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失敗するWindows 10の「システムイメージの作成」をwbadminツールで代替する山市良のうぃんどうず日記(180)

Windows 10は、Windows Vista/Windows Server 2008と共通の技術を用いたイメージベースのバックアップと復元機能(「Complete PC Backup」とも呼びます)を搭載しています。この機能は既に開発終了扱いとなり、推奨されなくなっているため、問題が起きても迅速な対応は期待できないかもしれません。万が一のためのバックアップが、万が一動かなかったときに備え、コマンドライン版の「wbadmin」ツールの存在を頭の片隅にでもとどめておきましょう。筆者は何度かこれに救われました。

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山市良のうぃんどうず日記

「システムイメージの作成」が原因不明のエラーでバックアップ不能に

 「Windows 10」が備えるレガシーなイメージベースのバックアップ機能は、コントロールパネルに「バックアップと復元(Windows 7)」や「システムイメージの作成」(以下、「システムイメージの作成」)という名前で残されています。

 「設定」アプリの「バックアップ」にある「ファイル履歴」は、ZIPアーカイブによるデータのバックアップ用であり、システム全体のバックアップには対応していません。「設定」アプリの「バックアップ」には「以前のバックアップをお探しですか?」のところにレガシーなバックアップ機能へのリンクがあります(画面1)。

画面1
画面1 Windows 10の「ファイルの履歴」はWindows 8からのデータ用の新しいバックアップ機能。システム全体のバックアップが取得できる標準のツールはコントロールパネルの「バックアップと復元(Windows 7)」にある

 「Windows 7」のサポートが終了した今となっては、「バックアップと復元(Windows 7)」という名前や、「Windows 7のバックアップと復元ツールで作成したバックアップは、Windows 10でも使用できます」という説明は利用者を混乱させるかもしれませんが、Windows 7の「バックアップと復元」と機能は変わりません。

 「システムイメージの作成」を利用すると、C:ドライブおよびOSの起動に不可欠なパーティションを「ボリュームスナップショット(VSS)」で取得し、別のディスク(USB外付けHDDなど)や書き込み可能な光学メディア(複数枚のDVDなど)、ネットワーク共有にバックアップを作成することができます。バックアップ先が常に利用可能な状態にあるなら、バックアップをスケジューリングして自動化することも可能です。

 作成したバックアップを使用すると、起動しなくなったシステムや故障したディスクを新しいディスクに交換した場合(ただし同じ容量か、より大きな容量に)などに、高速にシステム全体を復元することができます。

 復元時には、Windows 10の回復オプションの「イメージからシステムの修復」(画面2)や「システム修復ディスク」(recdisk.exeで作成可能)、「回復ドライブ」(RecoveryDrive.exeで作成可能)から起動して、バックアップを選択しイメージを復元します。

画面2
画面2 Windows 10の回復オプションの「イメージからシステムを回復」を使用すると、作成済みのバックアップからイメージの高速な再適用でシステム全体を復旧できる

 筆者は別のバックアップ方式を利用したデータの計画的な(自動化された)バックアップとは別に、全ての物理PCで「システムイメージの作成」で数カ月に一度、フルバックアップを作成しています。特に、半年に一度の機能更新プログラムの前月(または直前)には欠かさないようにしています。

 ご存じの方も多いと思いますが、「システムイメージの作成」機能はWindows 10 バージョン1709で開発終了扱いとなり、推奨されない機能になりました。将来のWindows 10のリリースでは、この機能は削除される可能性があるため、サードパーティーのバックアップツールを利用することが勧められています。以下のドキュメントの「System Image Backup(SIB)Solution」がこの機能に相当します。

 最新の「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」では、この機能はまだ健在であり、筆者がWindows 10の完成版ビルド(19041.208)で試した限りでは、この後説明するように例外もありましたが、バックアップ、復元ともに正常に機能しました。

「システムイメージの作成」が原因不明のエラーでバックアップ不能に

 「システムイメージの作成」は開発が終了し推奨されなくなった機能であるため、万が一問題が起きても、Microsoftによる迅速な対応は期待できないと思っておいた方がよいでしょう。

 先日、機能更新の繰り返しでディスクの先頭に無駄な空のパーティションができてしまい、それを削除するために「システムイメージの作成」を用いてバックアップを取得しようとしたところ(パーティションを手動で作成して、C:ドライブのみをバックアップから書き戻す予定)、「0x81000036」という原因不明のエラーが発生し、バックアップ用のディスクを選択できないということがありました。代替策としてネットワーク共有を選択しようとしたところ、今度は「パラメーターが間違っています。(0x80070057)」というエラーで失敗してしまいます(画面3)。

