CEOの8割が従業員のスキル不足を懸念 PwCが「第22回世界CEO意識調査」発表:「効果的なイノベーションを阻害」
PwCは「第22回世界CEO意識調査」の結果を発表した。「自社の従業員に対して、業務上必須のスキルが不足していることに不安がある」と回答した割合は8割。スキル不足の結果「効果的なイノベーションが創出されない」などの悪影響が出ていた。
PwC Japanは2019年10月18日、「第22回世界CEO意識調査」の結果を発表した。それによると、調査対象CEOの8割が「自社の従業員に対して、業務上必須のスキルが不足していることに不安がある」と回答し、従業員のスキル不足を解決する施策としてCEOの関心を集めているのは「既存スタッフに対する大規模な再教育」だった。
スキル不足に対するCEOの懸念
「社内人材の必須スキルの不足や欠如」は、自社事業にとってどの程度の懸念、不安材料であるかを聞いた。その結果、「非常に強い懸念や不安がある」や「いくばくかの懸念や不安がある」と回答したCEOの割合は合計79%だった。こうした懸念を示す割合は、2013年までは50%台だったのに対して、2015年以降は70%以上に急上昇している。
従業員に必須なスキルが欠如した結果として「効果的なイノベーションが創出されない」(55%)や「想定を超える人件費増大」(52%)、「品質水準や顧客体験への悪影響」(47%)といったマイナス効果が出ている。
PwCによると、このような懸念は新技術の台頭に呼応するもので、世界中でその傾向が見られるという。その中でも懸念を示す割合が高いのは日本(95%)や中欧/東欧(89%)で、イタリア(55%)やトルコ(45%)は低かった。
CEOが従業員に求めるのは「グローバルな経験」ではなく「技術に精通」
CEOが従業員に求めるスキルの種類や特性は、ここ数年で明確に変化している。2008年には「グローバルな経験を持つ人材」を求めていたのに対して、2019年は「技術に精通した人材」を望んでいる。PwCでは、イノベーティブ思考を備え、正しい戦略を策定し、事業に必要とされる最適な形でシステムやツールを活用できるような人材が必要とされているという。
次に、「自社の潜在的なスキル不足を埋めるのに最も重要なこと」を聞いた。すると、「大規模な再教育やスキル向上」と回答した割合が46%で最も多く、次いで「他業界からの採用」(18%)、「教育機関からの強固なパイプラインの確率」(17%)と続いた。
世界経済フォーラムの試算によると、米国で新しいスキルを獲得するには1人当たり2万4000ドルもの高額がかかる。だがPwCは、必要なスキルを持った新たな従業員を見つけるのと比べれば、既存の従業員に新たなスキルを獲得させることは魅力的な選択肢だと指摘する。
基本的な能力底上げが必要
従業員も新たなスキルの獲得には前向きだ。PwCの調査によると、デジタルスキルの研修機会を会社が提供した場合、1カ月当たり2日間は進んで参加するとの結果が得られた。
ただしPwCは、企業の既存の研修プログラムが「これから従業員が習得しなければならない複雑性の高いタスクの学習に適した設計ではない」と指摘する。企業が従業員に新しいスキルを獲得させ、将来に向けてより柔軟性の高い人材集団を構築するには、まず「デジタル世界に関する基礎的理解や能力」といった基本的能力の底上げにフォーカスしなければならないと提言する。そして、獲得したデジタルスキルが今後有効である期間は短いため、学び続ける姿勢を企業文化にしていく必要があるとしている。
一方、「企業内でのAI(人工知能)の活用や展開」について、「政府がインセンティブを提供すべきだ(ただし具体的な企業施策への干渉は望まない)」と答えたCEOの割合は66%に上った。そして56%が「技術によって職を追われた就労者を守るのは政府の責任」と回答し、76%は「今後のAIの台頭が人々の仕事や社会に与える影響について、政府は国家戦略を策定すべきだ」とした。PwCでは、AIに関しては社会全体が集合体として直面している課題であり、官民の垣根を越えた協働的なアプローチが必要だとしている。
PwCでは、今後の就労市場の変化を乗り越えるために、企業を率いるCEOは次の5つの項目に注力する必要があるとしている。
- 人事関連データの分析レベルを向上させる
- 経営者たちは、従業員の新しいスキル獲得についての企業としての戦略と、それが各従業員にもたらす意味を明確に提示する
- 社外へのストーリーも企業内で働く人々へのストーリーと等しく重要視する
- 従業員の新しいスキルの構築はあくまでも全体ストーリーの一部と認識する
- 職場を変革していく上では、新しい職場管理に関するアプローチをする
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