クラウド戦略を文書化する10の構成要素:Gartner Insights Pickup(212)(2/2 ページ)
クラウド戦略を策定し、文書化するために網羅すべき構成要素とは?
原則
原則は、企業のクラウド戦略の最も重要な部分であり、明確に示されるべきものだ。一般的な原則としては、次のようなものがある。
- クラウドファースト: 新しいテクノロジーの導入やビジネスの取り組みでは、クラウドを最初の選択肢として検討する。たいていの場合、Gartnerはクラウドファーストを推奨している。クラウドスマートのようなバリエーションもある
- 構築する前に購入: クラウドに関しては「SaaSファースト」と呼ばれることが多い。より一般的には、カスタムソリューションよりもパッケージソリューションを選ぶことになる
- ベストオブブリード: すでに利用しているベンダーの統合されたソリューションよりも最良のソリューションがあればそちらを選ぶ
- マルチクラウド: ビジネス成果を求めて複数のパブリッククラウドプロバイダーのクラウドサービスを利用する
建設的な関係やスキルへの投資など、特定のベンダーに関する懸案事項も、このセクションで必ず文書化しておく。
インベントリ情報
現状を判断するため、ワークロードのインベントリを作成する必要がある。各ワークロードについて、名称、オーナー、依存関係、セキュリティ要件といった基本情報を把握する必要がある。
組織内の調査すべきワークロードは、数千とは言わないまでも数百には上るだろう。そのため、特に重要なワークロードやコストが高いワークロードを洗い出す必要もある。大きな変更を決定する前に、ワークロードを徹底的に把握しておく。
セキュリティ
クラウドコンピューティングは単独で存在するわけではなく、クラウド戦略も同様であるはずだ。例えば、セキュリティ戦略のような既存の戦略と整合性を取る必要がある。セキュリティについては、独立したセクションを設ける必要がある。
「セキュリティは共有責任だが、クラウドを安全に使用する上では、役割と責任を詳細に特定することが重要だ」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのデイヴィッド・スミス(David Smith)氏は語る。
「例えば、企業がデータを保護していない場合、それはプロバイダーの責任ではない。企業は、IaaSに置くデータを適切にロックダウンしなければならない」(スミス氏)
企業は、既存のセキュリティ戦略に従うか、クラウドコンピューティングの実情に合わせてこの戦略を変更すべきだ。
サポート要素
多くの場合、他の戦略的な取り組み(スタッフィング、データセンター、アーキテクチャ、セキュリティなど)とも、連携が必要となる。
例えば、スタッフの配置は、クラウド戦略における重要な懸案事項だ。クラウドコンピューティングはスタッフの要件を変える。どのレベルのクラウドサービスを導入するかによって、管理作業と高度な作業を処理するためのスキルの組み合わせが変わってくるからだ。クラウド戦略諮問委員会に人事部門の代表者に加わってもらい、スタッフの配置が適切に行われるようにするとよい。
出口戦略
パブリッククラウドからワークロードの多くを元に戻すことはまれだが、万が一に備えて、依存関係と選択肢を示した出口戦略を用意しておくことは極めて重要だ。実際、主に欧州連合(EU)や金融機関の複数の規制当局が現在、出口戦略を義務付けている。
クラウド契約を解除する方法を把握することも重要だが、それは始まりにすぎない。次のような問題も調べる必要がある。
- データオーナーシップ
- バックアップ
- データの回復
- ポータビリティ
出口戦略や出口計画は、全体的なクラウド戦略と同様、混乱していることが多い。出口戦略では、「何を」と「何のために」の問いに答えることに主眼を置く。ワークロードに関する詳細な出口計画では、「どのように」という問いに答えられるようにする。
出典:The Cloud Strategy Cookbook(Smarter with Gartner)
筆者 Katie Costello
Manager, Public Relations
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