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Hyper-V Server 2022って出るの? 出ないの? どっちなの?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(194)

Microsoftは2021年9月1日(米国時間)、長期サービスチャネル(LTSC)の最新サーバOS「Windows Server 2022」のリリースを発表しました。Microsoftはこれまで、Windows ServerのLTSCバージョンに対応する無料のハイパーバイザー製品「Microsoft Hyper-V Server」を提供してきましたが、結論から言うと、Windows Server 2022ベースのMicrosoft Hyper-V Serverをリリースする計画はないようです。

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Windowsにまつわる都市伝説

Windows Server 2022はServer Coreでも「Hyper-Vマネージャー」を使用可能

 「Windows Server 2022」のGUIレスのインストールオプションである「Server Core」環境では、「Sconfig」ツールがPowerShellベースのものに刷新されました(機能的には以前のVBScriptベースと同等です)。

 また、Server Core環境に「Server Coreアプリ互換性オンデマンド機能(Features on Demand、FoD)」をインストールすると、「Hyper-Vマネージャー」(virtmgmt.msc)を含む一部のMMC(Microsoft管理コンソール)スナップインとエクスプローラーシェル、「Internet Explorer(IE)」などが利用可能になります。「Hyper-Vの役割」はServer Coreでもサポートされるため、ローカル環境だけでHyper-Vのホストと仮想マシンを完全に管理することができます(画面1)。

画面1
画面1 Windows Server 2022のServer Core環境では、ローカルのHyper-Vマネージャーを使用してHyper-Vホストと仮想マシンを管理できるようになった。

 実は、Server Coreアプリ互換性FoDは、「Windows Server 2019」のServer Core、および半期チャネル(SAC)の「Windows Server, version 1809」で追加された機能です。Hyper-Vマネージャーについては、SACの次のバージョンである「Windows Server, version 1903」で追加されました。LTSCとしては、Windows Server 2022のServer CoreがHyper-Vマネージャーに対応した初めてのバージョンになります(注:SACは「Windows Server, version 20H2」を最後に廃止)。

Hyper-V Serverはリモート管理が前提

 「Microsoft Hyper-V Server」(以下、Hyper-V Server)は、Windows Serverと共通のHyper-V機能を提供する、フリーのハイパーバイザー製品です。ハードウェアさえ準備できれば、ソフトウェアのライセンスコストなしで利用できるため、フリーのLinuxディストリビューションや評価版OSのための仮想環境として利用している方もいるでしょう。

 なお、Windows Serverは仮想マシン用のライセンスを販売しておらず、物理サーバに対するコアベースのライセンスと、そのライセンスに含まれる仮想化の権利を利用して仮想化することになるため、Windows Server(評価版を除く)用の仮想環境として、Hyper-V Serverの利用は意味がありません。

 Microsoftはこれまで、Windows ServerのLTSCバージョンと同時期に、同じOSビルドのServer CoreをベースにしたHyper-V Serverを提供してきました。例えば、「Windows Server 2016」ベースの「Hyper-V Server 2016」、Windows Server 2019ベースの「Hyper-V Server 2019」です。Hyper-V Server 2019はServer Coreアプリ互換性FoDに対応していますが、残念ながらHyper-Vマネージャーが追加されたWindows Server, version 1903の1つ前のバージョンであり、ローカルのHyper-Vマネージャーは利用できません(画面2)。

画面2
画面2 Microsoft Hyper-V Server 2019は、Server Coreアプリ互換性FoDにHyper-Vマネージャーが追加される1つ前のバージョン

 そのため、Hyper-V Server 2019以前を利用する場合は、本連載第131回で説明したように、「Windows 10」のHyper-Vマネージャーをリモート接続して管理するか(ワークグループ環境ではCredSSP認証のための追加設定が必要です)、「Windows Admin Center」の「仮想マシン」ツールおよび「仮想スイッチ」ツールを利用する必要があります(画面3画面4)。

画面3
画面3 Windows 10のHyper-Vマネージャーをリモート接続してMicrosoft Hyper-V Serverを管理する
画面4
画面4 Windows Admin Centerを使用するとモダンブラウザ(公式サポートはMicrosoft EdgeとGoogle Chrome)だけでHyper-V Serverをリモート管理できる

 ただし、Windows Admin Centerは仮想マシンのローカルコンソールに接続できますが、Hyper-Vマネージャーの「仮想マシン接続」ツール(vmconnect.exe)と比較すると、応答性や操作性が劣ります。例えば、キーボード入力を受け付けず、クリップボード経由の貼り付けによる入力しかできなくなったり、キーボードからの入力とは全く別の文字が入力される問題が発生したりすることがありました(筆者の環境固有の問題である可能性もあります)。

Hyper-Vマネージャーが使えるHyper-V Server 2022の登場に期待?

 Windows Server 2022ベースの「Hyper-V Server 2022」がリリースされれば、ローカルのHyper-Vマネージャーを利用できるため、完全にスタンドアロン環境で仮想環境を利用できることになります。そのことに大きな期待を寄せているユーザーもいたことでしょう。しかし、筆者が知る限り、Microsoftの公式サイトや公式ブログにおいて、Hyper-V Server 2022のリリース予定について触れられたことはありません。

 以下のコミュニティーフォーラムのスレッドで、MicrosoftのElden Christensen氏はHyper-V Server 2019が最後のバージョンであり、2029年1月までサポートが継続されることを指摘し、「Azure Stack HCI」への移行を勧めています。

 残念ながら、MicrosoftにHyper-V Serverの新バージョンの計画は現時点ではないようです。フィードバックが大きければ、変更される可能性はあるかもしれません。

 完全にフリーな環境を必要としているユーザーにとって、Azure Stack HCIは何の魅力もなく、代替にはなり得ないでしょう。なぜなら、Azure Stack HCIは「Microsoft Azure」へ登録することで利用可能になる有料のサービスだからです。

 Azure Stack HCIは60日(当初の30日から延長)の無料評価期間が設けられていますが、その後は物理プロセッサのコア数に基づいて月額固定料金が課金され、継続的に利用するためには少なくとも30日間に1回はAzureと同期される必要があります(クラスタ情報、課金情報、診断情報などが同期されます)。

 無料のHyper-V Serverが必要なら、Hyper-V Server 2019を使用するしかありません。現在、それ以前のHyper-V Serverを利用している場合は、サポートライフサイクルが終了する前にHyper-V Server 2019に移行することをお勧めします。

 現在、サポートされるバージョンでは、「Hyper-V Server 2012/2012 R2」が約1年半後の「2023年1月10日」にサポートを終了します。「Hyper-V Server 2008/2008 R2」は1年以上前の「2020年1月14日」にサポートが終了しました。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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