「わたしは真悟」の「モンロー」を、2018年のテクノロジーで解説しよう:奇跡は 誰にでも 一度おきる だが おきたことには 誰も気がつかない(1/5 ページ)
手塚治虫が、スピルバーグが、そして全世界の子どもたちがあのころ夢見たテクノロジーは、2018年現在どこまで実現できているのだろうか?――映画や漫画、小説、テレビドラマに登場したコンピュータやロボットを、現代のテクノロジーで徹底解説する「テクノロジー名作劇場」、第3回は楳図かずお先生の「わたしは真悟」だ。
「わたしは真悟」は、小学館ビッグコミックスピリッツ(小学館)1982年8号から1986年27号までに掲載されていた長編SF漫画だ。工業用の生産ロボットが意思を持ち、さまざまな事件を繰り広げるSFホラー。作者は楳図かずお先生。なお、2018年1月、フランスで開催された「第45回アングレーム国際漫画祭」で「遺産賞」を受賞した(関連リンク「楳図さんに「遺産賞」 仏アングレーム漫画祭」:日本経済新聞 2018年1月31日)。
物語の中心は、ロボットの「真悟」だ。当時AIという言葉は一般的ではなく、ロボットと人工知能のようなIT技術は一緒くたに考えられていたはずなので、この時代に「ロボット」という場合は、「その知能的な能力」を含んでいることに注意されたい。
また、本作品は当時の産業用ロボット発展時代を色濃く反映しており、楳図かずお先生がとても熱心に取材して、その成果を作品に込めていることを感じ、頭が下がる。
連載当時、筆者は某工業高専の機械工学科で学び、自動制御技術を専攻していた。しかも専攻は「ロボットハンド」だ。テレビCMで「片手で卵を割るロボットハンド」を見て、「あんなロボットハンドを作ってみたい」と思っていた。実際には「ピンセットでつまんだ物を回す微細制御ロボットをX-Yテーブルを用いて作る」という卒業研究をしていたのだが、マシン語の四則演算のみでロボットアームを円運動させるのに苦労したものだ。その当時の漫画として思い返せば、この作品、よくリサーチされていると感心する。
物語の冒頭で工場に導入された産業用ロボットは、マリリンモンローの写真が飾られ「モンロー」と名付けられる。その後意志を持ち勝手に動き始めたそのロボットは、主人公「まりん(真鈴)」と「さとる(悟)」の名前の文字を取って「真悟 (シンゴ)」と自称するようになる。
モンローは、2000年3月10日発売の小学館版「わたしは真悟」3巻、「PROGRAM(以降、P)3―Apt1 はじめとおわり」の中で「意識をもった」とある。本稿では、それ以前を「モンロー」、それ以降を「真悟」とする。
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