今使っているWindows/Officeは大丈夫? 2021年以降を見据えて、各バージョンのライフサイクルを再確認:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(90)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響を大きく受けた2020年も残すところあとわずか。その影響はどうやら2021年も続きそうです。企業はテレワーク導入の推進を求められたこともあって、企業クライアントPCの更新管理やシステム更改に大きな影響を受けたことでしょう。Windows 10とMicrosoft Office製品について、現時点でのサポートライフサイクルを再確認し、2021年以降の計画に生かしましょう。
Microsoft製品のライフサイクル検索のための新サイト
Microsoftは自社製品およびサービスについて、ライフサイクルの検索サービスを提供しています。2020年9月にこの検索サービスが刷新されました。現時点では旧サイトも利用可能ですが、いつ閉鎖されるか分かりません。今後は新サイトを利用しましょう(画面1)。
- 新しいライフサイクル検索エクスペリエンス(Microsoft Docs)
- 製品のライフサイクルの検索[旧サイト](Microsoft サポート)
- 製品およびサービスのライフサイクル情報の検索[新サイト](Microsoft Docs)
Windows 10半期チャネル(SAC)のサポート状況
「サービスとしてのWindows(Windows as a Service、WaaS)」として、モダンライフサイクルポリシーが適用される「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」の「Windows 10」の各バージョンは、リリースから原則として「18カ月」、更新プログラムおよび製品サポートが提供されます。
企業や教育機関向けのEnterprise/Educationエディションの場合は、上半期(H1)リリースは「18カ月」、下半期(H2)リリースは「30カ月」のサポートが提供されます。サポートが終了するサービス終了日はリリース時に決まりますが、状況に応じて延長されることもあります。2020年には公衆衛生の状況(COVID-19関連)下での企業の負担軽減のため、Windows 10 バージョン1709以降、部分的にサービス終了日の延長が行われました。
Windows 10長期サービスチャネル(LTSC)のサポート状況
「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel、LTSC)」(旧称、Long Term Servicing Branch、LTSB)として数年おきにリリースされるWindows 10の機能固定バージョンには、メインストリームサポート「5年」、延長サポート「5年」の合計「10年」のサポートが提供されます。
最初のバージョンである「Windows 10 Enterprise 2015 LTSB」は既に延長サポートフェーズに移行しました。次のバージョンの「Windows 10 Enterprise 2016 LTSB」は2021年中に延長サポートフェーズに移行します。これらのバージョンを利用している場合は、後継バージョンへの移行を検討し始める時期です。
Windows 8.1のサポート状況
固定ライフサイクルサポートに基づいて提供される「Windows 8.1」は、現在、延長サポートフェーズにあります。2年後には延長サポートが終了し、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなるため、現在、企業のクライアントOSとして運用中の場合は、早急にWindows 10への移行計画を立ててください。
Windows 7(ESU)のサポート状況
「Windows 7 Service Pack 1(SP1)」の延長サポートフェーズは「2020年1月」に終了しました。現在、企業は年単位の「拡張セキュリティ更新プログラム(Enterprise Security Update、ESU)」を購入することで、延長サポート終了後「最大3年間」、セキュリティ更新プログラムを受け取ることができます。
1年目の契約は「2021年1月12日」に終了します。現在、1年目のESU契約(ESU Year 1)を利用しており、2021年2月以降もセキュリティ更新プログラムを受け取るためには、2年目のESU契約(ESU Year 2)を購入する必要があります。1年目のESUを購入していない場合は、2年目のESUは購入できないことに注意してください(1年目と2年目の両方を購入する必要があります)。
なお、Azure仮想マシンとしてWindows 7を実行している場合は、2023年1月までESUが無料で提供されます(Azure StackおよびAzure VMware Solution上の仮想マシンは除く)。Windows 8.1について、延長サポート終了後に同様のESUが用意されるかどうかについては、現状、何も情報はありません。
- 2020年1月15日に拡張サポートが終了した後も引き続きセキュリティ更新プログラムを受信するための手順(Windows サポート)
永続ライセンス版Microsoft Office製品のサポート状況
ボリュームライセンス経由で永続ライセンス版の「Microsoft Office」製品は、固定ライフサイクルポリシーの対象です。2020年10月には「Office 2010(SP2)」の延長サポートが終了したばかりです(ただし、MSI版Office 2010については2020年11月、12月もセキュリティ更新が提供されました)。
