好きなキャラクターが身近に? ロボットの可能性とは――ユカイ工学・青木CEO:特集「Connect 2018」
コミュニケーションロボット「Bocco」や、しっぽの付いたクッション型セラピーロボット「Qoobo」などを開発、提供している企業ユカイ工学。2018年はロボットの活用が進むのか。青木CEOは、ロボットの可能性について、どのように考えているのかを聞いてみた。
――2017年を振り返って、どんな1年でしたか?
青木CEO: AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)が身近な存在になったと思います。特にAIスピーカーは、国内で各社が製品を発表して、販売を開始し、お茶の間ではコマーシャルを見るようになりました。それと同時に、「音声認識」や「対話型AI」がようやく技術として確立し、動き始めたように感じました。
一方で、多くの企業が音声認識やAIなどの分野で「言語」に対して多く投資しています。しかしコミュニケーション方法は言語だけではありません。例えば、犬やネコは、尻尾でコミュニケーションをとっています。2017年に発表した「Qoobo(クーボ)」は、その尻尾に注目したロボットです。海外でも話題になり、「非言語」の可能性を感じました。
次に、ソニーの「aibo」をはじめとする「個人向けロボット」の登場によりロボット業界が盛り上がりました。弊社でも、「Bocco」「Qoobo」などがメディアに取り上げられ、身をもって盛り上がりを実感しました。
――2018年はどのような1年になると考えていますか?
青木CEO: ロボットが現在以上に活躍する場面が増えるでしょう。
まず訪日外国人が増えているので、翻訳や案内などの用途において、いろいろな言語に対応するAIが登場し、ロボットに搭載されるでしょう。しかも、方言に対応するAIも登場するとにらんでいます。現在の音声認識では、イントネーションの情報を解析していないことがほとんどのため、感情や言葉の細かなニュアンスを読み取れません。例えば、「イエス」という返事には、いろいろなニュアンスがあると思いますが、音声認識で文字にすると同じ意味として扱われてしまいます。完璧な音声認識の開発にはまだまだ時間がかかりますが、2018年には少しは改善されるでしょう。
またロボットの中には、キャラクター性を持つものが登場すると考えています。例えば、高齢者との対話における活用です。高齢者の中には、車の運転中にカーナビの道案内に反応できない人が少なくないそうです。年齢が上がるほど、その反射速度は遅くなります。しかし、ロボットが道を案内すると、カーナビのときより反射速度が上がることが研究機関の実験で分かってきています。また高齢者に、Boccoと他のAIスピーカーを使った上で比較してもらうプロジェクトを進めていますが、Boccoのように「キャラクター性がある方がいい」という話を多く頂いています。
昔からアニメや漫画、ゲームなどに親しんできた日本人だからなのか分かりませんが、ロボットにキャラクター性を求めている人は多いと考えています。
――今、ユカイ工学はどんな企業(個人)とパートナーシップを組みたいと考えていますか?
青木CEO: ゲーム会社やアニメ会社などキャラクターIPを持っている企業とは、ぜひ組んでみたいですね。有名なキャラクターがロボットとして実際に話すようになれば、ロボットがより身近なものになるでしょう。
もう1つは高齢者の見守りに興味があります。現在は、さまざまな研究機関や大学の先生と一緒にBoccoを使い、認知症の進行を遅らせたり、孤独感を減らしたりする研究を行っています。しかしそこからサービスを実現するには、僕たちのような小さいメーカーではハードルが高いのが現状です。そこで高齢者の見守りをビジネスで行っている企業と連携して、ビジネスとして取り組みたいですね。
――2018年、ユカイ工学はITで何とつながりますか?
青木CEO: 今まで、「『人』と『人』をつなげる」をコンセプトに製品を開発してきました。20〜30代の若い世代は、スマートフォンがあれば、24時間、場所を問わずさまざまな人とつながることができます。しかし、高齢者や幼い子どもはどうでしょう? 高齢者や子どものように、まだITと十分につながれていない人を、われわれの力でつないでいきたいです。
一方で、ITでコミュニケーションの促進を狙っていきたいですね。スマートフォンは、遠くの人とつながることは得意ですが、近くの人とつながることは苦手です。家族でご飯を食べているときに、全員がスマートフォンを触っている場面を想像してみてください。スマートフォンがコミュニケーションを阻害しているのは一目瞭然です。ロボットの可能性として面白いのは、近い距離のコミュニケーションを促進できることだと思います。
またQooboは、非言語のコミュニケーションの可能性を見せてくれました。2018年は尻尾以外の非言語のコミュニケーション方法も追求して、人と人をつなげていきますので期待してください。
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