画面3
画面3 「0x81000036」という原因不明のエラーが発生し、バックアップ用のディスクの検索に失敗

 このPCはInsider Preview評価用であり、初めてのバックアップであったため、以前からこの状態であった可能性があります。同じバージョン、ビルド、同一構成の別のPCでは問題がないので、Windows 10の特定のバージョンやビルド固有の問題ではなさそうです。Webで「0x81000036」や「0x80070057」を検索してみても、解決できそうな情報にはたどり着けませんでした。

 システム全体、少なくともCドライブのバックアップを取得することが目的なので、エラー原因の調査や解決には手を付けず、少し面倒な手順になっても別の方法を考えることにしました。例えば、面倒な方法としては、「Windows回復環境(WinRE)」のコマンドプロンプトから「DISM」コマンドを使えば、C:ドライブのキャプチャー(DISM /Capture-Image)や書き戻し(DISM /Apply-Image)ができます。

 結論から言うと、「システムイメージの作成」のコマンドライン版である「wbadmin」ツールを使用して、簡単に代替することができました(後述しますが、「今すぐバックアップ」からのスケジュールバックアップで成功する場合もあります)。Windows 10のwbadminツールは「Windows Server 201」6以降に搭載されているものと共通であり、オンラインドキュメントは以下の場所にあります。コマンドのヘルプは、バックアップ操作は「wbadmin start backup /?」、復元操作は「wbadmin start recovery /?」で参照できます。

 例えば、バックアップ用ディスクにC:ドライブおよび起動に不可欠なパーティションのバックアップを作成するには、コマンドプロンプトを管理者として開き、以下のコマンドラインを実行します。「システムイメージの作成」で「0x81000036」エラーが発生する状態でも、このコマンドラインでバックアップの作成を正常に完了することができました(画面4画面5)。

wbadmin START BACKUP -backupTarget:<バックアップディスクのドライブ文字:> -Include:C: -allCritical -vssFull
画面4
画面4 「システムイメージの作成」のGUIの代わりに、wbadminツールを使用してフルバックアップを作成すると成功
画面5
画面5 念のため、wbadminツールで作成したバックアップから正常に復元できることも確認

過去にはバグ解消までに2年放置されたことも

 Microsoftによる迅速な対応は期待できないと述べましたが、過去にはこんなバグが存在しました。Windows 10 バージョン1607まで正常に機能していたネットワーク共有からのバックアップの復元操作が、Windows 10 バージョン1703で「0x8007001F」エラーで失敗するという問題です。

 この問題は、Windows 10 バージョン1703で置き換えられたネットワーク共有接続時の資格情報の入力ダイアログボックスが、復元用のツールのベースとなっているWinREで利用できないことが原因で発生するバグです。

 通常起動時のバックアップ時には新しい資格情報入力ダイアログボックスは問題なく機能するため、問題に遭遇するのはネットワーク共有に作成済みのバックアップから復元する緊急時ということになります。そして、回避策はWinREのコマンドプロンプトからネットワーク共有に接続し、wbadminツールを使用して復元するというものです。

 この問題は、Windows 10 バージョン1809向けの2019年1月の累積更新プログラム(ビルド17763.292)でようやく修正されましたが、修正されたものを利用するには非常に面倒な手順で回復ドライブを準備する必要がありました。事実上、修正されたのは2年以上が経過してリリースされたWindows 10 バージョン1903からになります(画面6)。

画面6
画面6 復元ツールからネットワーク共有に接続しようとしたところ。Windows 10 バージョン1703〜1809(1809は修正を含む回復ドライブを使用しない場合)は資格情報ダイアログボックスを提示できずに内部エラーが発生(画面左)。バージョン1903以降では資格情報の入力がCUI版に置き換えられ、問題が解消された(画面右)

 バグの存在するバージョンのWindows 10を利用している方もいると思いますし、「Windows Server 2019」にも影響するものなので、回避方法を紹介するサポートチームのブログを以下にリンクしておきます。

 最後に、Windows 10 バージョン1909において「システムイメージの作成」で正常にバックアップを取得できていたPCのうち1台で、バージョン2004にアップグレード後、同様にエラー「0x81000036」が発生し、wbadminツールによるバックアップもエラー「サーバーによって例外が返されました」で成功しないこともありました。

 そのため、必ずしもwbadminツールの方法が成功するというわけではありません。その際には、「今すぐバックアップ」(未設定の場合「バックアップの設定」)からのスケジュールバックアップで、システムイメージのみを選択的にバックアップすることで、バックアップを完了させることができました(画面7)。「システムイメージの作成」の作成で問題が発生したときは、(1回限りの)スケジュールバックアップを試してみることもお勧めします。

画面7
画面7 「システムイメージの作成」やwbadminツールが失敗する場合でも、スケジュールバックアップによるシステムイメージの作成は成功

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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