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うまくいってもいかなくても、お金はください:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(69)(1/3 ページ)
初期費用を負担する代わりに、売り上げに応じて永久にチャリンチャリン。レベニューシェア型契約は、ベンダーにとっておいしい話か、否か──。
昨今、「レベニューシェア型」という言葉をよく耳にするようになった。
ベンダーは、ユーザー企業のために開発などのサービスを提供しても、その対価としての費用を請求しない。その代わり、発注者が出来上がったサービス(Webサイトなど)を利用して売り上げを上げたら、そのうち何割かを報酬としてもらう、というものだ。「売り上げの1割を報酬とする」場合なら、通信販売サイトで1000万円の売り上げがあれば、その1割の100万円をベンダーの取り分とする、というあんばいだ。
発注者からすれば、売り上げが上がって初めて支払い義務が発生するので、リスクがない。一方のベンダーにしても、提供したサービスが利用されている限りは、お金が入り続ける仕組みなので、それなりに魅力的な形態だ。うまくいけば、正にWin-Winの関係を続けられるというわけだ。
こうした契約は、仕事の「成果」に重きを置くアジャイル開発とも相性が良いので、今後増えていくのではないかと思われる。
しかし、Win-Winの関係も、あくまでソフトウェア開発などのサービス提供がうまくいってこその話である。「開発が失敗して発注者の商売に使えなくて、ベンダーには一銭も入らない」という可能性があることは、中学生でも分かる理屈だし、実際、裁判にまで至ったケースもある。
今回は、事例を紹介しながら、レベニューシェア型契約の危険性とベンダーが取れる対処法を考えてみたい。
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