51歳で「パワポが得意」と、初めて知った元エンジニアの話:仕事が「つまんない」ままでいいの?(87)(3/3 ページ)
「将来、このまま大丈夫かな?」と思ったとき、「新たな資格を取ろう」と思うこともあるでしょう。でも、資格だけではなかなか仕事につながらないもの。それよりも、あなたの「強み」を生かせる場所は、案外「身近」にあるのかもしれません。
全ては「プログラマー時代に身に付けた」
続けて、こう思いました。「ボクは何で、スライドを作るのがうまいって言われたんだろう?」
よく考えてみたら、スライドの「見た目をきれいに作る」のは、うまいとはまったく思えません。でも、全体の「構成」を考えたり、難しいことを「分かりやすく」「論理的に表現する」みたいなことは、ひょっとしたら得意……というより、好きです。好きなので、作っていて楽しいし、全然苦じゃありません。
「この話の結論はこれで」「大切なポイントはこの3つで」「なぜなら、大切な理由はこうで」「で、つまり、こういうことなんです」と、まとめる……みたいな。
なぜ、このような「全体の構成を考えて」「論理的に」「分かりやすく伝える」ことが好きなんだろう? と改めて思ったとき、気付いちゃったんです。「そうだ、これはプログラマー時代に身に付けた力だ」ということに。
以前、この連載で「身に付けると仕事に役立つ『抽象化』思考のススメ」という記事を書きました。抽象化とは「物事をざっくりと、客観的に捉えて、目的や意味を把握する能力」です。ボクはこの「物事を抽象的に捉える力」を、プログラマー時代に身に付けました。
いまは直接エンジニアの仕事をしていませんが、複雑な事柄の中から「ポイントを見つける」とか、「本質を見極める」といったことは、得意……というよりも、好きです。しかも、仕事をする上ですごく役立っています。
また、論理的に、分かりやすく伝えることも好きです。思い返すと、ボクのプログラマー時代のこだわりは、「難しいロジックを」「誰が見てもコードを理解しやすく」「バグが出ないように」「シンプルに」「美しく」作ることでした。
恐らくこのような「プログラマー時代に身に付けた力」が、エンジニアの仕事を離れたいまでもすごく役になっているんじゃないかと、この記事を書きながら思っています。
一からキャリアを築くのは大変 今までの経験を生かそう
冒頭の、「キャリアと資格」の話に戻ります。
ある程度経験を重ねて「次のキャリア」を考えるときって、誰しもがあると思うんですよね。そのタイミングは、それぞれかもしれませんが。そして、さまざまな理由で、今まで関わっていた仕事から離れなければならないこともあるでしょう。
あるいは、本当は今の仕事を続けたいけれど、「上司から言われた」「部署を移動した」「年齢を重ねた結果、そうなった」など、外的要因によって離れざるを得なくなることもあるかもしれません。
その結果、エンジニアの経験が、直接的な「職業」ではなくなる日がくるかもしれない。いまやるべきことが「やりたいこと」ではなくなることがあるかもしれない。
そして、次のキャリアを考えたとき、新しい資格を取ったり、今までまったく経験のない新しい分野に挑戦したりしなければならないこともあるでしょう。そのチャレンジはもちろんすばらしい。
でも、せっかくだったら、いままで身に付けてきた経験やキャリアを生かせたらいいな、と思うんです。いままでの経験やキャリアを全部捨てて、一から新しいキャリアを築くのは大変だから。それで結果を出すのは、つらいから。
というよりも、あなたがこれまで紡いできた経験を、時間を、人生を、ゼロにしてほしくないから。
あなたにはまだ、自分でも気付いていない才能がある
ボクが51歳で、初めて自分の強みに気付いたように(スライドを作るのがうまい、と言われただけですが 笑)、ひょっとしたら、あなたにもまだ自分では気が付いていない才能があるかもしれません。
エンジニアなら、例えば「問題を切り分けて突き止める力」とか、「問題解決までの道筋を立てる力」とかって、あるんじゃありません?
そして、いままで培ってきたエンジニアの経験を生かして、他の人の役に立てることは、案外身近なところにあるのかもしれません。自分の強みを知り、それが周囲の困りごとを解決し、その結果信頼を得て、仕事に生かせていると実感できたら、うれしいことだなと思うのです。
最後に、ふと思い出した実例をお話させてください。以前、あるビジネスパーソンと話をしたときのことです。その方はとてもビジョナリーな方で、「将来、こんな仕事を形にしたいんですよね」という話を聞かせていただいたのですが、その話がホントにすてきで、内容も面白かったので、「つまり、こんな感じですか?」と、スライドにざっくりまとめて送ったことがありました。
のちに、「今度、アドバイザーとして入ってもらえませんか?」と言われ、そのプロジェクトに関わることになりました。その関係は、いまも続いています。
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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