Microsoft、「Visual Studio 2019 バージョン16.3」を正式リリース:「.NET Core 3.0」に対応
Microsoftは、2019年4月初めにリリースした「Visual Studio 2019」のマイナーアップデート版「Visual Studio 2019 バージョン16.3」の一般提供を開始した。.NET Core 3.0対応などが目玉だ。
Microsoftは2019年9月23日(米国時間)、統合開発環境(IDE)の最新版「Visual Studio 2019 バージョン16.3」の一般提供を開始した。併せて、バージョン16.4のPreview 1を公開した。
Visual Studio 2019 バージョン16.3の特徴は、「.NET Core 3.0」への対応の他、C++機能の大幅な改良、Python開発者向け機能のアップデート、「TypeScript 3.6」のサポートなど。
同時発表の.NET Core 3.0に対応
Visual Studio 2019 バージョン16.3は.NET Core 3.0に対応しており、.NET Core 3.0の全ての新機能についてサポートする。
.NET Coreは、Microsoftと.NETコミュニティーによってGitHub上で管理されているオープンソースの汎用(はんよう)的な開発プラットフォーム。クロスプラットフォーム(Windows、macOS、Linuxをサポート)であり、デバイス、クラウド、IoTアプリケーションの構築に使用できる。
Microsoftは.NET Coreの最新版である.NET Core 3.0の一般提供を、2019年9月23日に開始した。.NET Core 3.0を利用するには、Visual Studio 2019 バージョン16.3以降を使用する必要がある。.NET Core 3.0の主な新機能には、Windows FormsデスクトップアプリケーションやWPF(Windows Presentation Foundation)アプリケーションの作成、Web UIフレームワークであるBlazorを使ったクライアントWebアプリケーションの作成、リモートプロシージャコール(RPC)のフレームワークであるgRPCを使ったバックエンドマイクロサービスの作成のサポートなどがある。
また、.NET Core 3.0では、特定のプラットフォーム固有のアプリケーションを作成することもできる。これは、OS固有の機能を利用して、アプリケーションの魅力を高めることができるということだ。
さらに、今回の機能改良を利用すれば、過去15年間に実装されてきた既存のWindows FormsアプリケーションやWPFアプリケーションの“エンジン”を新しい.NET Core 3.0に入れ替え、そのメリットを取り入れることもできる。例えば既存コードを使用するWindowsアプリケーションを高速化したり、デプロイやメンテナンスを容易にしたりできるという。
さらに、Microsoftは.NET Core 3.0が軽量であることを次のように強調している。
「.NET Core 3.0がWindows FormsやWPFをサポートすることから、アプリケーションが必要とするメモリやディスク容量が増えるのではないかと考える人もいるかもしれない。だが、.NET Coreアプリケーションはこれまでよりサイズが小さくなり、.NET Coreの将来のリリースでは、この傾向がさらに進む。.NET Coreアプリケーションは、高密度化が必要とされるコンテナ/Dockerやクラウドでも、極めて良好に動作する」
.NET Core 3.0のリリースに併せて、Microsoftの.NET構想の中核的なプログラミング言語であるC#についても、最新版の「C# 8.0」の一般提供を開始した。Visual Studio 2019 バージョン16.3は、C# 8.0に対応している。
.NET Coreのデスクトップアプリケーションをサポート
.NET Core 3.0は、Windows FormsやWPFを使ったアプリケーションをフルにサポートする。
Visual Studio 2019 バージョン16.3では、開発者がWPFアプリケーションの作成や公開に際して開発者が使い慣れたツールを用意した。例えば、WPF XAML Designerや、WPFアプリケーション用のMSIXパッケージの作成ツールなどだ。
