検索
連載

“紫のリス”の大冒険――ある女性エンジニアが、テレコム業界を変革するCEOになるまでGo AbekawaのGo Global!〜Danielle Royston編(4/5 ページ)

全米屈指の経営改善のスペシャリストとして知られ、テニス選手としても活躍する、OptivaのCEO、Danielle Royston(ダニエル・ロイストン)氏。世界を飛び回る彼女は、もともと経営者になりたかったわけではなく、「エンジニア一筋」のキャリアを目指していた――そんな彼女が語る転身のきっかけと、全てのエンジニアに向けたメッセージとは?

Share
Tweet
LINE
Hatena

Optivaがテレコム業界に“クラウド化”の波を起こしたきっかけとは

高木 Optivaは、今何に注力しているのですか。

ロイストン氏 Optivaは、携帯電話回線のプロバイダーとユーザーとの間で、料金プランに合わせて課金や管理を行う課金ソフト(Charging Software)を提供しています。

 例えば、あるユーザーが契約しているプランの限界を超えてデータを使おうとしたら、その分を後で請求するか、操作をさえぎってデータの購入を促す、といった動作をします。いわばテレコム向けBSS(Business Support System)ですが、私たちはこれをクラウドで提供していて、今は日本を含め、さまざまな国にクライアントがいます。

photo

高木 クラウドに注目したきっかけは、何だったんでしょう?

ロイストン氏 私がCEOに就任したとき、テレコム業界ではほぼ全てのシステムが自社のデータセンターで動いていました。しかし、さまざまなIT分野に関わった視点から言えば、この先どの業界もパブリッククラウドの影響は避けられません。テレコム業界も、必ずその波をかぶることになります。

 クラウドには、「自由自在に規模を調整できる」という強みがあります。例えば、ユーザーが予想を超えて増えた場合、オンプレミスなら数カ月かけてサーバを設置する段階から始めなければなりませんが、クラウドなら、規模を自動で調整すればいいので、数分で済みます。これがもたらす影響は大きいと考えています。

高木 今回の来日は、「Google Cloud Next 2018」に参加するためですよね。OptivaがGoogleと組む狙いは何ですか?

ロイストン氏 Googleは、テレコム業界にとって主に3つの重要な強みを持っています。1つ目は、通信ビジネスに必須のデータ許容量とスピードを持ったデータベースがあること。2つ目は、世界ではモバイルOSとしてAndroidが主流であること。3つ目は、Amazon Web Services(AWS)などと違って自前のプライベートネットワークを持っていることです。

 ユーザーがどれだけのデータや通話時間を使っているかリアルタイムで記録し、それがプランの範囲内かどうか判断しなければならないので、高速の通信が不可欠です。しかも、記録の内容は銀行並みに正確でなくてはなりません。こうしたニーズを満たすGoogleと組むことは必ず力になると考えています。

全米2位の実力。テニスが支えた「逆境を乗り切る力」

photo

高木 ところで、あなたはCEOと同時に、全米トーナメントで活躍するテニス選手でもあります。この2つをどうやって両立してきたのですか。

ロイストン氏 競技テニスは、11歳のときに全米オープンを見たのがきっかけで始めました。大学に入って勉強との両立が難しくなるまで、ずっと打ち込んでいました。テニスはとても面白いスポーツで、たとえ最初は負けていても、戦略次第では残りの2、3セットで逆転できるんです。その経験は、日々の仕事で逆境を乗り切る際の支えになりましたね。

 その後仕事や結婚でテニスから遠ざかっていたのですが、子どもにスポーツを習わせに行った施設にテニスコートがあったのがきっかけで、また始めました。競技スポーツを一度やると、趣味にはできなくなるんです(笑)。子どもが大きくなり、トレーニングに時間を取れるようになったので、最初は大変でしたが、ようやく本格的にプレーできる程度に回復しました。一度は全米2位になったんですよ。自分にこんなことができるとは思いませんでした。

 Optivaの仕事が忙しくなり、世界中を飛び回るようになってから、練習時間は減ってしまいましたが、継続的に試合には出ています。それは、特に私の家族や、周囲で支えてくれる人たちのおかげですね。一人で何もかもできる人はいません。生活のバランスをとって、自分のための時間を自分で確保することは、とても大事だと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る