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「Pythonを抜いた」 いま最も使用されている言語とは GitHubの年次調査「Octoverse 2025」「AI・エージェント・型付き言語が、開発の変革をけん引」

GitHubは、ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」を使用する開発者の動向を調査した年次レポート「Octoverse 2025」を公開した。

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 GitHubは2025年10月28日(米国時間)、同社のソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」を使用する開発者の動向を調査した年次レポート「Octoverse 2025」を公開した。

 レポートは、2024年9月1日〜2025年8月31日に取得されたGitHubのユーザーおよびプロダクトデータに基づいている(※以下では「2025年」は、「2024年9月1日〜2025年8月31日」を指し、前年比は、「2023年9月1日〜2024年8月31日」との比較を指している)。

 2025年はGitHubを使用する開発者数、GitHub上での開発者のアクティビティーとも、以下の表のように記録的な増加を示している。

2025年実績 前年比など
GitHubの登録開発者数 1億8000万人以上 前年比で3600万人以上(毎秒1人以上)増加(過去最大の増加数)。増加率は23%
GitHub上のプロジェクト数(プライベートおよびパブリックリポジトリ数の合計) 6億3000万 2025年の新規リポジトリ数が1億2100万以上(毎分230以上)
GitHub上のパブリックおよびオープンソースプロジェクト(リポジトリ)へのコントリビューション(*)数 11億2800万 前年比で13%増加
パブリックおよびオープンソースプロジェクトでのプルリクエストのマージ数 5億1870万(月平均4320万) 前年比で23%増加
プッシュされたコミット数 約10億 前年比で25.1%増加。2025年8月だけで約1億
AIプロジェクト数 430万 2023年からほぼ倍増
2大プログラミング言語 TypeScript、Python TypeScriptが2025年8月に初めて首位に
*「コントリビューション」には、1)コミット、issue、プルリクエスト、プルリクエストの差分、チームディスカッションについてのコメント、2)gist、issue、プルリクエスト、チームディスカッションの作成、3)プロジェクトへのコミットのプッシュ、4)プルリクエストのレビューが含まれる。また、以下で言及する「コントリビューター」は、これらの貢献活動のいずれかを行ったGitHubユーザーを指している。アクティビティーに関する数字は、特に記載がない限り、パブリックリポジトリでのアクティビティーを反映している

 GitHubは「これらの数字は、『生成AIが開発における主流に』『TypeScriptがGitHubで最も使用される言語に』『AIはコードだけでなく、ツールや言語の選択にも影響』という3つの主要な構造変化を浮き彫りにしている」と述べ、2025年に起きた主な変化を次のように解説している。

生成AIが開発における主流に

  • 110万以上のパブリックリポジトリがLLM SDK(*)を使用しており、このうち69万3867件のプロジェクトが2025年に作成された(前年比178%増)。この増加率は、初期の実験段階から持続的な構築段階へのシフトを示唆している

*AIモデルプロバイダー(OpenAI、Anthropic、Meta、Mistral、Cohere、 AI21など)によって公開された公式ライブラリとツールのセット。開発者がこれらのプロバイダーのLLM(大規模言語モデル)に接続して使用することを容易にする。

  • AIの導入は急激に広がっており、GitHubに新たに登録した開発者の80%近くが、最初の1週間以内にAIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」を使用している。これは、AIがもはや習得すべき高度なツールではなく、デフォルトの開発者体験の一部であることを示している

TypeScriptがGitHubで最も使用される言語に

  • TypeScriptはコントリビューター数において、2025年1月に初めてJavaScriptを抜いて2位となり、2025年8月に初めてPythonを抜いて首位に立った
  • TypeScriptの台頭は、エージェント支援型コーディングによるプログラムの本番環境における信頼性を高めるために、開発者が型付き言語へとシフトしていることを示している
  • 主要なフロントエンドフレームワークのほとんどが、デフォルトでTypeScriptを使用することも、TypeScriptの利用拡大を後押ししている

AIはコーディング効率だけでなく、開発者の言語やツールの選択にも影響

  • AIは、コーディング速度だけでなく、どのプログラミング言語やツールが選ばれるかにも影響を及ぼしている
  • AIツールの急速な普及と、言語の選好の変化には相関関係が見られる

 GitHubは、2025年における最大の出来事の一つとして、AIエージェントが実用段階に入ったことを挙げ、「今後数カ月や数年間で、AIエージェントが開発者の仕事に大きなインパクトを与えるようになる」との見解を示している。

Octoverse 2025のハイライト

 以下では、Octoverse 2025レポートの概要を、「開発アクティビティー」「グローバルコミュニティー」「オープンソース」「セキュリティ」「プログラミング言語」「AIエージェント」の各カテゴリーで、グラフと表を中心に紹介する。

開発アクティビティーの急拡大

GitHub Copilot Freeのリリース以降、開発者の登録数とリポジトリ作成数の増加が加速(提供:GitHub)
GitHub Copilot Freeのリリース以降、開発者の登録数とリポジトリ作成数の増加が加速(提供:GitHub)
2025年の数(全体に占める割合) 前年比 2025年のコントリビューション数(全体に占める割合) 前年比 ポイント
プライベートリポジトリ 2億3500万(37%) 33%(5800万)増加 49億7000万(81.5%) ―― GitHubで企業およびチームレベルのコラボレーションが行われている
パブリックおよびオープンソースリポジトリ 3億9500万(63%) 19%(7200万)増加 11億2800万(18.5%) 13%増加 行われている作業量は少ないが、これらのプロジェクトは、広範なエコシステムを支えるライブラリ、モデル、ワークフローを提供している
「プライベートリポジトリとパブリックおよびオープンソースリポジトリは、異なる役割を果たすが、相互補完関係にある」(GitHub)

