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Windows 10次期バージョン「20H2」は、痛みの少ないアップグレードに企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(84)

Windows 10の次期バージョン「20H2」は、2019年秋のバージョン1903向けの「バージョン1909機能更新プログラム」と同様、Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)に対して「有効化パッケージ」の形式で配布されることが決まりました。

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

2020年秋もまた、痛みの少ないアップグレードに

 Microsoftは2020年6月、2020年秋にリリース予定の「Windows 10」の最新バージョンで、これまでの「YYMM」(YYは西暦の下2桁、MMはリリース月の下2桁)形式のバージョン番号から、リリース年の前半「YYH1」とリリース年の後半「YYH2」に移行することを発表しています。

 「20H2」として開発されてきた2020年秋リリースのバージョンは、多くのユーザーは「2009」くらいになるのではないかと予想していたと思いますが、「Windows 10 バージョン20H2」として2020年10月中に提供されることになります(内部的には「2009」というバージョンも持つようです)。フレンドリー名は「Windows 10 October 2020 Update」になる予定です。

 Windows 10の毎年2回ある機能更新プログラムのリリースでは、Windows Updateで配布される場合も、手動でアップグレードする場合も、事実上の「アップグレードインストール」が行われます。2019年10月のWindows 10 バージョン1909のリリースでは、初めて「有効化パッケージ(Enablement Package)」方式が採用され、Windows 10 バージョン1903を実行中のPCにはWindows Updateを通じて自動配布されました(または「ダウンロードとインストール」のクリックによる手動インストール)。

 有効化パッケージ形式の機能更新プログラムは、機能更新プログラムリリースまでの品質更新プログラム(累積更新プログラム)に含める形で新バージョンの新機能を無効化した形で追加します。その後、小さなサイズの有効化パッケージで新機能を有効化して、バージョン情報を切り替えます。OSのコア部分は共通であり、その後の品質更新プログラムは新旧バージョン(バージョン1903と1909)で一本化されます。この方式は当時、将来のバージョンでも採用されるかどうかについては何ら約束するものではありませんでした。

 今回、Windows 10 バージョン2004を実行するPCには、Windows 10 バージョン20H2が同様に有効化パッケージで配布されることになります。

 なお、2019年秋と同様、2つ前のバージョン、今回はWindows 10 バージョン1909以前のバージョンを実行するPCには、3GB近くのファイルのダウンロードとアップグレードインストールを伴う通常の機能更新プログラムとして提供されます。また、Windows 10のダウンロードサイトからの手動でのアップグレードもまた、通常の機能更新プログラム(またはISOイメージ)によるアップグレードインストールになります。

先行体験レポート、Microsoft Edgeは最初からChromiumベースに

 Windows InsiderプログラムのBetaチャネルとRelease Previewチャネルでは正式リリースに向けて、2020年8月21日(米国時間)に有効化パッケージの配布が開始されました。その際のエクスペリエンスをレポートします。なお、正式リリース時には機能更新プログラム名やKB番号が変更になる可能性があることをご了承ください。

 MicrosoftはChromiumベースの「Microsoft Edge」を2020年1月に正式にリリースし、Windows 10標準のEdgeHTMLベースのMicrosoft Edgeを段階的にChromiumベースのものに移行しています。EdgeHTMLベースの旧Microsoft Edgeのサポートは、2021年3月9日で終了することも発表されています。そして、Windows 10 バージョン20H2では、最初からChromiumベースのMicrosoft Edgeが搭載されると伝えられていました。

 そのことを検証するために、ChromiumベースのMicrosoft Edgeのインストールをブロックする措置を講じた上で、Windows Insiderプログラム向けに自動配布されたバージョン20H2の機能更新プログラムをインストールしてみました。名称からは分かりませんが、ダウンロード先のサイズを確認すると通常の機能更新プログラムのような数GBのダウンロードは行われていないことが分かります(画面1)。ちなみに、有効化パッケージ単体のサイズは80MB程度でした。

画面1
画面1 ChromiumベースのMicrosoft Edgeの自動配布をブロックした上でバージョン20H2の機能更新プログラムの自動配布によるインストールを開始

 ダウンロードとインストール、そして再起動は、通常の品質更新プログラムと同等の時間と挙動で完了しました。サインインすると、Chromiumベースの新しいMicrosoft Edgeに入れ替わったことが全画面で通知されます(画面2)。

画面2
画面2 バージョン20H2の機能更新プログラムのインストールで、Microsoft EdgeがChromiumベースに入れ替わった(前バージョンでEdgeHTMLベースを使用していた場合)

 以前のバージョンでChromiumベースに入れ替え済みの場合は、この画面は表示されないはずです。なお、「インストールされた更新プログラムの表示」の「更新プログラムのアンインストール」には新しいMicrosoft Edgeに対応するものは見当たりませんが、「プログラムのアンインストールまたは変更」で見つかります。ただし、選択しても「アンインストール」オプションは表示されません。

