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「プログラミングできるお金」でお金の在り方はどう変わる――「Fintech Challenge 2018」レポート三菱UFJ銀行が目指す“デジタル通貨”の形とは(1/3 ページ)

2018年3月4日に三菱UFJ銀行が開催したハッカソン「Fintech Challenge 2018」の発表会で、ブロックチェーンやスマートコントラクトを使った新たなアイデアが9つ発表された。どのようなアイデアがあったのかを紹介する。

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 三菱UFJ銀行(旧三菱東京UFJ銀行)が推進する「デジタル通貨」である「MUFGコイン」の活用アイデアを競うハッカソンイベント「Fintech Challenge 2018」が2018年2月から3月にかけて開催された。同社は以前にも共通の名称でハッカソンイベントを開催しており今回は3回目となる。


囲み取材を受ける三菱UFJ銀行 取締役常務執行役員の亀澤宏規氏

 イベント運営にスタートアップ支援のサムライインキュベート、インフラパートナーに日本IBMが入っている本ハッカソン。三菱UFJ銀行としては、外部のアイデアを取り入れることで、MUFGコインならではの使い方を発見したい思惑がある。

 イベントの冒頭、三菱UFJ銀行 取締役常務執行役員 亀澤宏規氏は「新しい世界観を作りたい。単なるお祭りにしたいとは思っていません。良いアイデアには出資や事業化を検討したい」と語った。イベントには「Color the world, Color your life」というサブタイトルが付けられ、これには新しい世界観を作っていこうとする意気込みが込められているという。

MUFGコインの詳細は「未決定」だが、外部開発者が触れられる段階に

 今回のハッカソンの題材であるMUFGコインは、2016年の報道で存在が明らかになった。現在は、三菱UFJ銀行が実証実験を進めている段階だ。

 MUFGコインは、既に動く基盤が存在する。しかし、三菱UFJ銀行は、MUFGコインをどのような形で世の中に公開するのか未定の段階だとしている。仮想通貨やブロックチェーン技術の動向、世の中の反響、金融規制の今後の動向などを見据えてじっくりサービス展開の姿を考えているのだろう。

 現段階でMUFGコインについて分かっている内容は以下だ。

 MUFGコインとは三菱UFJ銀行が運営する「デジタル通貨」。流通させるための法律的な枠組みとして資金決済法が定める「仮想通貨」とすることを検討しているが、決定ではない。仮想通貨として流通させる場合には、三菱UFJ銀行は仮想通貨交換業の登録を受ける形となる。

 ビットコインを筆頭とする多くの仮想通貨はボラティリティー(価格の変動)が激しく投機の対象となりやすいが、MUFGコインは投機対象になることを目指さない。日本円とMUFGコインとの交換レートを安定させ、決済手段として使いやすくする。交換レート安定化の手法は検討中。

 実現手法として現時点ではプライベートブロックチェーン技術「Hyperledger Fabric」を用いているが、本番システムで採用するかは決定ではない。スマートフォンアプリで手軽に送金でき、「0.1円」といった小数点以下の決済にも使える。「APIの呼び出し」や、ブロックチェーン管理下のプログラム「スマートコントラクト」という形で、MUFGコインと連携するプログラムを開発できる。


 今回のハッカソンを開催したことは、MUFGコインのプログラミング開発環境を外部に公開できる段階であることを示している。

9チームが、ブロックチェーンならではの成果を競う

 ハッカソンに応募したチームは50を超え、プレゼンにより、9チームに絞られた。ハッカソンで作るサービス要求は以下のようなもの。参加チームは、このどれかに当てはまるサービスの開発を目指す。

  1. 現金や既存の電子決済手段では解決できないもの
  2. 社会的に課題となっていること
  3. ヒト、事業者にとって課題になっていること
  4. 地方、地域にとって課題になっていること
  5. 単なる決済サービスではない特徴を備えていること(具体的にはコインのまま循環できること、小数点以下のマイクロペイメントに対応できること)
  6. ブロックチェーン技術を活用していること(例えばスマートコントラクトの実装など)
  7. カラードコイン(特定用途に限定したコインなど)の活用

 今回のハッカソンでは、銀行発行のデジタル通貨の活用方法やスマートコントラクトなどの可能性を探ることが大きな目的の1つ。そのため、MUFGコインならではの特徴を活用しつつ、従来の銀行サービスや、今後登場すると予想される「銀行API」を活用した銀行外部の企業によるサービスなどで解決できない課題に対応できることが求められている。

ピッチコンテスト風の発表会で成果を競う

 三菱UFJ銀行は、2018年3月3〜4日に9チームによるハッカソン本戦を開催し、最後に発表会を行った。審査員は、BASE取締役CTO(最高技術責任者)の藤川真一氏、DCM Ventures インベストメントバイスプレジデントの原健一郎氏、サムライインキュベート 代表取締役の榊原健太郎氏の3人だ。

 今回の「お題」が社会的課題を解決するサービス、つまりビジネスとして展開するサービスに近いものであったことや、スタートアップ投資家が審査に当たったこともあり、イベントの雰囲気はスタートアップのピッチコンテストと非常に似ていた。

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