AWSがベアメタルオプションを拡張、Armベースの「Amazon EC2 A1」インスタンスに対応:OSがハードウェアに直接アクセス
Amazon Web Services(AWS)は、Armベースの「Amazon EC2 A1」インスタンスのベアメタルオプション「a1.metal」の提供を開始した。
Amazon Web Services(AWS)は2019年10月10日(米国時間)、「Amazon EC2 A1」インスタンス(A1インスタンス)のベアメタルオプション「a1.metal」の提供を開始すると発表した。仮想環境での実行を認められていないアプリケーションの利用などに適する。
A1インスタンスは、Armベースの「AWS Graviton」プロセッサで動作する初のEC2インスタンス。このプロセッサには、64bitの「Arm Neoverse」コアとAWSが設計したカスタムシリコンが搭載されている。
A1インスタンスは、Webフロントエンドやコンテナ化されたマイクロサービス、キャッシュサーバ群のようなスケールアウト型ワークロードに適している。Armをターゲットとする開発者はA1インスタンスを使用することで、クラウド上のArmベースインフラでネイティブに構築やテストを行うことができ、クロスコンパイルやエミュレーションが不要になる。
ベアメタルオプションの利点とは
今回のベアメタルオプションの主な仕様は次の通り。
インスタンス名 | 論理プロセッサ | メモリ | EBS最適化帯域幅 | ネットワーク帯域幅 |
---|---|---|---|---|
a1.metal | 16 | 32GiB | 3.5Gbps | 最大10Gbps |
既存のベアメタルインスタンス(「M5」「M5d」「R5」「R5d」「z1d」など)と同様に、a1.metalでは、OSは基盤となるハードウェア上で実行され、プロセッサに直接アクセスできる。
ベアメタルインスタンスは、以下のようなアプリケーションに向く。
- 物理リソースや、仮想環境で利用できるとは限らない、あるいは十分にサポートされていない低レベルのハードウェア機能(パフォーマンスカウンタなど)にアクセスする必要があるアプリケーション
- ハードウェア上で直接動作するように作られたアプリケーションや、非仮想環境での使用向けにライセンスまたはサポートされるアプリケーション
また、ベアメタルインスタンスは、「Elastic Load Balancing」「Auto Scaling」「Amazon CloudWatch」などのAWSサービスも利用できる。
a1.metalインスタンスは、先行して提供されてきた米国東部(バージニア北部)、米国東部(オハイオ)、米国西部(オレゴン)、欧州(アイルランド)の4つのAWSリージョンに加え、10月10日から欧州(フランクフルト)、アジアパシフィック(東京)、アジアパシフィック(ムンバイ)、アジアパシフィック(シドニー)の4リージョンでも利用できるようになった。
さまざまな環境を利用できるA1インスタンス
A1インスタンスでは、「Ubuntu」「Red Hat Enterprise Linux」「SUSE Linux Enterprise Server」「Debian」、そして「Amazon Linux 2」のような人気のあるLinuxディストリビューションのAmazonマシンイメージ(AMI)を実行できる。
「Apache HTTP Server」や「NGINX Plus」のようなアプリケーションも利用可能だ。同様に、全ての主要なプログラミング言語とランタイムも利用できる。PHPやPython、Perl、Go、Ruby、Node.jsや、「Amazon Corretto」など各種Java環境を含む。Amazon CorrettoはOpenJDKのオープンソース実装であり、AWSでサポートされている。
コンテナ関連では、「Amazon Elastic Container Service(ECS)」と「Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS)」がA1インスタンスをサポートしている。Dockerは、「Docker Enterprise Edition」でのArmベースアーキテクチャのサポートを発表しており、ほとんどの正式なDockerイメージはArmをサポートしている。また、数百万人の開発者がArmエミュレーションを使用して、デスクトップマシンでコンテナの構築、実行、テストを行った上で本番環境に移行できるようになっている。
さらに、A1インスタンスは「Amazon Elastic Block Store(EBS)」、Amazon CloudWatch、「Amazon Inspector」「AWS Systems Manager」「AWS Batch」など、多くのAWSサービスとシームレスに統合されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「ライセンスコストを低減」、AWSがベアメタルインスタンス5種を発表
Amazon Web Servicesは2019年2月14日(米国時間)、新たなベアメタルインスタンス5種を発表した。このうち東京リージョンでも提供開始されたz1dは、ライセンスコスト低減に寄与するという。 - 分散機械学習やHPCアプリに最適化、AWSが高性能GPUインスタンス「p3dn.24xlarge」を正式リリース
Amazon Web Services(AWS)は、「Amazon EC2」の「P3」インスタンスファミリーに新たに追加した「p3dn.24xlarge」インスタンスの正式提供を開始した。 - AWSが自社開発プロセッサやNitro Systemを説明、新たなインスタンスタイプを次々生み出すための武器
Amazon Web Services(AWS)は2018年11月27日、サーバの各種機能をオフロードできる技術群「Nitro System」の展開について紹介。その延長線上で、Armベースのプロセッサ「AWS Graviton Processor」を自社開発したことを明らかにした。