納期遅れは、ユーザーの仕様変更であった――主語を間違えない:エンジニアのための文章力養成講座(3)
「原因は仕様変更です」「ユーザーは仕様変更です」「原因はユーザーです」――漫然と文章を書いていると、うっかり「主語」を間違えることがあります。
連載「エンジニアのための文章力養成講座」は、書籍「文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント」(阿部紘久著 日本実業出版社)を基に、出版社と筆者の許可を得て、@IT読者向けに再構成したものです
「要件定義書」「提案依頼書」「テスト仕様書」――エンジニアは業務でさまざまな文章を書きます。しかし、文章力が足りないと、無駄なことをたくさん書いてしまったり、考えているのとは違うことを書いてしまったり、頭の中にあった大事なことを書きもらしてしまったりしがちです。
連載「エンジニアのための文章力養成講座」、第3回は「主語」にまつわる文章力を鍛えます。文章力を身に付けて、より良いエンジニアライフを送りましょう。
「動機は考えました」
「主語」を間違えて文章を書くと意味が通らなくなります。主語と述語(赤マーカーの箇所)のみを抽出して、内容がかみ合うか確認しましょう。
間違い
私の研究の動機は、学生が将来教員になったときに、この物語を教材として活用できると考えました。
正しい
私は、学生が将来教員になったときに、この物語を教材として活用できると考えました。
私の研究の動機は、学生が将来教員になったときに、この物語を教材として活用できると考えたことでした。
間違いの文章は、ある大学の先生が書いたものです。「(主語)動機は、(述語)考えました」は、かみ合いません。
「(主語)私は、(述語)考えました」か、「(主語)動機は、(述語)考えたことでした」とすれば、主語と述語の組み合わせが適切になります。
「『エンジニアをやっていて良かった!』と一番思う瞬間でした」
間違い
カットオーバーで見た無事に動いているシステムが、「エンジニアをやっていて良かった!」と一番思う瞬間でした。
正しい
カットオーバーで無事にシステムが動いているのを見たときが、「エンジニアをやっていて良かった!」と一番思う瞬間でした。
「(主語)システムが、(述語)瞬間でした」ではなく、「(主語)見たときが、(述語)瞬間でした」です。
「納期遅れの原因は、ユーザーの度重なる仕様変更である」
間違い
納期遅れの原因は、ユーザーの度重なる仕様変更によって引き起こされた。
正しい
納期遅れは、ユーザーの度重なる仕様変更によって引き起こされた。
納期遅れの原因は、ユーザーの度重なる仕様変更であった。
「(主語)原因は」の述語は、「引き起こされた」ではありません。次のいずれかが適切です。
「(主語)納期遅れ(という結果)が、(述語)引き起こされた」「(主語)原因は、(述語)仕様変更であった」
連載「エンジニアのための文章力養成講座」は毎週木曜日掲載です。次回(7月6日掲載)も、「主語」にまつわる文章力を鍛えます。
書籍
文章力を伸ばす
書くことが、これでとても楽になる81のポイント
阿部紘久著 日本実業出版社 1404円(税込み)
文章力を磨くとは、考える力を磨くこと。「書く力は、考える力そのもの」「受け手発想で書く」「意味の狭い言葉を使う」「長文を書くポイント」など、文章を書くときに大事なことだけれど、なかなか教わることがない81のポイントを、多くの文例と共に分かりやすく解説する。
筆者
阿部紘久
エッセイスト(元国際ビジネスマン)
帝人、米国系企業CEOを経て、2005年から昭和女子大学ライティング・サポートセンターで文章指導を行う。社会人も指導している。
主な著書に『文章力の基本』(日本実業出版社)、『文章力の基本100題』(光文社)、『シンプルに書く! 伝わる文章術』(飛鳥新社)などがある。
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