リサーチャー、サイエンティスト、英語教師……多才な米国のエンジニア、本職は「地下足袋職人」?:Go AbekawaのGo Global!〜Aaron Bramson(前)(4/4 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はGAテクノロジーズのAaron Bramson(アーロン・ブラムソン)さんにお話を伺う。サイエンティストとしての仕事の他に、愛する地下足袋の会社まで立ち上げてしまうバイタリティーあふれる同氏の幼少期は意外にも「普通の子」だったという。
教えたいけど教えられないというジレンマ
阿部川 ノースイースタン大学で数学の修士、ミシガン大学で哲学と政治学の博士号を取得されていますが、アカデミックな世界で研究者や学者になろうとは考えなかったのですか。
アーロンさん そうですね、端的に言うなら「アカデミックな世界では私がやりたいことができない」と思ったのです。
私の専門は「複雑系」と呼ばれる領域で、幾つかの専門分野が混ざり合っています。今なら学位を組み合わせて複雑系に合ったコースを作り出すこともできますが、当時は難しかったし、複雑系で博士号を取得できる大学はそれほど多くありませんでした。
「複雑系センター」という組織を持っていたミシガン大学で哲学と政治学を専攻し、博士号を取りました。2004年には大学で自分の講義を持つことになったのですが、残念ながら複雑系の教科(ゲーム理論やネットワーク理論、エージェントベースモデリング理論などを全て内包した教科)を教えることはできませんでした。だから自分の講義では普通のマクロやミクロの経済学を教えていました。
そういったいきさつもあり、私がやりたかったことはアカデミックな世界の中にはない、と考えるようになりました。もし何かうまいやり方があれば大学に残って研究者として仕事をしていたかもしれません。ただ、もしそうだったとしても、半分は伝統的な教科を教え、半分は先進的な研究を行う形になるので、そういった状況に満足できずに常に不満を抱えていたと思います。
阿部川 教えたいけれど教えられない、という状況は不満がたまりそうですね。
アーロンさん はい。「教える」についていえば、ワークショップのような方式で教えることが大好きです。学びたいことがある大学院生を、ワークショップなどでさらに鍛えることは、こちらも多くを学べる刺激的な機会です。学びたくない、怠けたいといった学生に教えるのはフラストレーションがたまるだけです。
もし、「研究とワークショップだけしていればいい」という大学があれば、私にとって理想的な職場ですね。ちなみにシンガポールやベルギー、日本で仕事をしていたときは、それができていました。通常は業務として研究を行い、特定のことを学びたい人はお金を払って私のワークショップに参加する、そんなふうに仕事をしていました。
「どこにでもいる普通の子ども」。自身はそう表現するが、勉強に音楽、スポーツ、アルバイト、そして研究と、幼少期から社会人になるまで、持ち前の好奇心と行動力でさまざまな経験を積み上げたアーロンさん。後編はそんなアーロンさんの現在の仕事について話を聞く。
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