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Windows 10 May 2020 Update後のWindows Updateに“へん”化あり[その2]山市良のうぃんどうず日記(186)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で停止されていたオプションの更新プログラム(通称、Cリリース、Dリリース)の提供が、2020年7月から少し形を変えて再開されました。Windows 10 May 2020 Updateにとっては初めてのオプションの更新プログラムとなったわけですが、ここにもWindows Updateの新たな改善が見つかりました。本当に改善といっていいのかどうかは読者の判断にお任せしますが、筆者の個人的な感想は……。

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山市良のうぃんどうず日記

C/Dリリースが“更新のプレビュー”として再開

 Microsoftはサポート中のWindowsおよび.NET Frameworkについて、毎月第2火曜日(米国時間)に“Bリリース”と呼ばれるセキュリティを含む累積更新プログラムを、その翌週か翌々週に“Cリリース”または“Dリリース”と呼ばれるオプションの累積更新プログラムをリリースしてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で、2020年5月と6月はC/Dリリースの提供を停止していました。そして、7月から再開したわけですが、少し以前とは異なる形になります。

 C/Dリリースと呼ばれていたものは「更新プログラムのプレビュー」という名称に変更され、Cリリースのタイミングで「Cリリース」として提供されることになりました。翌週に提供がずれたとしても「Dリリース」という呼び方は使用されなくなるようです。また、対象は「Windows 10」のバージョン1809以降および「Windows Server 2019」で、それ以前のWindows 10、「Windows 8.1」「Windows 7 SP1」と「Windows Server 2016」以前には「更新プログラムのプレビュー」が提供されることはなくなります。

 2020年7月21日(米国時間)にはWindows 10 バージョン1809〜1909とWindows Server 2019に対し、Windowsおよび.NET Frameworkのそれぞれについて「更新プログラムのプレビュー」がリリースされました。「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004、OSビルド19041)」については、1週間以上間を開けて7月31日(米国時間)にリリースされました。

Windows 10 バージョン2004初の「更新プログラムのプレビュー」で明らかになった新機能?

 本連載第183回では、Windows 10 バージョン2004で変更されたWindows Updateの仕様や機能を紹介しましたが、提供が再開されたCリリース(更新プログラムのプレビュー)は、Windows 10 バージョン2004のこれまで多くのユーザーに知られていなかった、また別のWindows Updateの変更点を世に示すことになりました。

 画面1は、Windows 10 バージョン1909の「設定」アプリにある「Windows Update」の画面です(1903も同様)。Cリリースが利用可能であることが、「オプションの更新プログラムがあります」に案内されます。

画面1
画面1 Windows 10 バージョン1903/1909からはWindows 10向けのCリリースの更新プログラムが「オプションの更新プログラム」として案内されるように

 ユーザーはこの更新プログラムをインストールしたい場合、「ダウンロードしてインストール」をクリックします。Windows 10 バージョン1903以降は、以前のバージョンの「更新プログラムのチェック」をクリックすることでオプションの更新プログラムが勝手にダウンロードされ、インストールが始まってしまうという仕様からは大きく改善されました(注:Windows 10 バージョン1809とWindows Server 2019にこの機能はなく、「更新プログラムのチェック」をクリックすると、オプションの更新プログラムのダウンロードとインストールが始まります)。

 ただし、.NET Frameworkの「更新プログラムのプレビュー」は残念なことに案内されることはなく、「更新プログラムのチェック」をクリックするとダウンロードとインストールが始まってしまいます(Windows 10 バージョン1903以降で「更新プログラムのチェック」をクリックせずに自動更新で検出された場合は「ダウンロード」ボタンが提示されるようです)。

 画面2は、Windows 10 バージョン2004のCリリースの案内です。ユーザーインタフェース(UI)が変更され、オプションの更新プログラムがある場合に「オプションの更新プログラムを表示」のリンクが提示されるようになります。それをクリックすると「その他の更新プログラム」として選択的に更新プログラムをチェックしてインストールできるように変更されています。

画面2
画面2 Windows 10 バージョン2004からのWindows 10向けのCリリースの更新プログラムの案内。「オプションの更新プログラムを表示」、チェックボックスをチェック、「ダウンロードしてインストール」のクリックの3ステップが必要に

 チェックボックス形式になったのは、オプションの更新プログラムが複数ある場合に選択できるようにしたものなのでしょうか。それとも、「ダウンロードしてインストール」を早まってクリックすることを防止するためにワンクッションを置いただけなのか、今のところ情報はありません。

 この変更点を含め、2020年7月の「更新プログラムのプレビュー」は突っ込みどころが満載でした。筆者が気付いたことをご覧ください(Feedback Hubなどを通じてフィードバック済み)。

こんなWindows Updateはいやだ(1)――「更新プログラムのプレビュー」の日本語がめちゃくちゃだ

 Cリリースの再開をアナウンスするブログ記事では、フィードバックに基づいて、オプションの更新プログラムのリリースを分かりやすくするために「プレビュー(Preview)」リリースと命名することにしたとあります。

