北九州市は95万市民へのサービスを支える統合データベース基盤をOracle Exadataで刷新。性能の飛躍的向上により住民サービスの円滑な提供を実現:最速UNIXサーバでも遅い! それを解決したのがOracle Database専用マシン(3/3 ページ)
北九州市は、行政システムを集約した大規模なプライベートクラウドの中核となる統合データベース基盤に「Oracle Exadata」を採用。住民サービスの円滑な提供を妨げていた夜間バッチ処理やオンライン処理の遅延という課題を一掃した。
夜間バッチ処理時間を3分の1に短縮。住民サービスも大きく向上
Oracle Exadataへの移行により、懸案だったバッチ処理の性能は大きく向上した。その効果を、情報政策課 IT活用・調整班 主任の藤原浩司氏は次のように説明する。
「現在、当市の主要業務の大半をOracle Exadataで運用しており、バッチ処理の多くがOracle Database上で回っていますが、パフォーマンスが劇的に改善されました。例えば、夜11時に開始して朝4時までに終わらず強制終了されていた処理も、午前1時前に完了しています。他のバッチ処理も大半が3分の1程度、一部では10分の1程度にまで短縮されました」(藤原氏)
性能向上により運用に余裕ができ、バッチ処理の開始時間を後ろ倒しにすることが可能になった。この恩恵はすでに市民サービスにも還元され始めている。
「以前は窓口受付が終了する間際にお越しいただいても、その後のバッチ処理を考慮すると情報入力などの対応が最後まで行えないことがありました。現在は運用に余裕ができたため、窓口端末の使用時間を以前より長く確保できるようになっています。区役所では木曜日の受付時間を2時間延長していますが、終了間際にお越しいただいても最後まで対応することが可能となりました。今後、新たな市民サービスを検討するに当たり、技術的に多くの選択肢を提供できるようになったと思います」(三浦氏)
オンライン処理も大幅に高速化した。例えば、財務会計システムで予算状況などをCSVファイルに出力する処理の場合、以前は職員が業務端末でデータ出力のボタンを押してから出力が終わるまでにコーヒーを1杯飲める程度待たされていた。Oracle Exadataでは、この処理がボタンを押すと同時に終わるため、「処理が終わっていないのではないか?」「もう1回押さないといけないのか?」と訝しむ職員もいたと藤原氏は明かす。
「以前はボタンを押すと『処理中』と表示されていたのですが、今は押した瞬間に処理が終わるので、この表示が出る間もないのです。そのため、まだ動かないのかと勘違いしてしまうんですね。このパフォーマンス向上はすごいです」(藤原氏)
性能が向上したことで、システムの起動時間も短縮されたが、これは住民サービス向上の面でも大きな意味を持つ。
「あるシステムは起動に数分程度かかっていたため、画面が立ち上がっていないタイミングでお問い合わせを頂いた際にはお待ちいただかざるを得ないこともありました。現在は10秒足らずで起動できるようになったため、例えば住民から電話でお問い合わせいただいた際にもすぐに画面を立ち上げてお答えするなど、住民サービスを円滑に提供できるようになりました」(三浦氏)
システムの再起動時間の短縮も大きなメリットだ。これまでは全システムを朝4時に再起動していたが、Oracle Exadataは再起動なしで安定して稼働する。アプリケーションサーバとして利用するブレードサーバは引き続き再起動を行っているが、データベースの再起動がないため、システム全体としての起動時間は大きく早まった。ごくまれに起動処理に失敗するシステムもあるため、住民窓口が開くまでの猶予時間を増やせたメリットは大きい。
高い拡張性を確保できたことも大きな利点だ。北九州市が導入したのはOracle Exadata Eighth Rackだが、リソース使用状況にはまだ余裕があり、今後、新規システムを導入する場合も余裕を持って受け入れられる。リソースが足りなくなった場合に必要な分だけを追加することも可能だ。Oracle Exadataの運用管理ツールとして導入したOracle Enterprise ManagerやOracle Diagnostics Packにより、システム全体のリソースや稼働中の状況をビジュアルに一目で把握できるようになったことも大きな安心感につながっているという。
加えて、日本オラクルから直接サポートを受けられるようになったことも重要なポイントだと三浦氏は強調する。
「以前はOracle Databaseを使う中で何か問題が生じた際、常にベンダーを介して日本オラクルとやりとりせざるを得ず、状況が正確に伝わっているのか、応答に時間がかかり過ぎていないかともどかしさを感じることがありました。今は日本オラクルと直接やりとりすることもでき、私たちが抱える問題や疑問をより早く、的確に解決していけます。この体制は素晴らしく、とても満足しています」(三浦氏)
Oracle Exadataはガバナンスを効かせたプライベートクラウドの基盤に最適
このように今日、北九州市の行政システムの主要なデータベースがOracle Exadata上で稼働している。一部でパッケージソフトなどの制約からWindows版Oracle Databaseや他社データベース製品の利用も継続しているが、「これらのデータベースも、いずれOracle Exadataに移行できるといいですね。リソースは潤沢にあるので、新規システムについてはOracle Exadataの利用を勧めていきます。その方が速いし、ライセンス料の面でも助かります」と三浦氏は話す。
藤原氏は、Oracle Exadataの高い性能は、情報システム部門の担当者よりも、業務でシステムを使うユーザーに対して、より多くの恩恵をもたらすと感じている。
「どんなに評判の高い業務アプリケーションを導入しても、その使い勝手は人によって評価が分かれますが、「速いか、遅いか」でいえば、誰に聞いても速い方がよいでしょう。速過ぎて苦情が出ることはありませんし、その点は導入を推進する側としても安心できるところです」(藤原氏)
最後に三浦氏は、北九州市のような大規模自治体でガバナンスを効かせながら統合データベース基盤を作るのなら、Oracle Exadataはお勧めだと太鼓判を押す。
「自分たちでガバナンスを効かせながら大規模にシステムを統合するには相応の責任が伴います。統合した基盤が止まったり遅かったりすれば、全ての業務に影響が及ぶわけですから。ただ、その覚悟があるのなら、Oracle Exadataは導入する価値のある製品です。何しろ、95万人の住基、税務、国保などの基幹業務25システムのデータベースをEighth Rack 1台で余裕を持って動かせる圧倒的な性能に加えて、オラクルからの全面的なバックアップを期待できるのですから。もはや『メインフレームでなければ不安』『個別にサーバを立てないと運用が心配』などと言っている時代ではなくなったとあらためて感じています」(三浦氏)
以上、北九州市が推進したOracle Exadataによる統合データベース基盤刷新プロジェクトの概要を紹介した。大規模自治体におけるプライベートクラウド導入の先駆けともいえる統合データベース基盤において、性能問題の解決策として北九州市がたどり着いた解はOracle Exadataであった。高いパフォーマンスを備えたこの新たな情報管理基盤の上で、より良い住民サービスの提供を目指す同市の行政改革が今後も続いていく。
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