SOMPOシステムズ、サイボウズ、Microsoft、Google――企業がプログラミング教育に取り組む意義とは:特集:小学生の「プログラミング教育」その前に(9)(1/2 ページ)
みんなのコードは「コンピュータサイエンス教育週間」に全世界で実施されたプログラミング教育推進運動「Hour of Code」に合わせ、日本国内でのテクノロジー教育への関心を高める啓蒙活動を実施し、その一環として「パートナー企業 CSR取り組み報告会」を開催した。
みんなのコードは、2018年の「コンピュータサイエンス教育週間」(12月3〜9日)に全世界で実施されたプログラミング教育推進運動「Hour of Code」に合わせ、日本国内でのテクノロジー教育への関心を高める啓蒙(けいもう)活動を実施し、その一環として、2018年12月10日に、「みんなのコード パートナー企業 CSR取り組み報告会」を、サイボウズのオフィスで開催した。
報告会では、各パートナー企業の次世代教育に関する社会貢献の取り組みについて報告などがあった。この報告会の内容を、2回に分けてレポートする。
小学校での取り組みも増えている、年末恒例「Hour of Code」とは
みんなのコードは、「すべての子どもがプログラミングを楽しむ国にする」ことをミッションとし、2020年度から始まる小学校でのプログラミング教育において、子どもたちがプログラミングを楽しめる授業が日本中に広がるよう、企業や行政と協力しながら学校の先生などへの支援を行っている。そして、子どもたちが大人になったころには、「コンピュータ、プログラミングでさまざまな課題を解決してしまう日本」になることを目指している。
今回の「みんなのコード パートナー企業 CSR取り組み報告会」は、Hour of Codeを中心に、みんなのコードの活動に賛同しているパートナー企業がどのような活動を2018年度に展開したのかを報告し合い、教育を軸にした社会貢献の在り方を探究すべく開催されたもの。当日は、サイボウズ、日本マイクロソフト、Googleの3社から活動報告が行われた。
各パートナー企業の活動報告に先立ち、みんなのコード 代表理事の利根川裕太氏が2018年のHour of Codeの概要について紹介。「Hour of Codeは、1時間のコーディング(プログラミング)を通じて、広く社会に対して、テクノロジーに関する教育の普及、啓発を図る世界的なムーブメント。2018年のコンピュータサイエンス教育週間では、『What will you create?』をキャンペーンテーマに、Facebook COO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグ氏やMicrosoft Founderのビル・ゲイツ氏など、さまざまな人物が動画メッセージを公開した。国内でも、IT関連の著名人が参加した動画メッセージが公開され、SNSなどを通じて20万を超えるリーチがあった」としている。
国内の学校現場での取り組み状況としては、「既に熱心だった先生が、他の先生を巻き込む形でHour of Codeの取り組みが広がっていった」と利根川氏。
例えば、小学校1年生では図工、5年生では総合×社会や算数、特別支援では生活の単元でHour of Codeが実施された。パソコン教室をフル稼働して毎日実施したケースや、パソコン教室を開放して生徒に自由に使わせたケース、6年生が下級生にプログラミングを教えたケースなど、さまざまな取り組みが行われたという。
SOMPOシステムズの取り組み
また利根川氏は、今回の活動報告会に参加できなかったパートナー企業として、SOMPOシステムズの取り組みを紹介した。
SOMPOシステムズでは、Hour of Codeの活動の第1弾として、社員の家族を社内に招いてプログラミング教育を実施。保護者からは、「PCが使いこなせて当たり前になってきている」「学びの場として同じ年頃の子どもたちと共に学ぶことは、とても有意義に感じた」「子どもが親の職場を身近に感じてくれた」など、好意的な意見が寄せられたという。
この他に、SOMPOシステムズとみんなのコードが協力して、実際に小学校の教室で4年生向けのプログラミング教育も実施しており、「授業を受けた生徒は、『すごく面白かった』と全員が挙手してくれた。授業中は、子ども同士で教えあったり、分からないところをメンターと一緒に考えたりと、和気あいあいとした雰囲気だった」と振り返った。
サイボウズの活動報告
サイボウズの活動報告では、中村龍太氏が小学校向けプログラミング授業の取り組みを紹介した。中村氏は、「副業解禁元年」といわれた2018年、サイボウズの「新しい働き方」を実践する社員として副業に関する情報を発信しており、“複業家”としても知られる。現在は、サイボウズに加え、NKアグリで農業にも取り組んでいる。
サイボウズが小学校向けプログラミング授業に関わるようになったきっかけについて中村氏は、2017年の朝日新聞出版の『AERA with Kids』担当者と意見交換をした時を振り返る。「2020年に小学校でプログラミングが必修化されるが、そもそもプログラミングで得られるものって何?」という疑問が挙がり、プログラミングで得られるものを洗い出すとともに、現在提供されているプログラミング教育教材を整理してみたという。
「教材の種類は『ビジュアルプログラミング系』と『ロボット系』の2つに分けられ、それぞれ学べる分野に特徴があった。そこでサイボウズでは、ここに『データベース系』の教材を新たに提供できないかと考えた」(中村氏)
サイボウズの「kintone」を使ったデータベース系のプログラミング教材を提案するに当たっては、みんなのコードの協力を得て、学校向けの指導案を共同作成。具体的には、小学校4年国語の「新聞を作ろう」の単元で指導案を作成し、実際に栃木県の小山城北小学校でプログラミング授業を行ったという。
「この授業では、『プログラミング的思考』の観点から、『何を知りたいのか』『どう質問し、適切な回答方法は何か』『kintoneによるアプリの作成』『アンケート実施前のレビュー』などを通じて、ソフトウェアエンジニアの言葉で言う『データベースのテーブル設計』に近い活動を実施した」と授業内容について説明した。
こうした取り組みを経て、2018年は、小学校4年生の理科と国語、小学校6年生の総合的な学習の時間と学活でもkintoneを活用したプログラミング授業を実施し、着実に対応科目を広げている。この中には、学校の先生が指導案を作成し、プログラミング授業を行ったケースもあるという。
中村氏の発表後の質疑応答では、「プログラミングを使った授業を行う際、学校からどうやって協力を得たのか」という質問が上がった。これに対して中村氏は、「みんなのコードからの紹介で、学校の協力を得ることができた。企業からの直接提案だと、先生側に抵抗があったり、校長や教育委員会の了承が得られなかったりする可能性がある。先生や学校から信頼を得ることが大切だと感じている」と回答した。
また、みんなのコードの利根川氏は、「みんなのコードと縁のあるプログラミング教育に熱心な先生方に声を掛け、サイボウズのプログラミング授業に協力してもらえる学校を募った。そこから感度の良い学校を選んでコーディネートした」と補足した。
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