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老朽化したデータベースを刷新したのに、かえってアプリケーションのレスポンスが悪くなった(パフォーマンストラブル)SQL Serverトラブルシューティング(43)(1/2 ページ)

本連載は、「Microsoft SQL Server」で発生するトラブルを「どんな方法で」「どのように」解決していくか、正しい対処のためのノウハウを紹介します。今回は「データベース刷新でアプリケーションのレスポンスが悪くなった事例とその対処方法」を解説します。

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 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブルについて、「なぜ起こったか」の理由とともに具体的な対処方法を紹介していきます。

トラブル 30(カテゴリー:処理遅延):老朽化したデータベースを刷新したのに、アプリケーションのレスポンスが悪くなった

 「Windows Server 2012 R2」上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境を想定して解説します。

トラブルの実例:老朽化したデータベースの移行プロジェクトを推進し、ようやく無事に新システムでの稼働を迎えることができた。

 しかし、稼働から半日で「アプリケーションが遅くて使い物にならない」と苦情が入った。アプリケーションの様子を確認するとほとんどの処理が遅延を起こしており、業務全体で影響を受けていることが分かった。

トラブルの原因を探る

 データベースサーバの情報を調べたところ、以下ような状況でした。

  • CPUリソースには十分な空きがある(図30-1)
  • ただし、物理メモリの空きが20MBほどになっていた(図30-2)
  • 併せて、データベースファイルを配置したドライブと起動ドライブのI/Oが多く、I/O待ちが発生していた(図30-3)
photo 図30-1 データベースサーバのパフォーマンスログを確認。CPU利用率は平均で15%程度だった
photo 図30-2 ただし、メモリの空き容量は20M〜30MBほどしかなかった
photo 図30-3 併せて、ディスクのI/O待ちが多く発生していた

 なぜメモリ不足とI/O増加が発生していたのでしょう。SQL Serverの設定を再確認します。インスタンスのプロパティから「最大サーバーメモリー」の項目を確認すると、2147483647に設定してありました。メモリの最大容量は「実質無制限」、つまり「使えるだけ使う」という設定です。

 メモリのボトルネックも調べます。パフォーマンスカウンターで「Page Life Expectancy」の値を確認します(図30-4)。

photo 図30-4 パフォーマンスカウンターで「Page Life Expectancy」の値を確認

 Page Life Expectancyは、ディスクから読み出したデータページがメモリ上でどのくらい滞留したのかを示す値です。この値が定常的に300秒を下回る状態だと、メモリのバッファーが少ない状態、つまり、SQL Serverがメモリ不足になっているとみなせます。図30-4から、明らかにしきい値である300秒を下回っている時間が長いことが分かりました。

 続いてディスクI/Oを調査します。パフォーマンス問題が起きている状況下で、なぜ起動ドライブ(Cドライブ)の負荷が増えているのかが気になります。WindowsにおけるCドライブは、一般的にはWindowsのOSカーネルやプログラムのバイナリが格納されていますが、通常、それらがデータベースやアプリケーションの深刻なパフォーマンストラブルにつながることはありません。今回疑うべきは「ページファイル」です。

 ページファイルは、Windowsが仮想メモリを実装する際に利用するメモリデータの待避領域として、ディスク上に作成されます。これはOSがプロセス(今回のケースで言うとSQL Server)へ仮想メモリ空間として割り当てるのですが、当然、他のプログラムやOSそのものも物理メモリを利用するので、仮想メモリ全てを物理メモリにロードするわけではありません。サーバの物理メモリが不足してくると、OSの正常動作として物理メモリにあるデータの一部をページファイルへ退避します。これを「ページング」と呼びます。

 あらためてページングのパフォーマンスカウンターを確認すると、明らかにページングの割合が増えていました(図30-5)。前述したように、ページングは物理メモリ不足によって発生します。つまり、CドライブへのI/O増はこの物理メモリ不足に起因していることが分かりました。

photo 図30-5 パフォーマンスカウンターで「ページング」の状況を確認

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