 しかし、前出の画面1画面2を見れば分かるように、Windows 10のCリリースに「プレビュー(Preview)」の文字は見当たりません。筆者は約束が違うじゃないかと思いましたが、英語版Windows 10に日本語言語パックを追加したPCで見てみると、更新プログラムのオリジナルの英語名には確かに「Preview」の文字が含まれていました(画面3)。

画面3
画面3 Cリリースの更新プログラムの英語名には「Preview」の文字が追加されていた

 画面1の.NET Framework向けのCリリースには「プレビュー」の文字が見えますが、意味不明な名称になってしまっています。7月の「更新プログラムのプレビュー」については、Windowsと.NET FrameworkのCリリースの両方に、更新プログラム名の日本語訳に問題があったわけです。

 例えば、Windows 10 バージョン2004向けには、Windowsおよび.NET Framework向けに以下の2つの更新プログラムがリリースされました。

  • 2020-07 Cumulative Update Preview for Windows 10 Version 2004 for x64-based Systems(KB4568831)
  • 2020-07 Cumulative Update Preview for .NET Framework 3.5 and 4.8 for Windows 10 Version 2004 for x64(KB4562899)

 日本語版Windows 10には、これらの更新プログラムが次の2つの名称で提供されました。完全に機械翻訳任せで、人のチェックは入っていないようです。

  • 2020-07x64ベースシステム用Windows 10 Version 2004の累積更新プログラム(KB4568831)
  • .NET Framework 3.5用の2020-07累積的な更新プログラムのプレビューとx64(KB4562899)のWindows 10 Version 2004用の4.8

 更新プログラムは言語に関係なく共通なのだから、無理して訳さない方がありがたく思えてきます。以前の人のチェックが入っていると思われる名称(例えば2020年2月のCリリース)に合わせると、次のような名称が正しい新名称だと思います。

  • 2020-07x64ベースシステム用Windows 10 Version 2004の累積更新プログラムのプレビュー(KB4568831)
  • 2020-07 .NET Framework 3.5および4.8の累積的な更新プログラムのプレビュー(x64向けWindows 10 Version 2004用)(KB4562899)

こんなWindows Updateはいやだ(2)――「更新プログラムのプレビュー」の進行状況が見えない

 Windows 10 バージョン2004で「更新プログラムのチェック」をクリックして.NET Frameworkの「更新プログラムのプレビュー」をインストールしようとした、あるいは「オプションの更新プログラム」でWindowsの「更新プログラムのプレビュー」をチェックして「ダウンロードとインストール」をクリックしたという方は、不可思議な体験をしたことでしょう。

 どちらも、更新プログラムのダウンロードとインストールが進み、再起動待ちになるまで、進捗(しんちょく)状況が表示されなかったのです。いつもの見慣れた「ダウンロード中−0〜100%」や「インストール中−0〜100%」は表示されず、「最新の状態です」と表示され、再び「更新プログラムのチェック」の画面になります。そして、Windowsの「更新プログラムのプレビュー」を選択してインストールを開始した場合は、消滅してしまったかのように見えるでしょう。

 この状況で「リソースモニター」や「イベントビューアー」「C:\Windows\SoftwareDistribution\ReportingEvents.log」を確認すると、確かにインストールが開始されて、進行中であることが分かります(画面4)。

画面4
画面4 「更新プログラムのプレビュー」のダウンロードとインストールを開始したはずなのに、進行状況が見えない

 しかし、そこまでして確認しない限り、ダウンロードとインストールが進行中であることは「設定」アプリの「Windows Update」に「今すぐ再起動する」が表示されるまで、あるいはアクションセンターに通知があるまで知ることはありません。クリックした後に何もないと安心していると、突然、再起動を求められるわけです。

 進行中であることを知らずに途中でPCを再起動すると、再起動後に再開されるダウンロードとインストールの進行状況は「設定」アプリの「Windows Update」で参照することができました(画面5)。

画面5
画面5 「更新プログラムのプレビュー」のダウンロードとインストールを開始して完了する前に再起動した場合、進行状況が見えるように

 ちなみに、本連載第183回でも指摘しましたが、Windows 10 バージョン2004ではやはり、再起動を要求する更新プログラムが複数ある場合、全てが完了する前に再起動できてしまいました。「ダウンロード中」の状態で再起動した場合は再起動後、ダウンロードから再開されました。「インストール中」の途中の状態で再起動した場合は、再起動中にインストールが進行し、更新された状態でPCが起動しました。つまり、再起動を開始したタイミングによっては、更新プログラムのインストールの影響で通常よりも戻ってくるまでに時間がかかることになります。

 この挙動はとても新たな仕様とは思えません。恐らく不具合でしょう。このままだと、何度も「更新プログラムのチェック」をクリックしたり、1回で済むはずの再起動が二度手間になったりと、多くのユーザーの手間と時間を奪うことになります。