インドのグローバルプレゼンスが拡大

 インドが中国を追い抜き、GitHubの登録開発者数で2位となった。GitHubの予測によると、2025〜2030年で米国の登録開発者数を追い抜き、1位となる見通しだ。

GitHubの登録開発者数の上位10カ国(2020〜2025年) (提供:GitHub)
GitHubの登録開発者数の上位10カ国(2020〜2025年) (提供:GitHub)
GitHubの登録開発者数の上位国予測(2025〜2030年) (提供:GitHub)
GitHubの登録開発者数の上位国予測(2025〜2030年) (提供:GitHub)

オープンソースコントリビューターの増加をけん引するAIインフラプロジェクト

 コントリビューター数の増加率が高い10のプロジェクトの内、6つがAIインフラプロジェクトだった。ランタイム、オーケストレーション、効率化ツールへのニーズを裏付けるものとなっている。

コントリビューター数の増加率が高い上位10のオープンソースプロジェクト(提供:GitHub)
コントリビューター数の増加率が高い上位10のオープンソースプロジェクト(提供:GitHub)
パブリックリポジトリへのコントリビューター数とコントリビューション数が多い上位10カ国(提供:GitHub)
パブリックリポジトリへのコントリビューター数とコントリビューション数が多い上位10カ国(提供:GitHub)

ガバナンスの立ち遅れ

 オープンソースのエコシステムが拡大する一方、プロジェクトの透明性、継続性、健全性を確保するためのREADME、コントリビューターガイド、行動規範(Code of Conduct)の普及率には課題がある。

普及率(それぞれを含むパブリックリポジトリの割合)
README 約63%
コントリビューターガイド 5.5%
行動規範 2%

シフトレフトからセキュアバイデフォルトへ

 ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の早期にセキュリティチェックを行う「シフトレフト」から、プラットフォームやサービス提供者が、最初から最も安全な状態にする「セキュアバイデフォルト」の考え方に移行しつつある。このアプローチにより、下記のような成果につながっているとした。

2025年の実績 ポイント
重大な脆弱(ぜいじゃく)性の平均修正時間 26日(前年の37日から30%短縮) 迅速なソフトウェア開発に修正が追いつき始めている
Dependabot(*)を設定したリポジトリ 84万6000(前年比137%増) 指定した条件下での自動パッチ適用が進んでいる
重大なアラートを受け取ったリポジトリ 前年比で26%減少 自動化の推進とAIツール(Copilot Autofixのような)の使用の組み合わせが奏功している
開発者が無料で使用したGitHub ActionsのCPU時間(分) 115億分(前年の85億分から35%増加) GitHub Actions(CI/CD〈継続的インテグレーション/継続的デリバリー〉ワークフロー)の実行に使用されるCPU時間(分)の累計
*依存関係を自動的にチェックし、最新に保つためのツール

新たな脅威:アクセス制御の不備(Broken Access Control)がインジェクションを抜いて、CodeQL(*)によって最も多数検出された脆弱性に。ただし、2025年半ばまでに、毎月6000以上のリポジトリでCopilot Autofixが導入され、AIが生成した修正がアクセス制御の不備に適用されるようになった(提供:GitHub)
新たな脅威:アクセス制御の不備(Broken Access Control)がインジェクションを抜いて、CodeQL(*)によって最も多数検出された脆弱性に。ただし、2025年半ばまでに、毎月6000以上のリポジトリでCopilot Autofixが導入され、AIが生成した修正がアクセス制御の不備に適用されるようになった *セキュリティ脆弱性の検出に使われるGitHubのセマンティックコード分析エンジン(提供:GitHub)

TypeScriptが躍進、AI開発を支える言語としてPythonも目覚ましく成長

GitHub上で最も使用される言語の推移(2023年2月〜2025年8月)(提供:GitHub)
GitHub上で最も使用される言語の推移(2023年2月〜2025年8月)(提供:GitHub)
GitHub上でのユーザー数。ただし、これはAIの普及が、これらの言語選択に影響を与えていることを示唆している(提供:GitHub)
GitHub上でのユーザー数。TypeScriptとJavaScriptの合計はPythonを大きく上回る。ただし、2025年からPythonもTypeScript/JavaScriptとほぼ同様に、増加ペースが上昇している。これはAIの普及が、これらの言語選択に影響を与えていることを示唆している(提供:GitHub)
2022年から2025年にかけてGitHubのAIプロジェクトで最も多くのユーザーに使用されたプログラミング言語(提供:GitHub)
2022年から2025年にかけてGitHubのAIプロジェクトで最も多くのユーザーに使用されたプログラミング言語(提供:GitHub)

AIエージェントツールが日常のワークフローの一部に

  • GitHub Copilotコーディングエージェントは2025年に一般提供が開始され、2025年5〜9月に100万件以上のプルリクエスト作成に使用された
  • GitHub Copilotコーディングエージェントは、よりスター数が多く、規模が大きく、歴史の長いプロジェクトで導入されている傾向がある。これは、チームがコーディングエージェントを、“使い捨てプロジェクト”だけでなく、より確立されたプロジェクトの重要なコードベースでも試していることを示唆している

 GitHubに新規登録した開発者の8割がAIコーディングエージェントを利用しているというデータは、人材育成の観点でも注目に値する。AIは新人が最初に触れるメンターのような存在になりつつあることを示唆しているためだ。AIネイティブな開発者をどう育成し、既存のチームと協働させていくかが、企業の開発現場では新たな課題となりそうだ。

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