メモリ最適化テーブルのインデックス使用統計に関する情報を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(127)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、メモリ最適化テーブルのインデックス使用統計に関する情報を出力する方法について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_db_xtp_index_stats」における、メモリ最適化テーブルのインデックス使用統計に関する情報を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」「Azure SQL Managed Instance」です。
概要
SQL ServerではインメモリOLTPを使用することで、トランザクション処理やデータ取得、データロード、一時データ・シナリオのパフォーマンスを最適化できます。インメモリOLTPでは、データアクセスやトランザクション実行は、従来のディスクベースのオブジェクトとは異なるアルゴリズムで処理されます。インメモリOLTPでは、作成時にメモリが最適化されるメモリ最適化テーブルを作成できます。
「sys.dm_db_xtp_index_stats」では、メモリ最適化テーブルのインデックス使用統計に関する情報を出力します。
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
object_id | bigint | オブジェクトのID |
xtp_object_id | bigint | メモリ最適化テーブルのオブジェクトのID |
index_id | bigint | インデックスのID |
scans_started | bigint | インデックススキャンの回数 |
scans_retries | bigint | 再試行が必要なインデックススキャンの回数 |
rows_returned | bigint | SQL Serverが返した累積行数 |
rows_touched | bigint | アクセスされた行の累積回数 |
rows_expiring | bigint | 内部使用のみ |
rows_expired | bigint | 内部使用のみ |
rows_expired_removed | bigint | 内部使用のみ |
phantom_scans_started | bigint | 内部使用のみ |
phatom_scans_retries | bigint | 内部使用のみ |
phantom_rows_touched | bigint | 内部使用のみ |
phantom_expiring_rows_encountered | bigint | 内部使用のみ |
phantom_expired_rows_encountered | bigint | 内部使用のみ |
phantom_expired_removed_rows_encountered | bigint | 内部使用のみ |
phantom_expired_rows_removed | bigint | 内部使用のみ |
object_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
動作例
メモリ最適化テーブルを作成していくつかクエリを実行した後に「sys.dm_db_xtp_index_stats」を実行すると、メモリ最適化テーブルのインデックス使用統計に関する情報が出力されました(図1)。
「scan_started」列で、作成したインデックスの使用状況を確認できます。この統計は、SQL Serverが再起動されるとリセットされるため、注意が必要です。
今回は1つのメモリ最適化テーブルしか作成していませんが、「object_id」列が「0」である行が複数出力されていました。「xtp_object_id」列の値が類似しているため、作成したメモリ最適化テーブルに関連しているオブジェクトであると推測できます。
実は、メモリ最適化テーブルには、複数の内部テーブルが必要です。これらのオブジェクトがどのような内部テーブルかは、「sys.memory_optimized_tables_internal_attributes」を使用することで確認できます(図2)。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。
筆者紹介
椎名 武史(しいな たけし)
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
伊東 敏章(いとう としあき)
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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