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営業部が発注したシステムを運用部門が受け取り拒否!――ユーザー社内のゴタゴタに巻き込まれた新興システム開発会社の運命開発残酷物語(10)(2/3 ページ)

トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探る本連載。今回は、外国人エンジニア同士の感情のもつれが由来のトラブルと、ユーザー企業の営業部門(発注元)と運用部門(納品先)の合意が取れていなかったために納品後1年以上もシステムが塩漬けにされたトラブルの2本立てでお送りします。

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ベトナム人も日本人も嫌なことは一緒

 林氏が飛行機で駆け付けると、2人のベトナム人エンジニアは互いに口も聞かない状況に陥っており、業務も完全にストップしていた。


山本一郎氏

 原因の発端は、コーディングスタイルのちょっとした違いなど、ささいな問題だったようだ。しかし問題が顕在化した頃には、仲裁も難しいほど互いに態度を硬化させていたそうだ。

 「こじれますよね。あちらでは、バグなどで業務が遅延すると『誰がやったのか?』、スケジュールが遅れると『誰のせいか』、トラブルが発生するたびに問責大会に発展することが多いような気がします」(山本氏)

 「恐らく彼らはプライドが高いのでしょう。例えば、何かを頼んだときに『できない』と即答されても、『あなたができないのなら、他の誰かに頼む』と伝えると、『ちょっと待ってくれ』と言いだして、結局引き受けてくれることがよくあります。技術的、能力的に『できない』と思われるのが悔しいのだと思います」(林氏)

 険悪トラブルの方は、どうなったのだろうか。1人に辞めてもらい、1カ月後に別のエンジニアをアサインして2人体制は維持したという。

 「しかし、再び2人体制にすることで、同じことが起きる可能性もありますよね?」(山本氏)

 事実、残ったエンジニアはその後も、周囲との小さな問題を何度か起こしたそうだ。

 「駐在の若手社員に現場の管理について指導しました」(林氏)

 「ベトナム人の管理ノウハウを伝授したのですか?」(山本氏)

 「いえ、日本人相手のものと変わりません。大勢の人たちの前で叱らないとか、相手がやるべきことを明確に伝えるとか、そういう基本的なことです。さらに言えば、チームとしての意識をいかに現場に醸成していくかを主眼に置くように努めました」(林氏)

 その後、ベトナム人の事務スタッフがエンジニアたちの状況を小まめにチェックしてくれるようになり、深刻な問題が起きることはなくなった。ベトナムでの開発は、現在も順調に進んでいるそうである。

 「ベトナム人はとても勤勉な民族なので、日本人とも相性が良いといわれています。今後もベトナムでのオフショア開発は続けていくでしょう」(林氏)

営業部がGOサインを出したのに!


仁義ってものがあるハズじゃないですか

 2つ目の失敗事例は、サンシステムが創業間もない頃に経験したものだ。

 同社は倉庫業を営むユーザー企業から、あるシステムの開発を受注した。ユーザー企業営業部門の発案で、倉庫を利用しているエンドユーザー企業に対して「ECサイトと発送オペレーションをセットで提供したい」という内容だった。そこで先方社長と、もともと知り合いだった林氏に声が掛かった。

 「先方はスモールスタートを希望していたので、オープンソースソフトウェアを積極的に使うなど、ある程度予算の制約を設けてその範囲内で進めることにしました」(林氏)

 先方の営業部門とサンシステムの開発担当者が協力し合い、プロジェクトは順調に進んだ。しかし納品が間近に迫ったタイミングで、先方の担当者が変更になった。

 「何が起きたのでしょうか?(ワクワク)」(山本氏)

 「『ここから先は実運用の領域』ということで、担当が営業部門から運用部門に引き継がれたのです」(林氏)

 そして仮納品。先方はその後、1年近く何も言ってこなかった。

 「引き継ぎや仮納品の検証に時間がかかっているのかと思って静観していたら、ある日突然『マスターデータベース設計からやり直してほしい』と言われまして……」(林氏)

 「え、既存のマスターデータベースをですか? それだと、完全にイチから開発のし直しも起き得ますよね」(山本氏)

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