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インメモリOLTPトランザクションの統計情報を出力するSQL Server動的管理ビューレファレンス(132)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、インメモリOLTPトランザクションの統計情報の出力について解説します。

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SQL Server動的管理ビュー一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_xtp_transaction_stats」における、インメモリOLTPトランザクションの統計情報の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」「Azure SQL Managed Instance」です。

概要

 SQL ServerではインメモリOLTPを使用することで、トランザクション処理やデータ取得、データロード、一時データ・シナリオのパフォーマンスを最適化できます。インメモリOLTPでは、データアクセスやトランザクション実行は、従来のディスクベースのオブジェクトとは異なるアルゴリズムで処理されます。

 「sys.dm_xtp_transaction_stats」動的管理ビューを出力することで、インメモリOLTPトランザクションの実行に関する統計情報を確認できます。

出力内容

列名 データ型 説明
total_count bigint インメモリOLTPデータベースエンジンで実行されたトランザクションの合計数
read_only_count bigint 読み取り専用トランザクションの数
total_aborts bigint ユーザーまたはシステムの中止によって中止されたトランザクションの総数
system_aborts bigint システムによって開始された中止の回数
(書き込みの競合、検証の失敗、依存関係のエラーなど)
validation_failures bigint 検証エラーによってトランザクションが中止された回数
dependencies_taken bigint 内部使用のみ
dependencies_failed bigint あるトランザクションAが依存していた別のトランザクションBが中止されたために、トランザクションAが中止された回数
savepoint_create bigint 作成されたセーブポイントの数。ATOMICブロックごとに新しいセーブポイントが作成される
savepoint_rollbacks bigint 前のセーブポイントにロールバックした回数
savepoint_refreshes bigint 内部使用のみ
log_bytes_written bigint インメモリOLTPログレコードに書き込まれた合計バイト数
log_IO_count bigint ログI/Oを必要とするトランザクションの総数。持続性のあるテーブルのトランザクションのみ考慮される
phantom_scans_started bigint 内部使用のみ
phatom_scans_retries bigint 内部使用のみ
phantom_rows_touched bigint 内部使用のみ
phantom_rows_expiring bigint 内部使用のみ
phantom_rows_expired bigint 内部使用のみ
phantom_rows_expired_removed bigint 内部使用のみ
scans_started bigint 内部使用のみ
scans_retried bigint 内部使用のみ
rows_returned bigint 内部使用のみ
rows_touched bigint 内部使用のみ
rows_expiring bigint 内部使用のみ
rows_expired bigint 内部使用のみ
rows_expired_removed bigint 内部使用のみ
rows_inserted bigint 内部使用のみ
rows_updated bigint 内部使用のみ
rows_deleted bigint 内部使用のみ
write_conflicts bigint 内部使用のみ
unique_constraint_violations bigint UNIQUE制約の違反の総数

動作例

 データベースでインメモリOLTPを構成し、メモリ最適化テーブルの作成とデータの挿入、削除などを行った後に「sys.dm_xtp_transaction_stats」動的管理ビューを出力しました(図1)。

図1
図1 「sys.dm_xtp_transaction_stats」動的管理ビューを出力したところ

 しばらくデータの挿入や削除を繰り返した後に、もう一度「sys.dm_xtp_transaction_stats」動的管理ビューを出力しました。さまざまな列の値が増加しました(図2)。

図2
図2 時間をおいてもう一度「sys.dm_xtp_transaction_stats」動的管理ビューを出力したところ

 1回目と2回目の出力結果を比較すると、さまざまな列の値が増加したことが分かります。例えば、「total_count」列の値が約1万増加したことから約1万のインメモリOLTPトランザクションが開始されたことや、「total_aborts」列の値が約2000増加したことから約2000のトランザクションが中断されたことなどが読み取れます。

※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。

筆者紹介

椎名 武史(しいな たけし)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。

伊東 敏章(いとう としあき)

BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。


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