が起きていることを推定できました。

 このようにトラブルシューティングでは、さまざまなログを見比べながら問題を総合的に判断する内容を探し出します。なお、今回の例ではパフォーマンスログをあらかじめ取得するようにしていたことから、アプリケーションチームとリソースの議論ができました。

ワンポイント

 万が一これらのログ採取を行っていなかった場合には、「パフォーマンスログ採取の取得間隔とイベントの設計」「ログを取得することで発生する本番環境への影響確認と、ユーザー/顧客への事前説明」「パフォーマンスログの取得設定」「トラブルの再現待ち」といった工程が別途必要になります。特に2つ目の「影響の確認と事前説明」が手間取ります。

 筆者のこれまでの経験則から、パフォーマンスログの採取が原因で致命的な遅延が起きたことはありません。しかし絶対に影響がないとは言い切れません。確認しなければ分からないリスクをユーザーにきちんと理解してもらうまでゼロから説明するのは、かなりの労力が必要になることでしょう。そのために、「最初から」パフォーマンスログの採取設定を前提にして運用するように、設計段階から準備しておくことが大切です。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る