AIで複雑化するサイバー攻撃、対抗できるのもまたAIか、それとも人か(4/5 ページ)
ランサムウェア「WannaCry」のインパクトが記憶に新しい中、ウクライナやロシアを中心に感染を広げた「NotPetya」が登場した直後の開催となった、2017年6月の@ITセキュリティセミナー。複雑化するサイバー攻撃の現状、AI(人工知能)/機械学習、自動化、データ、人や組織体制に関するセッションを中心にレポートする。
AIで未知のマルウェア、ランサムウェアに対抗する――エムオーテックス
エムオーテックスのセッションでは、営業推進部 部長の金子大輔氏が登壇し、「最新ランサムウェアを『AI』で防御 〜未知の脅威への挑戦〜」と題する講演を行った。エムオーテックスはIT資産活用とセキュリティの領域で「LanScope」シリーズを展開する。アンチウイルス機能としては2016年、AIを活用した製品「プロテクトキャットPowered by Cylance」をリリースした。
金子氏はプロテクトキャットの導入効果として、ランサムウェア「WannaCry」を1年以上前のエンジンで検知したことや、Cylanceが米連邦政府人事管理局へのサイバー攻撃対策でマルウェアを一掃した事例を紹介。その上で「脅威への対策で重要になるポイントは、既知・未知のマルウェアを実行させないこと、マルウェア流入の原因調査を効率化すること、流入原因への対策による再発防止を行うことの3つ」とし、プロテクトキャットの優位性を強調した。
AIでネットワーク上の未知の振る舞いをリアルタイムに検出――インフォメーション・ディベロプメント
インフォメーション・ディベロプメント(以下、ID)のセッションでは、サイバー・セキュリティ・ソリューション部 次長/iD-SIRTの櫻木康喜氏が登壇。「AIでセキュリティの課題を解決!『Seceon OTM』」と題する講演を行った。IDは、2017年から国内提供を開始したSeceon社のセキュリティ製品「Seceon OTM」を展開している。
櫻木氏は「Seceon社は2015年に設立されたベンチャー。Seceon OTMを利用すると、AIを使ってネットワーク通信の振る舞い状態を分析して、内部の不正を発見できる」と説明。Seceon OTMは、Flowデータやsyslogなどを収集し、独自エンジンDynamic Threat Modelsを使って相関を分析、不審な動きを検出するとリアルタイムにアラートを上げる。さまざまな導入事例を挙げながら「これまで検知システムでは見つけられなかったネットワーク上の脅威を発見できる点が高く評価されている」と紹介した。
機械学習も使った5つの検知エンジンでエンドポイントの多層防御を実現――FFRI
FFRIのセッションでは、プロダクトソリューション部 部長 川原一郎氏が登壇し、「エンドポイントにも多層防御化 FFRI yaraiを付加したこれからのハイブリッド防御」と題する講演を行った。FFRIは、「世界トップレベルのサイバーセキュリティ専門家集団」を旗印に、セキュリティリサーチやマルウェア検査サービスを展開する企業だ。独自の振る舞い検知エンジンを備えたアンチマルウェア製品「FFRI yarai」で知られる。
川原氏は、標的型攻撃やランサムウェアのような近年の脅威には、パターンマッチングを用いた従来型アンチウイルス製品は対抗できなくなっていることを紹介。「yaraiのような定義ファイルに依存しない振る舞い防御によって、未知のマルウェアを防御することが重要」と訴えた。yaraiは「ZDP」「Static分析「機械学習」「HIPS」「Sandbox」という5つのエンジンで脅威を高精度で検出することが特長だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CSIRTが果たすべき「社会的責任」とは
@IT編集部が2017年2月に開催した「@ITセキュリティセミナー」レポートシリーズ。最終回は、これまでに紹介できなかったセッションの模様をまとめてお届けする。 - 「標的型攻撃に気付けない組織」にならないための確認ポイントとは
3回にわたりお届けしてきた「@ITセキュリティセミナー 〜迷宮からの脱出〜」レポート。最終回となる今回は、2016年6月28日に大阪で開催した同セミナーの中から、東京では行われなかったセッションの模様を紹介する。 - インターポールの考える「サイバー犯罪撲滅策」
@IT編集部は2016年3月8日、大阪市で「@ITセキュリティセミナー」を開催した。本稿では大阪会場のみで行われたセッションを取り上げて紹介する。