 このアップグレードは有効化パッケージにより行われたため、通常のアップグレードインストールは行われていません。そのため、「設定」アプリの「更新とセキュリティ」の「回復」を開いても、「前バージョンのWindows 10に戻す」が利用できない状態です(画面3)。Windows 10 バージョン2004に戻すには、有効化パッケージの更新プログラムをアンインストールします(画面4)。ただし、新しいMicrosoft Edgeが旧Microsoft Edgeに戻ることはありませんでした。

画面3
画面3 有効化パッケージによるアップグレードでは、「設定」アプリのロールバック機能は利用できない
画面4
画面4 Windows 10 バージョン2004に戻すには、有効化パッケージをアンインストールする

 ちなみに、Windows 10 バージョン20H2で、Chromiumベースの新しいMicrosoft Edgeが標準となったわけですが、「Windowsサンドボックス」内のOSバージョンは「2004」で、標準ブラウザも旧Microsoft Edgeのままでした(画面5)。この環境はWindowsサンドボックスが有効な旧バージョンの環境からアップグレードしたものですが、新バージョンで新規に導入した場合にどうなのか、正式リリースではどうなのかまでは確認できていません。

画面5
画面5 Windowsサンドボックス内の標準ブラウザは、旧Microsoft Edgeのままだった

 Windows Insiderプログラムでは自動配布されましたが、正式リリース時にはすぐに自動配布されるわけではありません。「Windows Server Update Services(WSUS)」や「Windows Update for Business(WUfB)」で管理されていない場合は、機能更新プログラムが利用可能であることが案内され、「ダウンロードしてインストール」をクリックしない限り、ダウンロードとインストールは行われないはずです。WSUSやWUfBで管理されている場合は、その設定(WSUSは管理者による承認、WUfBは延期設定)に従います。

Windows 10 バージョン2004/20H2対応のWSUS上の「製品」の選択について

 WSUSでは、通常版の機能更新プログラムと有効化パッケージ版の両方が利用可能になる予定です。通常版の機能更新プログラムは数GBのサイズがあり、Windows 10 バージョン2004以前を実行する全てのWindows 10に承認して配布することができます。

 一方、有効化パッケージ版の機能更新プログラムは80MB程度(Insider Preview x64版の場合)と小さく、Windows 10 バージョン2004に対してのみ承認して配布することができます(画面6)。前回、Windows 10 バージョン1909の有効化パッケージは20KBと極めて小さいパッケージでしたが、今回はChromium版Microsoft Edgeが含まれる分、大きくなっていると思われます。

画面6
画面6 Windows 10 バージョン20H2の機能更新プログラムは、通常版と有効化パッケージ版の2種類ある(画面はInsider Previewプログラム向け)

 WSUSでWindows 10を更新管理するに当たり、「製品と分類」の「製品」タブで何を選択すればよいか迷うことがあると思います。サポートチームが公開している以下の情報にはWindows 10 バージョン1903時点ですが参考になる情報があります。

 Windows 10 バージョン2004以降に対しては、従来の「Windows 10」などに加えて、特に次の3つの選択が重要になります。

  • Windows 10, version 1903 and Later
  • Windows 10, Vibranium and later, Servising Drivers
  • Windows 10, Vibranium and later, Uggrade & Servising Drivers

 Windows 10 バージョン1607は開発コード名「Read Stone(RS)1」とも呼ばれ、バージョン1703、1709、183、1809は「RS2」「RS3」「RS4」「RS5」とも呼ばれてきました。Windows 10 バージョン1903/1909は「19H1」「19H2」とも呼ばれていますが、Windows 10 バージョン2004/20H2は「20H1」「20H2」以外に開発コード名「Vibranium」とも呼ばれるようです。

 上記の「Windows 10, Vibranium and later ……」は、Windows 10 バージョン2004以降向けのドライバ関連の更新プログラムです。そのため、WSUSにおける製品「Windows 10, Vibranium and later ……」は「Windows 10, 2004 and later ……」に読み替えることができるでしょう(画面7)。ちなみに、レジストリの「HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion」にある「BuildBranch」の値は、Windows 10 バージョン1903/1909が「19h1_release」、Windows 10バージョン2004/20H2が「vb_release」になっています。

画面7
画面7 「Vibranium」は、Windows 10 バージョン2004/20H2の開発コード名

 毎年秋にリリースされる機能更新プログラムは、EnterpriseとEducationエディションについては30カ月の長いサポート期間が提供されます(秋リリースのEnterpriseとEducation以外のエディションと春リリースは18カ月)。

 Windows 10 バージョン1903/1909のときも触れましたが、有効化パッケージによる新バージョンへのアップグレードは、アップグレードに要する時間や互換性に関する問題の影響を受けにくいという利点があります。そのため、企業における次のターゲットをWindows 10 バージョン202Hにする場合でも正式リリースを待たずに、Windows 10バージョン2004の展開を先行的に進めていくことができるでしょう。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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