JAXAが探査機に“自撮り”させる理由:「歴史的写真」を残すための挑戦――学習データは「模型」で(2/2 ページ)
宇宙開発を行うJAXAでは、惑星探査機から射出された小型プローブを用いて探査機が惑星とともに自撮りするような画像を撮影するために、エッジAIを用いた研究開発を行っている。エッジAIを探査機に搭載する際にどのような課題があったのか、学習データはどう集めたのか。
学習データは「模型」で収集
石田氏は研究にLeapMindの「DeLTA(Deep Learning of Things Architecture)-Family」を活用した。DeLTA-FamilyはLeapMindが提供するエッジAI導入支援のトータルソリューション。AIモデル構築に必要な学習データの作成を支援したり、ハードウェアキットでAIモデルを評価したりできるソリューションを提供する。
- 参考記事:ディープラーニングをFPGAに実装、組み込み向け開発キットをLeapMindが発売
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石田氏は、AIモデルを用いて自撮り画像を選別できることを確認するため、月面と探査機がきれいに写っている写真を収集することにした。しかし、「月面と探査機がきれいに写っている写真がなかった」という。
そこで石田氏は、月の模型と小惑星探査機「はやぶさ」の模型を利用して1万枚の画像を自ら収集。何も写っていない画像を0点、月と探査機の模型が両方きれいに写っている写真を4点として、1万枚を0〜4点で評価した。
そしてDeLTA-Familyと、この学習用データセットを用いて、AIモデルの開発、評価を行った。
「検証用データでAIモデルを評価した結果、月と探査機が写っている写真のスコアが高くなっていることを確認した。さらに、このAIモデルを半年間かけて消費電力5WのFPGAに実装できた」
石田氏は将来の計画を述べて講演を締めくくった。
「当初は、自撮りという曖昧なテーマに、JAXA内部で冷たい視線が送られていたが、FPGAにAIモデルを実装できたことで現在は受け入れられている。宇宙空間での機能実証に向けて開発を続けているが、月面クレーターの高精度検出や衛星に搭載する太陽電池の異常検知など、さまざまなタスクに応用できると考えている。今後、研究開発を通じてエッジAIの可能性を検証していきたい。全体を通じて、ビジネスと懸け離れた話かもしれないが、『宇宙開発というミッションクリティカルな分野でAIモデルが受け入れつつある』と知ってもらえれば幸いだ」
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