Microsoft製品のサポート終了対応や機械学習など、多様な製品サービスをAWSが発表:リアルタイムの自動音声認識サービスも
Amazon Web Services(AWS)は米ラスベガス市で開催中の「AWS re:Invent 2019」で、多数の新しい製品やサービス、機能の提供を開始することを発表した。新製品のプレビュー版の紹介もある。
Amazon Web Services(AWS)は2019年12月2日(米国時間)、米ラスベガス市で開催中の「AWS re:Invent 2019」で、機械学習(ML)体験プログラムの新展開や、新製品、サービス、機能の提供を開始することに加えて、新製品のプレビュー版などを発表した(関連記事)。
強化学習向けの実験用小型レーシングカー「AWS DeepRacer」プログラムを拡張
AWSは、ステレオカメラと光を用いるLiDAR(Light Detection and Ranging)センサーを備えた18分の1サイズの実験用小型レーシングカー「AWS DeepRacer Evo」を発表した。強化学習を用いるため、ラベル付けされたトレーニングデータを使わずに動く障害物をよけるといった複雑な走行を最適化できる。
2020年初めにAWS DeepRacer Evoの生産計画を発表する見込みだ。今回の計画には、既存のDeepRacer用のセンサーアップグレードキットも含む。
AWSは、オンラインまたは対面で他のユーザーと対戦する機会を提供する「AWS DeepRacerリーグ」の規模を拡大する。AWS Summitの一環として5カ国で8つのレースを追加し、18の仮想レースを追加する。さらに、オブジェクト検出と回避の他、同じトラックで競走する新しいレースタイプを追加する。
AWSが提供するレース以外にも、ユーザーがコンソールで独自の仮想コミュニティーレースを立ち上げることができるようにする予定だ。
リアルタイム自動音声認識が可能な医療向けサービス「Amazon Transcribe Medical」を開始
医療向けの自動音声テキスト変換サービス「Amazon Transcribe Medical」の提供を米国東部(バージニア北部)と米国西部(オレゴン)リージョンで開始した。
Amazon Transcribe Medicalは、アプリケーションへ音声テキスト変換機能を容易に追加できるようにする自動音声認識サービス「Amazon Transcribe」の応用例で、医療向けに拡張した。
ウイスコンシン大学と米医師会の調査によれば、プライマリーケアを担当する米国の医師は1日当たり6時間を医療情報連携基盤(EHR:Electronic Health Record)へのレポート入力に費やしている。
Amazon Transcribe Medicalを導入することで、医師は素早く簡単に臨床ノートを口述で作成でき、患者に向き合う時間を増やすことができる。
「Windows Server」と「SQL Server」のライセンスの持ち込みが簡単に
米国東部(バージニア北部)と米国西部(オレゴン)リージョンで、これまでより簡単に「Microsoft Windows Server」と「Microsoft SQL Server」の既存ライセンスをユーザーがAWSに持ち込み、管理できるようにする新しいBYOL(Bring Your Own License:ライセンスの持ち込み)エクスペリエンスの提供を開始した。他のリージョンでも順次提供開始するとしている。
新しいBYOLエクスペリエンスを適用することで、ホストの割り当てや解放などの管理タスクを自動化できる。ホストの自動スケーリングや自動リカバリーなどの機能を有効にでき、ホスト管理エクスペリエンスがシンプルになる。その結果、他のAmazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)インスタンスを作成するのと同じ手法で、専用ホスト上にBYOLインスタンスを簡単に作成できる。
サポートが終了したWindows Serverで動作するアプリケーションを利用する企業向けに移行プログラムを提供
2020年1月14日に「Windows Server 2008」と「同2008 R2」のサポートが終了することを踏まえ、サポート終了後のWindows Serverでしか動作しないアプリケーションを使っている顧客向けに、「AWS End-of-Support Migration Program(EMP)for Windows Server」を開始した。
レガシーアプリケーションを、AWS上にあるサポート中の新しいWindows Serverに移行できるよう支援する。レガシーアプリケーションでコードを変更する必要はなく、元のインストールメディアやソースコードも必要ない。発表ではAWS上のWindows Server 2016へ、サポートの切れたMicrosoft SQL Server 2000を移行する例を取り上げた。
MLモデルのトレーニングやチューニング、デプロイを容易にする「Amazon SageMaker Operators for Kubernetes」の提供を開始
米国東部(オハイオ)と米国東部(バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、欧州(アイルランド)リージョンで、「Amazon SageMaker Operators for Kubernetes」の提供を開始した。
Amazon SageMaker Operators for Kubernetesは、Kubernetesを使用する開発者やデータサイエンティストが、フルマネージドMLサービス「Amazon SageMaker」でMLモデルを簡単にトレーニング、チューニング、デプロイできる新機能。
顧客はKubernetes APIや、「kubectl」のようなコマンドラインKubernetesツールを使って、Amazon SageMaker OperatorsをKubernetesクラスタに導入し、Amazon SageMakerジョブをネイティブに作成できる。
OSイメージビルドパイプラインを自動化する「EC2 Image Builder」の提供を開始
新サービス「EC2 Image Builder」の提供を全AWSリージョンで開始した。このサービスでは、自動化されたビルドパイプラインを使って、Windows Serverや「Amazon Linux 2」のイメージを簡単、迅速に構築し、メンテナンスできる。
EC2 Image Builderで作成したイメージはAmazon EC2とオンプレミスで利用でき、情報セキュリティ規制の順守に役立つように保護、堅牢(けんろう)化できる。
3製品のプレビュー版を発表
AWSは新製品やサービスの提供開始と合わせ、3種類の製品のプレビュー版を発表した。
- Amazon EventBridge Schema Registry
「Amazon EventBridge Schema Registry」は、サーバレスイベントバス「Amazon EventBridge」のイベントの構造(スキーマ)を保存し、JavaやPython、TypeScriptバインディングにマッピングし、それらのイベントを型付けオブジェクトとして使えるようにする。
このレジストリにはスキーマを自分で追加できる他、「Schema Discovery」を使って、イベントバスに送信される全てのイベントのスキーマを自動的に取得し、追加することもできる。
- AWS IoT SiteWise
AWSは、「AWS IoT SiteWise」の既存プレビュー版を拡張し、新機能を追加した。
このマネージドサービスを使うことで、工場や風力発電所、鉱山など大規模な生産施設やサプライチェーンを構成する産業機器からの大規模なデータの収集、構造化が容易になる。
今回追加した新機能では、施設の仮想表現を作成して生産パフォーマンス指標を監視できる他、「AWS IoT SiteWise Monitor」を使って、データをリアルタイムに可視化できる。
ゲートウェイを介したり、マネージドクラウドサービス「AWS IoT Core」とのネイティブ統合を用いたりして、産業機器がAWS IoT SiteWiseと通信できる。AWS IoT SiteWiseでは、AWS IoT SiteWise APIを経由して直接アクセスできる他、産業オートメーション向けの標準規格「OPC-UA」とIoT向けの軽量プロトコル「MQTT」もサポートする。
- AWS IoT SiteWise Monitor
この新しいSaaSアプリケーションは、AWS IoT SiteWiseで収集、整理されたデータのモニタリングと操作を可能にする。産業機器からのデータを可視化し、ダッシュボードで見ることができる(以下はサンプル)。
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