こんなWindows Updateはいやだ(3)――「更新プログラムのプレビュー」の履歴分類がおかしい

 Windowsと.NET Frameworkの「更新プログラムのプレビュー」のWindows Updateにおける扱いが同じルールに従わないことは、ユーザーをさらに混乱させていると思います。Windows向けの「更新プログラムのプレビュー」はステップが増えた分、意図せずインストールしてしまうことはなくなるでしょう。しかし、.NET Frameworkの「更新プログラムのプレビュー」は「更新プログラムのチェック」のクリックでダウンロードとインストールが始まってしまいます。しかも、Windows 10 バージョン2004では進行状況が表示されないという不具合があります。

 今回、「更新プログラムのプレビュー」をインストールした人は、「更新の履歴」を開くと、また別の不可解な状況を目にすることになります。インストールされたはずの「更新プログラムのプレビュー」が「品質更新プログラム」の一覧に見当たらないのです。履歴はどこにあるのかというと、「その他の更新プログラム」に分類されていました(画面6)。

画面6
画面6 Bリリースは「品質更新プログラム」に、Cリリースは「その他の更新プログラム」に分類されてしまった

 なお、Windows 10 バージョン1909以前の更新プログラムは、BリリースとCリリースのどちらも「品質更新プログラム」に分類されます。今回限りのミスなのか、意図的な分類なのかは定かではありません。

こんなWindows Updateはいやだ(4)――機能更新が「更新プログラムのプレビュー」を邪魔

 Windows 10 バージョン1903と1909は、Windowsの「更新プログラムのプレビュー」を「オプションの更新プログラムがあります」の下で案内します。しかし、この案内を受け取れないPCがあります。それは、同じ場所にWindows 10の新しいバージョンの機能更新プログラムが案内されている場合です(画面7)。

画面7
画面7 機能更新プログラムの案内があると、更新プログラムのプレビューが案内されない

 Windows 10 バージョン1809も同じ場所で機能更新プログラムを案内しますが、オプションの更新プログラムを案内する機能はそもそもありません。Windows 10 バージョン2004については、現時点では不明です。

 「更新プログラムのプレビュー」をどうしてもインストールしたいという理由がある(特定の問題を解決したいなど)場合は、「Microsoft Updateカタログ」からダウンロードしてインストールする、または第183回で紹介した「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」ポリシーで現在のバージョンに固定し、機能更新プログラムの案内を非表示にすることでWindowsの「更新プログラムのプレビュー」の案内を表示させることで対処できるでしょう。

 もしかしたら、チェックボックス形式になったWindows 10 バージョン2004のオプションの更新プログラムは、機能更新プログラムと「更新プログラムのプレビュー」の両方に対応させるための変更かもしれませんが、次期バージョン(20H2)がリリースされるまではその答えは得られないかもしれません。

 MicrosoftはWindows Updateについて、フィードバックに基づいて改良の努力を行っているのは分かりますが、無理な増改築を繰り返してわけが分からなくなっているような印象です。さまざまな問題の解消には、思い切った建て替えが必要なのかもしれません。

 また、MicrosoftはCリリースの再開を伝えるブログでオプションである「更新プログラムのプレビュー」を“検証済みの製品品質”と表現しています。一方で、Microsoftはこれまで、いわゆるβ版と呼ばれる運用環境では利用すべきではない開発中の製品やサービス、機能を事前評価してもらうという意味で「プレビュー」という表現を使ってきました。この2つの「プレビュー」の存在は、ユーザーを混乱させることになるでしょう。近い将来、再び名称変更が行われる予感がします。

 最後に、「更新プログラムのプレビュー」をインストールしようとしなければ、そしてC/Dリリースの時期に「更新プログラムのチェック」をクリックしなければ、今回示したような面倒なことには巻き込まれませんのでご安心ください。

 Microsoftは2020年7月22日(米国時間)から、「更新プログラムのチェック」のクリックによるWindows 10 バージョン2004の機能更新プログラムの自動配布対象を拡大しています。その意味でも不用意な「更新プログラムのチェック」は禁物です。もちろん、早くWindows 10 バージョン2004にしたいという人はどうぞクリックしてください。配布対象になっていたとしても、先に.NET Frameworkの「更新プログラムのプレビュー」のダウンロードとインストールが始まるかもしれませんが……。

最新情報

 Windows Updateの新しいUI「オプションの更新プログラム」ついて説明するブログ記事が公開されました。デバイスドライバも対象になり、選択的にインストールできるようになったようです。


最新情報(2020年9月4日追記)

 2020年8月20日(米国時間)にWindows 10 バージョン1809〜1909向けに8月のCリリースが提供されました。Windows 10バージョン2004向けは遅れて2020年9月3日(米国時間)に提供されました。更新プログラムの日本語名や、Windows 10 バージョン2004の進行状況の不具合は、まだ解消されていません。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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