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Windows Updateは「炭素に対応」?――Windowsで見つけた“残念な日本語”2022年更新版山市良のうぃんどうず日記(244)

Windows 11の最新バージョン「Windows 11 2022 Update(バージョン22H2、ビルド22621)」を使い始めて1カ月以上たちますが、製品全体の品質はさておき、やっぱり日本語のローカライズで気になる点が多々あります。

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山市良のうぃんどうず日記

Microsoftの機械翻訳はいつも“Update”が苦手

 「半期チャネル(Semi-annual Channel、SAC)」だった「Windows 10」は、2018年のリリースからバージョンやビルド番号とは別に「Windows 10 Month YYYY Update」という形式のマーケティング名称を持っていました。SACとしての最後のバージョン(現在は1年に1回の一般提供チャネル)は、「Windows 10 November 2021 Update(バージョン21H2、ビルド19044)」です。

 Microsoftご自慢の機械翻訳は、この名称をよく誤訳してきました。例えば、「Windows 10 October 2018 Update(バージョン1809、ビルド17763)」を、「Windows 10 2018年10月の更新プログラム」や、単に「10月の更新プログラム」と誤訳したことがありました(画面1)。

画面1
画面1 Windows 10 October 2018 Updateへのアップグレード後に表示された「Windowsへようこそ」の画面には、「10月の更新プログラムへようこそ」と表示された

 その後のバージョンでも何度も見掛け、その都度Microsoftにフィードバックし、しばらくして修正されるという状況が繰り返されてきました。Windows 10の名称の誤訳は、機能更新プログラムによる新バージョンへのアップグレードが毎月の品質更新プログラムのように見えてしまって、少なからずユーザーを混乱させてきたことでしょう。

 「Windows 11」の最初のバージョン(バージョン22H1、ビルド22000)は、「Windows 11 Original release(最初のリリース)」とも呼ばれます。先日リリースされた最新バージョン(バージョン22H2、ビルド22621)は、「Windows 11 2022 Update」と呼ばれ、一般提供チャネルのマーケティング名称は、Windows 10の「Windows 10 Month YYYY Update」から「Windows 11 YYYY Update」になりました。

 案の定、Windows 11のダウンロードページには、機械翻訳が誤訳した「Windows 11 2022更新」という名称が確認できます(画面2)。2022年10月にリリースされたWindows 10 バージョン22H2は「Windows 10 2022 Update」と呼ばれるようになりましたが、ダウンロードサイトでは「Windows 10 22 更新」という名称になっています。

画面2
画面2 Windows 11の最新バージョンをダウンロードしようとすると、そこには「Windows 11 2022更新」という名称が(画面は2022年11月2日時点のもの)

 Microsoftの機械翻訳は機械学習(Machine Learning:ML)の技術が利用されているはずですが、人(ユーザー)からのフィードバックを学習しないようです。

“後日”は“後で”に改善

 日本語の問題は、製品のローカライズにまで及んでいます。どう考えても、機械翻訳か、日本語にネイティブではない人が訳したとしか思えない表現に出くわすことがあります。

 Windows 10までは「システムロケール」を変更しようとすると、再起動を確認するダイアログボックスに「キャンセル」の文字があります。「キャンセル」というのは、いま再起動しないという意味で、システムロケールの変更をキャンセルするものではありません。次回再起動された際に、システムロケールが変更されます。そのため「キャンセル」という表現はもともと不適切でした。

 「Windows Server 2022」(バージョン21H2、ビルド20348)では、これが「後日」(英語版では「Later」)に変更されました。このボタンの意味をより示すものになりましたが、「後日」は受け入れられません。「Windows Insiderプログラム」でフィードバックがあったのでしょう。翌月リリースされたWindows 11の最初のバージョンでは「後で」になっていました(画面3)。

画面3
画面3 システムロケール変更時のダイアログボックスの改善(左からWindows 10、Windows Server 2022、Windows 11)

“Terminal”“ターミナル”“Windows ターミナル”どれかに統一してくれ

 Windows 11の最新バージョンで「スタートメニュー」を開いてみてください。何か違和感はありませんか。「Terminal」と「ターミナル(管理者)」が並んでいますが、どちらも「Windowsターミナル」アプリを起動するメニューであり、前者は標準ユーザー、後者は管理者として起動します(画面4)。

画面4
画面4 標準ユーザーには「Terminal」で、管理者には「ターミナル(管理者)」

 なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか(開発中のより新しいWindows Insiderビルドでは修正されているらしいです)。

 検索ボックスで検索しても混乱します。「terminal」を検索すると「コマンドプロンプト(cmd.exe)」が見つかります。「ターミナル」を検索すると「Windowsターミナル」アプリが見つかります。そして、「Windowsターミナル」で検索すると何も見つかりません。

 「Windows ターミナル」(「Windows」の後に半角スペースが入る)を検索すると、「ターミナルの設定」(設定|プライバシーとセキュリティ|開発者向け)へと誘導されます(画面5)。

画面5
画面5 Windows 11の検索ボックスで「Windows ターミナル」アプリを見つけるのはとても難しい

 おそらく英語環境ではこんな問題には遭遇しないと思いますが、Windows 11の検索ボックスを日本語環境で使いこなすことは至難の業なのかもしれません。

Windows Updateが“炭素に対応”?

 Windows 11の最新バージョンでは、「Windows Update」が環境問題に配慮するようになりました。地域の二酸化炭素(CO2)排出量データに基づいて、Windows Updateをスケジュールする他、アイドル時の二酸化炭素排出量を削減するために、画面とスリープの既定の電源設定に変更が加えられています。

 Windows Updateを開くと、アップグレード直後は「Windows Updateは、二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます」と表示され、その詳細情報をクリックすると、何とも残念な日本語ページに誘導されました(画面6)。

画面6
画面6 製品の日本語と、詳細情報を提供するWebサイトの表現が不一致。機械翻訳ならそう知らせてほしい

 「carbon aware」が「炭素に対応」はどう見ても機械翻訳でしょう。「ます。」に続いて「加えた。」となっている文もあり、調子が狂います。

 最新バージョンのWindows 11のリリースから1カ月以上たち、多くのユーザーが目にしたであろうこのページのおかしな日本語がいまだに放置されているのはいかがなものでしょう。

“おける”はうける

 最後に、2022年夏に見つけた極上のサポート情報を紹介します。発見時にすぐにこのページの問題をフィードバックしたので(本稿を執筆する3カ月前)、いつ差し替えられるか、または削除されるかもしれないので(「Windows XP」を対象にしたサポート情報なので削除される可能性があります)、記念にスクリーンショットを掲載しておきます(画面6)。

画面7
画面7 この日本語のサポート情報で問題を解決できるとは思えない

 全く文章になっていないばかりか、「おける」「デスクトップの蛍光」「AutoEndTasksペン」など、思わず二度見してしまいました。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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