Backblazeはデータのバックアップ先をLTOテープシステムからクラウドストレージに移行することに関する5つの誤解について解説した。総所有コストや移行コスト、セキュリティなどについて誤解があるという。
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クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2022年9月2日(米国時間)、データのバックアップ先を磁気テープである「LTO」(Linear Tape-Open)テープシステムからクラウドストレージに移行することに関して、よくある5つの誤解について解説した。
Backblazeは、「LTOテープからクラウドストレージへの移行により、ほとんどの人がバックアップデータに簡単にアクセスできるようになり、メンテナンス負担が軽減される。こうした利点は、IT担当者には周知だが、それ以外の人にはあまり知られていないかもしれない」との認識を示し、LTOテープからクラウドへの移行について、企業が十分な情報を得た上で決断を下す助けになるように、この移行に関するよくある誤解について説明した。
最初の誤解は、LTOテープベースのバックアップソリューションからクラウドストレージへの移行は、コストが高くつくというものだ。
Backblazeは既存のデータ量や年間の追加データ量、日々バックアップする差分データ量を入力することで、移行によるコスト削減効果を確認できる自社の計算ツールを引き合いに出し、こうしたツールを使って試算することで、移行コストに関する誤解が解消されるとしている。
例えば、既存のデータ量が50TBで、毎年5TBずつ追加し、1日当たりのバックアップデータ量が500GBだとすると、LTOテープはクラウドストレージよりも、バックアップ費用が1.74倍になるという。この計算ツールでは、計算に使用する前提条件の詳細も、適宜調整できる。これらの前提条件には、LTOバックアップモデルやデータ圧縮率、データ保持ポリシーなどが含まれる。
バックアップデータをクラウドに保存する方がLTOテープに保存するよりもはるかに安上がりであるとしても、全てのデータを移動するコストについてはどうなるのだろうか。
頻繁にアクセスされるデータアーカイブを持つ企業、特に、エンドユーザーにデータを提供している企業は、クラウドで多額のエグレス料金(クラウドサービスから外部へのデータ送信にかかる料金)の負担を心配する。当然ながら、クラウドの乗り換えなどにより、「全てのデータについてのエグレス料金が一度に発生したら」と考えると、途方に暮れてしまうだろう。だが、現在では、データ移行にかかる全費用(エグレス料金や転送コスト、管理費用など)が不要になるサービスも登場している。
Backblazeはそのようなサービスの一例として、同社が最近発表したものを挙げた。このサービスは米国やカナダ、欧州の企業がクラウドやオンプレミス、LTOテープから、Backblazeのクラウドストレージサービスに10TB以上のデータを移行する費用を、レガシープロバイダーのエグレス料金も含めて、Backblazeが負担するというものだ。10TB以上のデータを最低1年間、Backblazeのクラウドストレージに保存することなどが利用条件だ。
このサービスでは、LTOテープの読み取りや、高速転送プロセスなど、クラウドストレージへのデータ移行を容易にする一連のツールやリソースが提供され、技術サポートも付属する。データは数日以内に迅速かつ安全に転送されるという。
オンプレミスやオフサイトで保管されているLTOテープからクラウドへの移行によって新たに発生するリスクを企業が心配するのは、もっともなことだ。通常、LTOテープはインターネットから切り離されており、サイバー犯罪に遭わずに済む。だが、セキュリティ状況を総合的に考慮すれば、クラウドの利用により、さまざまなリスクに対してより大きな安心が得られる。
・データのオフサイト化によるリスク軽減の有無
サイバー犯罪が大きな脅威であることは間違いない。だが、他のリスク要因についても、同様に考慮する必要がある。例えば、「自然災害の多い地域に事業所がある」「老朽化したビルに本社を構えている」など、さまざまなリスク要因がある。データのコピーをオフサイトに置くことは、ほとんどの災害から回復するために必要不可欠だ。
・オブジェクトロックの適用による仮想エアギャップが可能
これまで、LTOテープの方がクラウドよりもセキュリティ面で優れている要因として挙げられてきたのが、エアギャップ(外部ネットワークからの物理的な隔離)だった。だが、オブジェクトロックによって不変性を設定することで、全てのクラウドデータに仮想エアギャップを設けることができる。この機能はVeeam Softwareや、MSP360など多くの主要なバックアップ管理ソフトウェアプロバイダーから提供されている。
・IT担当者に負担がかからないセキュリティ強化が可能
クラウドストレージプロバイダーは保有データの耐久性の維持に尽力しており、週7日、24時間、保守と運用管理に当たっている。そのため、企業のIT担当者は、ハードウェアとソフトウェアが最新に保たれているかどうか、適切に維持されているかどうかを気にせずに済む。セキュリティ更新やパッチ、アラート対応は、プロバイダーに任せられる。
一部の業界では、特定のデータセットをオンサイトで管理することが規制で義務付けられている。以前は、一部のデータをオンサイトで、一部のデータをクラウドで管理することは、面倒極まりなかった。だが、ハイブリッドサービスが大きく進歩し、こうしたデータ管理がよりスムーズに効率的に実行できるようになった。
オンサイトで管理する必要がないデータについては、クラウドストレージを使って差分バックアップを日々実行し、古いアーカイブデータについては、LTOテープで維持することが可能だ。これにより、LTOテープの数を気にする必要がなくなるだけでなく、必要であれば、クラウドベースのファイルを即座に復元することもできる。
StarWind Softwareの仮想テープライブラリ「StarWind VTL」やArchiwareのデータマネジメント、データセキュリティ製品「Archiware P5」などのソフトウェアを使用すれば、クラウドへのバックアップを直ちに開始するとともに、移行作業をより管理しやすくすることができる。
クラウドへの全面的な移行がすぐにできない場合は、アーカイブデータの一部を引き続きLTOテープで保持し、より重要な最新データをクラウドに移行するハイブリッドアプローチが向く。ハイブリッドシステムには幾つかの選択肢があり、自社のスケジュールに合わせてクラウドに移行できる。
企業がハイブリッドシステムを運用する方法には、次のようなものがある。
・日付ハイブリッド
特定の日以降のデータをクラウドストレージに保存し、それ以前のデータをLTOテープで保持する
・クラシックハイブリッド
フルバックアップをLTOテープに残し、差分データをクラウドに保存する
・タイプ別ハイブリッド
一部の種類のデータをLTOテープに保存し、他の種類のデータをクラウドに保存する。例えば、従業員のファイルをLTOテープに保存し、顧客データをクラウドストレージに保存するという方法だ
クラウドストレージの方がLTOテープよりもコストが安く、LTOテープからクラウドへの移行は非常に容易であり、移行コストも管理可能だというのがBackblazeの結論だ。さらに、クラウドへの移行には明確な他のメリットもある。
LTOテープには物理メディアという性質上、アクセスに制限がある。必要なデータがオフサイトにあるならLTOテープ保管場所に移動し、探し出す必要がある。大量のLTOテープのカタログを整理することも容易ではない。
だが、全てのデータをクラウドに置けば、適切な条件を満たす限り、組織内の誰もがすぐにアクセスできるようになる。これにより、IT部門の負担が軽減され、組織は既存のリソースとインフラをより有効活用できる。
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