AIで市民の健康状態を予測 6万人分の健診データで精度向上も――倉敷中央病院とNEC、予防医療で共創
岡山県の倉敷中央病院とNECは、AIを活用した予防医療に向けて共創を開始。将来の健康状態を予測する「NEC 健診結果予測シミュレーション」を用いて、約6万人分の健診データを分析し、健診結果の予測精度向上を図るとともに、発症予測まで視野に入れた技術検証に取り組む。
倉敷中央病院(岡山県倉敷市)とNECは2018年8月22日、倉敷中央病院が2019年6月にオープンする「倉敷中央病院付属 予防医療プラザ」で、「自分のいのちの未来を見よう」をコンセプトに、AIを活用して、予防医療に向けた共創活動を開始すると発表した。
倉敷中央病院では、1987年に総合保健管理センターを設立し、年間約3万8千人の人間ドックや各種健診を実施しているが、近年の高齢化に伴って受診希望者が年々増加し、予防医療の充実と受診体制の整備が必要になっていた。そのため、総合保健管理センターを新築移転して、新たに予防医療プラザとして開設し、予防医療や市民の健康増進に向けた取り組みを推進するという。
今回、既存の健康診断データなどから将来の健康状態を予測する「NEC 健診結果予測シミュレーション」を用いて、倉敷中央病院総合保健管理センターに蓄積されている過去5年間約6万人分の健診データを分析し、健診結果の予測精度向上に取り組む。
また、倉敷中央病院に蓄積されている診療データも組み合わせて分析し、生活習慣と診療データの関連性を検証することで、発症予測まで視野に入れた技術検証を進め、予防医療プラザで活用することも検討している。
NEC 健診結果予測シミュレーションは、過去の健診などの実績データから健診結果予測モデルを導き出し、それを基に、現状の生活を継続した場合や、生活を見直した場合の将来の健康状態を予測するソフトウェア。予測モデルの抽出には、多種多様なデータ(異種混合のデータ)から自動的に規則性を発見して高精度な予測ができるAI解析技術「異種混合学習技術」を活用している。
今回は、健診データ(体重、腹囲、血圧、糖代謝、脂質代謝など)や生活習慣データ(運動や食事、飲酒など)を基に分析し、生活習慣病の判定に関係の深い9種類の検査値(体重、腹囲、収縮期血圧、拡張期血圧、HbA1c、空腹時血糖、HDLコレステロール、TG、LDLコレステロール)を数年後まで予測する。
また、対象者が生活習慣を見直した際の将来的な検査値のシミュレーションを行うことで、対象者の行動変容を促す効果を見込む。
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