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大規模クラウドビジネスにおける、アジリティとコストの兼ね合いの難しさ「The Next Platform」で読むグローバルITトレンド(14)(1/2 ページ)

ここ数年のSaaS企業におけるインフラストラクチャとアプリケーションのトレンドを見ていて、唯一はっきりしているのは「物事が単純ではない」ということだ。トランザクション電子メール処理のように、サービスでもコストとアジリティ(俊敏性)のバランスを考えなければならない。

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英国のIT専門媒体、「The Register」とも提携し、エンタープライズITのグローバルトレンドを先取りしている「The Next Platform」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップ。プラットフォーム3へのシフトが急速に進む今、IT担当者は何を見据え、何を考えるべきか、バリエーション豊かな記事を通じて、目指すべきゴールを考えるための指標を提供していきます。

 ここ数年のSaaS企業におけるインフラストラクチャとアプリケーションのトレンドを見ていて、唯一はっきりしているのは「物事が単純ではない」ということだ。トランザクション電子メール処理のように比較的分かりやすいサービスでさえも、コストと同様に、複雑さという「隠れた層」について考えなければならない。

 Webベースのサービスを提供するほとんどの企業は、インフラストラクチャに関する処理をパブリッククラウドに負わせることを、複雑さの解決策として見いだした。これにより、地理的な可用性、価格の柔軟性および開発におけるアジリティを手に入れたが、全てのWeb企業が問答無用でクラウドに突き進んだわけではない。

 月間300億メールを送出しているSendGridを考えてみよう。送信を代行するメールには、一般的なマーケティング会社が働き掛けるものがあるが、より要求の厳しいものとしては、トランザクション電子メール処理も扱っている。Uberのような企業は、利用者の降車直後に領収書を電子メールで送信する処理をSendGridに依存している。また、同社はAirbnbやSpotifyなど、他のWebベースの企業にも同様の処理サービスを提供している。

 SendGridは、大部分のアプリケーションをクラウドに移行するプロセスを始めた。これはまだ進行中だ。従来は、数千台のメニーコアマシンをコロケーション施設で運用し、さらに地理的な効率を高めるため、小規模なデータセンターを借りていた。同社のチーフアーキテクト、J.R.ジャスパーソン(J.R. Jasperson)氏がThe Next Platformに語ったところによると、通常、このような運用におけるコストの問題は明確だ。このため、大規模なインフラストラクチャやソフトウェアの再構築なしに、AWSへのクラウドシフトを考慮しなかった可能性がある。

毎月300億件以上の電子メールを送信するSendGrid

 Airbnb、Pandora、Uber、Spotifyなどの企業向けに、毎月300億件以上の電子メールを送信するSendGridは、独自のスケーラブルなプラットフォームをプライベートクラウド上に構築した。1年以上前に何年もの将来の成長をサポートすべく、クラウドネイティブを目指してプラットフォームを再構築する作業を行い、最近成立した2つのパートナーシップを通じてAWSのクラウド機能を最大限に活用できるようにした。具体的には、この作業ではSendGridのシステム全体のオーバーホールが必要だった。また、エンジニアや開発担当者には新しいスキルとパラダイムが必要となった。一部のシステムは完全に再構築され、他は大幅に再設計された。

 冒頭の、一見単純に見える処理が意外に複雑だという点に戻っていえば、ジャスパーソン氏によると(降車や購買完了のようなユーザーの行動がトリガーとなる)何十億ものトランザクション、電子メールを送信するための現在のインフラストラクチャは何千台もの40コアマシンで構成されている。

 「私たちは、送信が必要な電子メールの数を処理できるように、多くの並列処理を実行する必要がある。遅延やその他の性能指標はあまり問題にはならない。しかし、大量のメール送信は、外から見るよりも計算集中的な命題だということは間違いない」(ジャスパーソン氏)

 SendGridは、メモリを重視するものからアクセラレータを使ったもの(特にGPU)まで、幅広いAWSインスタンスタイプを使用する予定だ。「これは一般的なAmazon EC2の話ではない。Elastic MapReduceのワークロードが大きくなり、機械学習が重要な意味を持つケースが出てくるだろう。エンジニアリングチームの視点からは、AWSを使用せずにこれらの処理を正当化するのは困難だ。顧客価値を高めるものというより、前提条件のようなものだからだ」(ジャスパーソン氏)

 ジャスパーソン氏は、スパムや悪意のある活動を検出するほぼリアルタイムのストリーム処理のようなものを指している。これは、他のバルク処理ジョブよりも低い遅延で実行されるべきものだ。

 「現在はハイブリッドクラウドの段階に入っているが、AWSへの移行は同社がより機敏なインフラを目指していることを意味する。しかし、パブリッククラウドのみで業務を賄うことは、依然としてコスト上の疑問がある」とジャスパーソン氏は言う。AWSでコストを削減できるとは思っていない。だが、AWSのツールの利用による追加支出は、インフラストラクチャ関連業務から解放することで補える。ジャスパーソン氏によると、AWSではソフトウェアエコシステムという重要な魅力もあるという。例えば、一連の機械学習ツールはコロケーションのハードウェアを使用して社内で構築するよりも、テストと実装ははるかに効率的だとしている。

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