Microsoftは、.NET Coreプロジェクトに対応した「Windows Forms Designer」(最初のプレビュー版)について提供を開始した。Visual Studio拡張として提供されている今回のプレビュー版をインストールすると、Visual Studioは、アプリケーションのターゲットフレームワークに基づいて、適切なデザイナーを自動的に選択する。プレビュー版がサポートするコントロールはまだ限られているが、今後のプレビュー版でコントロールを拡充していくという。
Microsoftは最近、「Visual Studio App Center」でも、WPFとWindows Formsのサポートを開始している。このサポートはパブリックプレビュー段階にある。
コンテナ内の.NETアプリケーションに対応
Azure Functions(v2)アプリケーションを作成する開発者は、DockerコンテナのサポートをC#プロジェクトに追加できるようになった。現時点ではLinuxでのみサポートする。
具体的には、ソリューションエクスプローラーでプロジェクト名を右クリックし、[追加]−[Dockerサポート]を選択する。Dockerfileをプロジェクトに追加すると、デバッグターゲットが「Docker」に変わる。これは、Functionアプリのデバッグが、稼働中のコンテナ内で行われるということだ。
.NETの生産性を向上
C# 8.0と.NET Core 3.0のリリースに伴い、Visual Studioのツールは、これらを使う際の.NET開発者の生産性が向上するようにアップデートされている。その幾つかの例を以下に挙げる。
まず、リファクタリングにより、fluent呼び出しチェーンをラップできるようになった。そのためには、呼び出しチェーンにカーソルを置き、[Ctrl]+[.]キーを押し、[クイックアクションとリファクタリング]メニューを開き、[呼び出しチェーンのラップ]または[呼び出しチェーンのラップと配置]を選択すればよい。
この他、インタフェースや列挙型、クラスの名前を変更するときに、ファイルの名前を変更できるようになった。具体的には、クラス名にカーソルを置き、[Ctrl]+[R]キーを入力し、[名前の変更]ダイアログを開き、[ファイル名の変更]ボックスをチェックすればよい。
C++開発者向けの機能改善あり
Visual Studio 2019 バージョン16.3ではC++開発者向けに次のような機能強化を施した。
- キーボードショートカット[Ctrl]+[K]キーや[Ctrl]+[/]キーを使って、行コメントを切り替えることができるようになった
- IntelliSense補完リストが型修飾子に基づいてフィルターを通されるようになった。例えば、const std::vectorと入力した後の補完リストでは、push_backなどの不適切なメソッドを除外する
C++開発の生産性を高める改良もある。
- 新しい既定のセマンティック色付けスキームにより、コードが一目で理解しやすくなった。例えば、グローバル関数とメンバ関数を区別する色付けオプションもある
- コールスタックウィンドウを、テンプレート引数を非表示にするように構成できるようになった
- IntelliCodeのC++基本モデルがデフォルトで有効になった
Python開発者向けにも機能を改善
Python開発者は、Pythonプロジェクトと、オープンフォルダのどちらのシナリオであっても、一般的なPythonフレームワークのpytestを使用してテストを実行できるようになった。unittestフレームワークも改良され、よりシームレスにテストを行えるようになった。
Pythonプロジェクトに対してpytestとunittestを有効にするには、プロジェクトソリューション名を右クリックし、[プロパティ]を選択する。プロジェクトデザイナーが開いたら[テスト]タブを選び、テストオプションを選択する。unittestの場合は、テストファイル名のパターンだけでなく、テストのディレクトリ(ルートディレクトリが既定値)も指定する必要がある。テスト検出は、[テスト]タブで変更が保存されると、すぐに始まる。
TypeScript 3.6のサポート
今回、TypeScript 3.6のエディタサポートを開始した。tsconfig.jsonファイルを編集、変更すると、Visual Studioでより早くプロジェクトが更新されるようになった。
JavaScriptやTypeScript分類(一般に「構文の色分け表示」と呼ばれる)が、大きなファイルに対してより素早く適用されるようになった他、JavaScript、TypeScriptのコード修正とリファクタリング(「電球」表示など)の一覧もより迅速に表示されるようになった。
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