ウズベキスタン少年の“日本すごい”ポイントは駅名?:Go AbekawaのGo Global!〜Imomsaidov Oybek編(前)(2/2 ページ)
「4時から店の準備をして学校に行き、放課後はまた店の手伝い。後は寝るまで勉強」――グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はIT企業のBFTで働くImomsaidov Oybek(イモムサイドブ・オイベク)氏にお話を伺う。「それが当たり前」と仕事を楽しくこなす同氏が日本に興味を持ったきっかけは友人のひと言だった。
自分の携帯を買えたら、電話するから
阿部川 なぜ日本に来ることになったのですか。
オイベク氏 きっかけは友人が交換留学生で日本に来たことです。日本はやりたいことが何でもやれる、大きな災害があってもしっかりと対処している、そんな素晴らしい国だと教えてくれたのです。私は日本語がからっきしでしたから「難しい」と友人に言うと「自分も以前は英語しか話せなかったけど大丈夫」と背中を押してくれました。
日本の大学を検索してみると、大学に関連する名前が付いた駅がある(つくばエクスプレス 研究学園駅)ことに感動しました。そして筑波大学は「リサーチや科学に関係するものであれば何を学んでもよい」とあったので大変気に入り、筑波大学の試験に応募しました。
阿部川 駅名になっていることに感動したのですね、面白い視点です。
オイベク氏 試験はメールのやりとりとオンラインで問題を解いていくといったものでした。半年ほどで通知が届いたのですが、緊張して中身を読むのが大変でした(笑)。何度か読み返しましたが、どう読んでも「受け入れない」や「不合格」といった表現は見当たらない(笑)。心を落ち着かせてもう一度読んで合格ということが納得できました。信じられない思いでした。
阿部川 よかったですね! おばあさまも喜ばれたのではないでしょうか。
オイベク氏 はい。今はこうして落ち着いて話していますが、筑波大学の合格は人生を変えた大きな出来事の一つです。もちろん祖母に話しましたが、きっと祖母はその意味を理解できていなかったかも知れません。だってたった一人の自分の孫が、自分が行ったことのない国で、しかも大学生になるのですから。
来日したときは携帯電話さえ持っていませんでした。一度買った携帯電話は「自分の携帯電話が買えたら、こちらから電話する」と言って祖母に渡していましたから。
阿部川 大学に入学し、国際社会科学を専攻されました。どんなことを勉強なさったのですか。
オイベク氏 今この世界にある多くの社会的問題、例えば地球の気候温暖化や世界の飢餓問題などにどう取り組むか、どうやって解決するかということに常に興味がありました。ですので、国際経済学と経済学の歴史を学びました。社会的問題の中には技術の力で解決できることもあります。ですから技術のことを理解して、世の中を良くする仕事ができる男になりたいと考えました。
阿部川 素晴らしいですね。私の愛読書は、貧困層に特化したグラミン銀行の創設者で、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌスさんがお書きになった「3つのゼロの世界」です。ぜひお読みになってください。「SDGs」(持続可能な開発目標)や「IPCC」(気候変動に関する政府間パネル)についても引き続き、ご研究を続けてくださいね。
オイベク氏 ありがとうございます、参考にします。
阿部川 小さいころ、友人のコンピュータを借りていたとおっしゃいっていましたが大学に入学された後は自由にコンピュータを使えるようになったと思います。プログラミングなどはされていたのでしょうか。
オイベク氏 はい。友人のコンピュータを使っていたときから興味を持っていましたから、筑波大学でもっとしっかり学ぼうと思っていました。大学を卒業した今でも機械学習のアルゴリズムやAI(人工知能)などには大変興味がありますので、Pythonなどは学び続けています。
「働くのが当たり前。仕事は楽しい」と小さいときから達観していたオイベクさん。だがそのおかげで社会的問題への関心は高く、いつしか「世の中を良くする仕事ができる男になりたい」と願うようになった。後編は同氏が思う「仕事で本当に重要なこと」について伺った。
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