「Office 2013(SP1)」と「Office 2016」は現在、延長サポートフェーズに入っています。Office 2013以前を利用中の場合は、「Office 2019」またはモダンライフサイクルポリシーで提供される「Microsoft 365 Apps」(旧称、Office 365 ProPlus)に早急に移行することをお勧めします。なお、Office 2019の延長サポートは「3年」に短縮されており、Office 2016と同時にサポートが終了することに注意してください。
Microsoft 365 Appsは利用環境によってはサービス終了
Microsoft 365 Apps(旧称、Office 365 ProPlus)は継続的にサービスが提供されますが、利用環境によってはサポートが終了することに注意してください。
Office 2013以前からMicrosoft 365サービスへの接続は「2020年10月13日」で終了しました。Windows 7および「Windows Server 2008 R2」は公式には「2020年1月14日」にサポートを終了しましたが、移行期間の特例措置として、更新プログラム(ESU)の購入の有無に関係なく、Microsoft 365 Appsのセキュリティ更新プログラムが「2023年1月」まで提供されます(機能更新プログラムは提供されません)。「Windows Server 2012」および「Windows Server 2012 R」はOSのサポート期間中ですが、Microsoft 365 Appsのサポートは「2020年1月14日」に終了しました。
- OfficeのバージョンとOffice 365サービスへの接続(Microsoft Docs)
- Windows 7のサポート終了とMicrosoft 365 Apps(Microsoft Docs)
- Windows Serverのサポート終了とMicrosoft 365アプリ(Microsoft Docs)
Microsoft Edge(EdgeHTML版)、IE 11、Adobe Flashのサポート状況
Windows 10 バージョン20H2から、標準のWebブラウザはChromium版の「Microsoft Edge」に完全に置き換えられました。Windows 10 バージョン2004以前に標準搭載されているレガシーなMicrosoft Edge(EdgeHTML版)は、「2021年3月9日」にライフサイクルが終了し、その日にリリースされる品質更新プログラムを最後にセキュリティ更新プログラムが提供されなくなります。
Windows 10 バージョン2004以前でMicrosoft Edge(Chromium版)にまだ移行していない場合は、サービス終了までにMicrosoft Edge(Chromium版)をインストールして移行するか、Windows 10 バージョン20H2以降に更新してください。
Microsoft Edge(Chromium版)は、Windows 7やWindows Server 2008 R2でもサポートされますが、ESUの有無に関係なく、これらのOS上でのサポートは「2022年1月15日」に終了します。当初、「Google Chrome」と同じ「2021年7月15日」にサポート終了予定でしたが、Google Chromeのサポート期限が半年間延長されたことを受けて、Microsoft Edge(Chromium版)のサポート期限も延長されています。
- Extending Chrome on Windows 7 to Support our Enterprise Customers[英語](Google Cloud)
- Microsoft Edge supported Operating Systems[英語](Microsoft Docs)
Windows 10に標準搭載される「Internet Explorer(IE)11」は引き続き利用可能であり、Windows 10の各バージョンのサービス期間中、品質更新プログラムに含まれる形でIE 11のセキュリティ更新プログラムの提供が継続されます。
ただし、IE 11は互換性のために維持されるものであり、IE 11であらゆるWebサイトやサービス、アプリの動作がサポートされるわけではありません。例えば、「Microsoft Teams」(Webアプリ版)は「2020年11月末」でIE 11のサポートを終了、その他のMicrosoft 365 Appsおよびサービスは「2021年8月17日」以降、IE 11のサポートを終了します。
IE 11およびMicrosoft Edge(EdgeHTML版)のサポート終了までの予定は、以下のブログ記事を参考にしてください。
- Microsoft 365 apps say farewell to Internet Explorer 11 and Windows 10 sunsets Microsoft Edge Legacy[英語](Microsoft Tech Community)
Webブラウザ関連では、「Adobe Flash」の2020年内でのサポート終了にも注意が必要です。IE 11とMicrosoft Edge(EdgeHTML版およびChromium版)向けのAdobe Flashは2021年の早い段階で削除される予定です。Adobe Flashを引き続き利用しなければならない企業は、Adobe Flashのパートナー企業が提供する有償サービスを利用するという選択肢が用意されるようです(Microsoftとは無関係)。詳しくは、以下のアナウンスを確認してください。
- Adobe Flash Playerのサポート終了に関する最新情報[日本語訳](Windows Blogs)
- Update for Enterprise Customers Using Adobe Flash Player[英語](Adobe Blog)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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