その成長は何のため?――「成長」に息苦しさやうっとうしさを感じたら:仕事が「つまんない」ままでいいの?(41)(2/4 ページ)
成長を追い求めることに、息切れしそうになることはありませんか。「成長!」「成長!」とあおり立てられることに、うっとうしさを感じることはありませんか。
成長って嫌だな!
この間「成長って何だろう?」と思うことがありました。
それは、畑の草むしりをしていたときのことです(私は野菜を作っています)。春の日差しがとても気持ちの良い朝でした。太陽の光を全身に浴びると、暖かく、とにかく心地良い。私は雑草をむしりながら、ふと思いました。「あぁ! 最高に気持ちがいいなぁ。こういう生活が続けられたら毎日幸せだなぁ。もう何もいらないなぁ」――何だか、すごく満たされた気持ちになったのです。
でも、やっているのは単なる草むしりです。そして次の瞬間、ふと思いました。「だけど、草むしりじゃ成長はできないか」と。するとどうでしょう。今まで感じていた幸福感は一瞬で冷め、焦りのような気持ちが湧いてきたのです。
「今、私は確かに幸せを感じている。これさえあれば何もいらない。こんな毎日が続けばいいと思っている。でも、これは現状に満足しているだけで、成長はしない。これでいいのだろうか」
「成長が大切っていうのも分かるけど、今、ここで感じているこの心地良さを感じたっていいじゃないか。成長って、そんなに大事か?」
今を否定して焦らせる「成長」という言葉。何だか「嫌だな」と思いました。
成長を感じるのはいつ?
私も、「成長したなぁ」としみじみと思ったことがあります。
当時エンジニアだったのですが、威圧的なマネジメントを受けて、心が折れそうになっていました。毎日が憂鬱です。「あー、会社になんか行きたくない。こんな毎日はもう嫌だ!」
そんな中、絶対にやりたくないと思っていた管理職を任されることになります。「自分すらうまくコントロールできないのに、他の人なんてまとめられるはずがない」――そう思っていました。
でも、不満をぼやいていても、誰かが何かを変えてくれるわけではありません。そこで私は仕方なく、「これを乗り越えるためにはどうすればいいのか」を考え始めたのです。
周りを見渡すと、私以外にもストレスを感じている同僚がいました。「もし、自分が管理職になるなら、こんな職場はイヤだ。同僚にも楽しく働いてもらいたい。でも、どうすればいいのか分からない。何から始めたらいいのだろう」と思っていろいろ調べてみました。どうやら「同僚との関わり方を勉強したら良いらしい」と思って始めたのが、コミュニケーションです。
勉強したからといって、すぐに職場が変わったわけではありませんでした。けれども、勉強したことを実践し、関わり方を変えていくことによって、少しずつですが、「あっ、前よりも良くなったぞ」と思えることが出始めました。同僚にも笑顔が増え、職場が活発になってきました。
このような日々を繰り返していたら、仕事に行くことが少しずつ苦痛ではなくなってきました。逆に、それまでは「管理職なんて絶対にやりたくない」と思っていましたが、「管理職も楽しいかも」と思えるようになっていたことに、ふと、気が付いたのです。
「あっ! やったな。乗り越えたな」……しみじみ思いました。成長したなと思いました。
この体験を通じて思いました。「成長しよう!」と思って取り組むというよりも、目の前の課題から逃げずに取り組んでいれば、自然と成長できるのではないかと。そして、課題を乗り越えたときに、しみじみと「あぁ、成長したなぁ」と感じるものなのではないかと。
つまり、成長とは「結果論」だったのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「エンジニアは、リスクを取ることで成長する」――Red Hat技術部門のトップが語る「覚悟」
高校生のころからエンジニアとして活躍し、現在、Red Hatで製品、テクノロジー部門を率いるPaul Cormier(ポール・コーミア)氏が、17年前にオープンソースソフトウェア(OSS)業界に自ら飛び込んだ理由と、エンジニアの成功に必要な姿勢について語る - 「3年待たずに転職」はアリか?――自身の成長とともに“やりたいこと”も成長する
IT企業の最前線で活躍するトップエンジニアに、学生時代に行った就職活動の内容や、これから就職活動を行う学生へのアドバイスを聞く本連載。今回は、モブキャストで「ルミネス」開発チームに所属する石田拓馬さんにお話を伺った。新卒で入社した会社を2年で退職した石田さんが考える「3年以上働ける会社の見つけ方」とは―― - 幸せの原点「自分とは何者なのか」
終身雇用・年功序列の人事制度が破たんして以来、キャリア構築の主体が「企業(の辞令)」から「個人(の決断)」へ移った。個人は自分の価値を社内だけでなく社外でも考えなければならなくなった。「自分は何ができて、何をしていきたいのか」。キャリアデザインのスキルはもはや専門家だけに求められるものではないはずだ - 「幸せになる」ではない。幸せは「感じる」ものである
唐突な質問ですが、あなたは幸せでしょうか - 選ばなかった道の先には何がある?
「あの時、あの人と別れていなければ」「なぜ、あの時あちらの会社を選んでいなかったのだろう」――もし違う選択をしていたら、あなたは今より幸せになっているのだろうか