「スマホの次」は何が来る? NRIが2028年までのIT市場を予測「6G」「耐量子計算機暗号」なども:求められるのは「没入性」や「共有性」
野村総合研究所は、ITに関連する主要産業に関する2028年度までの国内市場の動向分析と市場規模の予測を発表した。「通信サービス」「デバイス」「メディアと広告」「マーケティング」「データ流通」「プライバシーとセキュリティ」「HR Tech」について取り上げている。
野村総合研究所(NRI)は2022年12月22日、ITに関連する主要産業について、2028年度までの国内市場の動向分析と市場規模の予測を発表した。
産業と市場の全体を俯瞰する
NRIは背景として「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を契機としてデジタル化が進み、その結果として市場が変化、融合してきている。そのため従来のような市場区分ごとではなく、より大きな視点で産業と市場の全体を俯瞰(ふかん)することを望む声が増えていた」と説明している。今回の発表はそういった声に応えた形だ。
なお、NRIは7つの主要産業を取り上げているが、本稿ではその中から「通信サービス」「デバイス」「データ流通」「プライバシーとセキュリティ」について触れる。
通信サービス
NRIは、事業者間競争や料金プランが新たなフェーズに進むと予測している。既存料金プランからの乗り換えは一巡し、今後は大規模通信障害への対策や各種手続きのオンライン化が鍵を握るという。「これまでの従量制に加えて、保証される通信の品質によって料金が決まる新料金プランが登場する可能性がある」としている。
通信技術は「5G」(第5世代移動通信システム)から「6G」(第6世代移動通信システム)へと進化するとみられる。6Gは、通信速度の向上に加えて、遅延減少や消費電力抑制といった特徴を備える。期待が高まる6Gだが、NRIは「ユーザーニーズを見極め、価値を一方的に押し付けるのではなく、正しく見極めた価値を提供しなければならない」と通信事業者に対して警鐘を鳴らしている。
デバイス
消費者に新たな刺激を与えてくれるデバイスの登場が待ち望まれている。スマートフォンの「次」には「没入性」やコミュニケーションにおける「共有性」が求められるとNRIは予測している。
スマートフォンの買い替えサイクルが長期化して携帯電話機器市場が縮小する中、メーカーや販売代理店には新たな収入源が必要だ。NRIは、今後の携帯電話機器メーカーにとって「廉価版スマートフォンのラインアップ拡充」と「スマートウォッチなどの周辺機器への進出」が要となると考えている。販売代理店については「新サービスの展開」や「中古の携帯電話端末販売」が進むという。
データ流通
NRIは「GAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)は競争環境やルールに対する事実上の決定権を握っている」と指摘している。
GAFAは、インターネット上で獲得した競争優位性を基に、自動車関連、スマートホーム、ウェアラブル端末などIoT(Internet of Things)機器などを通じてリアル空間でのデータ集積も進めている。これは「プラットフォームに依存する全ての消費者や事業者に対して強力な交渉力を保持していることと同義だ」とNRIは述べている。
プライバシーとセキュリティ
「プライバシーガバナンス」が必須となり、NRIは「プライバシーTech」の活用が進むとみている。同社は、個人情報保護法ではグレーゾーンになっているデータを取り扱うことで発生する“炎上”を予防するには、プライバシーガバナンスの構築に取り組むことが重要だとしている。
セキュリティについては、量子コンピュータの進化によって攻撃や脅威が多様化し、「耐量子計算機暗号」を実装したセキュリティ対策が進むと予測している。今後は、耐量子計算機暗号を実装した製品やサービス、もしくは量子暗号通信、量子コンピュータなどを高度に組み合わせたセキュリティ製品によって、こうした量子コンピュータによる脅威への防御が高まる可能性があるとしている。
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