【トレースフラグ 661】──ゴーストレコード削除を無効にする:SQL Serverトレースフラグレファレンス(13)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ661の詳細と使い方」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。
今回は「トレースフラグ661」の詳細と使い方を解説します。
トレースフラグ661は、ゴーストレコード削除機能を無効にする設定です。SQL Serverの全てのバージョンに対応します。
SQL ServerではDelete文を実行しても、すぐにはページから該当レコードを削除しません。削除データとしてマークするだけにとどめます。その後、ゴーストレコード削除処理が自動的に動き、削除済みデータとしてマークされているレコードを消去します(図1)。
トレースフラグ661を有効にするとゴーストレコード削除処理が動かないため、データを削除してもページから除去されることはありません。論理的には削除したことになっているため、データ操作の結果には影響しませんが、データが物理的に削除されないため、データベースの領域を余計に必要とします。さらにデータの読み出しに対してゴーストレコードが含まれるため、効率がよくありません。
トレースフラグ661を利用する場面は限られているでしょう。データ削除がそもそもない場合や、ゴーストレコード削除処理が動くリソースすら他のデータ処理に使いたい場合です。
図1 ゴーストレコード削除処理の動作概要 ゴーストレコード削除処理(Ghost Cleanup Job)が実際にページから物理的にデータを削除する。削除処理はDELETE文実行タイミングとは同期していない
設定可能なスコープ
設定方法 | 可/不可 | 要/不要 |
---|---|---|
スタートアップ | ○ | − |
グローバルスコープ | ○ | − |
セッションスコープ | × | − |
クエリスコープ | × | − |
トレースフラグ 3604/3605 | − | 不要 |
動作例
トレースフラグ661を設定し、ゴーストレコードを確認しました(図2)。データを消去し、DBCC PAGEコマンドでページ内の情報を表示しています。赤枠で囲んだ「Has Ghost」というフラグを確認できました。
筆者紹介
内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
椎名 武史(しいな たけし)
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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