スマホでの入力速度が物理キーボードに迫る、複数の大学による調査:オートコレクトが有効
アールト大学など複数の大学が協力してモバイルデバイスでのテキスト入力の速度に関する過去最大規模の調査を行った。スマートフォンでの入力速度は物理キーボードでのタイピング速度に迫っていることが分かり、入力速度を高める方法も明らかになった。
フィンランドのアールト大学と英国ケンブリッジ大学、スイス連邦工科大学(ETH)チューリッヒ校の研究チームが、スマートフォンなどモバイルデバイスでのテキスト入力の速度について調査を行った。
モバイルデバイスを対象とした過去最大規模の調査であり、スマートフォンでも物理キーボードでのタイピング速度に迫っていることなどが明らかになった。
タッチスクリーンタイピングの平均パフォーマンスが分かったことはもちろん、テキスト入力速度に影響する要因が使う指の数にあることも分かった。
両手の親指入力はかなり速い
ETHに所属するポストドクトリアル研究者であるAnna Feit氏は次のように結論をまとめている。「両手の親指でタイプするユーザーのタイピング速度は、1分当たり平均36.2語だった。これは、物理キーボードでの大規模調査で分かった速度より、25%程度遅いにすぎない」
「物理キーボードのタイプ速度は確かに高速だ。1分当たり最大100語にも達する。だが、実際にこの速度でタイプできる人の割合は少ない。ほとんどの人のタイピング速度は、1分当たり35〜65語に収まるという」(Feit氏)
研究チームは、物理キーボードとスマートフォンのタイピング速度の差を「タイピングギャップ」と呼んでいる。
物理キーボードでのタイピングスキルが低下し、スマートなキーボード操作方法(オートコレクトやタッチ方式など)がさらに進化すれば、いずれはタイピングギャップがなくなる可能性もあると、研究チームは予想している。例えば、研究ではタッチスクリーンタイピングで1分当たり85語という目覚ましい速度を記録したユーザーもいるという。
どうやって調査したのか
今回の研究では、タイピング速度テストサービスを提供するフィンランドのTyping Masterの協力を得て、ボランティアで参加した3万7370人のユーザーのデータセットを収集した。
テストでは、与えられた一連の文章をタイプ入力した。研究チームは参加者の同意を得て、このタイプ入力時のキー操作を記録し、タイピング速度やエラー、モバイルデバイスでのタイピングに関連する他の要因を評価した。
他に類を見ない今回の大規模なデータセット(圧縮ファイルで約4.7GB)は内容が公開されている。参加者はあらゆる年齢層にわたり、160以上の国からテストに参加している。最も大きな集団は20代初めの女性であり過半数を占めた。国別では米国が最も多かった。平均すると参加者は平均して1日当たり6時間、モバイルデバイスを使っていた。
研究者は、「この膨大なデータから、若い女性はソーシャルメディアに多くの時間を費やし、お互いにコミュニケーションを取っており、そのおかげでタイピングに慣れているために、速いことが分かる」と述べている。
一本指方式か両手の親指方式か
調査では、タイピング速度を左右する最大の要因が、タイプの際に一本指を使うか、両手の親指を使うかであることも分かった。74%以上の人が両手の親指でタイプしており、タイピング速度の向上に非常に大きな効果があった。
要因はもう一つある。単語のオートコレクト(スペルミスの自動修正)だ。明確なメリットがあった。
だが、単語予測(提示された単語候補を手動で選択)がそうではないことも明らかになった。ユーザーが候補の中から単語を選択する方が、単に文字をタイプするより時間がかかってしまうのだという。
なお、調査参加者のほとんどが、何らかのインテリジェントサポートを利用しており、オートコレクトや単語予測、ジェスチャータイピングのいずれも使わない参加者は、14%にとどまった。
以上の調査結果から当然のことながら、研究チームは、モバイルデバイスで速くタイプしたい場合は、単語のオートコレクトを有効にして、両手の親指を使うよう勧めている。
世代の差は大きい
タイピング速度が世代によって大きく違うことも分かった。10代の調査参加者は、40代よりもタイピング速度が1分当たり10語速かった。この違いは、タッチスクリーンデバイスをずっと使ってきた若い世代と、そうではない世代の差だと、研究者は説明している。
こうした若い世代のモバイルデバイスでのタイピングスキルは、物理キーボードの場合とは非常に異なり、正式なトレーニングではなく、自力で身に付けるものだという。
研究チームは2019年10月2日、台湾の台北で開催された21st International Conference on Human-Computer Interaction with Mobile Devices and Services(MobileHCI)において、調査結果のプレゼンテーションを行った。
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