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なぜBroadcomはVMwareを買収したいのか、そこにシナジーはあるのかVMwareにとってのメリットは?

BroadcomがVMwareを買収するという発表は、業界関係者を驚かせた。なぜBroadcomはVMwareを買収したいのか。Broadcom、VMwareのそれぞれにとってどんなメリットがあるのか。シナジーはどこにあるのだろうか。

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 BroadcomがVMwareを買収することで、2社が合意した(2022年5月31日時点では、まだ正式に決定したわけではない)。買収総額は約610億ドル。発表の内容はこちらの記事を見ていただくとして、BroadcomとVMwareの組み合わせにイメージが沸かないという人は多いのではないだろうか。なぜBroadcomとVMwareは、今回の買収に至ったのだろうか。また、2社のシナジーはどこにあるのか。

 Broadcomは投資家向けの説明で、 VMwareがBroadcomの戦略にフィットしている理由として、「確立され、成長する市場でリーダー的な存在であること」「大企業を顧客ベースとし、ミッションクリティカルなニーズに答えていること」「長い歴史と強固なIP(知的財産)基盤を有すること」「財務的に魅力な結果が得られる可能性があること」を挙げている。だが、これでは説明が抽象的過ぎ、買収する相手がなぜVMwareなのかを説明したことにはならない。

 Broadcomは通信関連の半導体と関連製品により事業を拡大してきた企業。具体的には、Wi-Fi、Bluetooth、セットトップボックス、イーサネット、光伝送、RAID、PCIe、ファイバチャネル(Fibre Channel)のチップ/SoCからアダプタ、スイッチ/ルータまでをカバーしている。データセンター需要の高まりなどで、足元は順調のようだ。

 Broadcom(の前身のAvago)は大型買収を繰り返してビジネスを築いてきた。 例えば2016年には59億ドルでBrocade Comimunications Systemsを買収し、Fibre Channelやイーサネット関連の製品および技術を手にしている。

 一方、近年同社はハードウェア依存から脱却するため、企業向けのITソフトウェア事業に力を入れてきた。こちらも大型買収で新たな事業に参入する手法を採用。2018年にはメインフレームやIT管理のCAを約23億ドルで買収し、翌年の2019年にはSymantecのエンタープライズセキュリティ事業を107億ドルで手に入れた。この2社から継承した事業を「インフラストラクチャソフトウェア」事業として運営している。

 実は、インフラストラクチャソフトウェア部門の2021年度における売り上げは、Broadcom全社の26%を占めている。VMwareが加われば、ソフトウェアの売り上げは全社の約50%に達する。

 Broadcomにしてみれば、現在のようにメインフレーム関連やセキュリティといった、分野に特化した製品だけでなく、ソフトウェアとしての包括的なITインフラを提供できることになる。さらに、「(Fibre Channelやイーサネットなどの)ハードウェアとソフトウェア両面で大企業を支えられる」と言えるようになる。

 だが、いわゆるシナジー(相乗効果)はどうだろうか。両社とも5GのRAN(Radio Access Network)に関連したビジネスをしている(例えばDISH NetworkはVMwareのRANコントローラーを試験運用中)ため、クロスセルの機会が生まれるという指摘がある。また、SymantecのSWG(Secure Web Gateway)やWeb分離などのセキュリティ製品/サービスが、VMwareのセキュリティ事業強化につながることも考えられる。

 これらがどれだけのメリットをもたらすかは分からない。だが、少なくともSymantecの存在は相乗効果につながらず、逆にVMwareのセキュリティ事業の妨げになる可能性がある。

 自動的な検知/分析/対応を軸としたサービス化が進むセキュリティ分野において、VMwareはCarbon Blackをベースとした製品の開発および展開を行っているからだ。

 より大きな懸念がある。Broadcomは買収のメリットとして、バックオフィス業務の統合に加え、製品開発投資の効率化を挙げている。競争が激しい世界で製品開発に積極的な投資を続けるVMwareが、開発効率化を理由に投資を抑制されてしまうと、取り返しのつかないことになりかねない。

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