検索
連載

ロックやパンクが好きな人は、強い言葉をよく使う?Go AbekawaのGo Global!〜Vipul Mishra(前)(2/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回は八楽のVipul Mishra(ビプル・ミシュラ)さんにお話を伺う。捉え方によって正解が変わる授業があまり好きではなかった少年は、数学を通じて曖昧さが詰まった「言葉」の領域に手を伸ばす。

Share
Tweet
LINE
Hatena

2カ月で大学を辞めた理由

阿部川 大学はTribhuvan University, School of Engineering(トリブバン大学工学部)に入学しましたが、すぐ辞めていますね。これはどうしたんでしょうか。

ビプルさん 入学から2カ月たったとき、日本の大使館から「あなたの日本の奨学金の申請が合格となった」と通知が来たんです。大学入試の前に応募していたのですが、審査に1年ぐらいかかるって言われていたので、日本に行けるかどうかも分からないし、取りあえずちゃんと大学に行こうかといったん進学したんです。

阿部川 どうして日本の奨学金制度に応募したのですか。

ビプルさん 幼いころから海外に憧れがあったんです。世界の有名な建物の写真を見たり、ハリウッドの映画を見たり、日本のアニメを見たり。高校時代はもう、ずっとハリウッドばっかり見て時間を過ごしていました。いろいろなところに行って、いろいろな人たちに会って、いろいろなもの見たかったのです。それで海外に行きたいって思っていたのですが、実家は経済的にそこまで裕福ではなかった。

画像
インタビュー中のビプルさん

 そこで、他の国へ学部で行ける奨学金制度を探していました。ある日、高校の掲示板に日本大使館に推薦されて日本に行った卒業生の写真が貼られているのを見て「これは道があるんじゃないかな」と思って、1〜2年ぐらい受験勉強を頑張って応募しました。

阿部川 奨学金の試験っていうのは、どんなものだったんですか。

ビプルさん 物理、化学、英語、日本語、数学――他にもありましたけど、忘れちゃいました(笑)。5、6教科ぐらいペーパー試験を受けて、その後大使館が世界中の学生の中から数人の合格者を選んで日本の文部科学省へ推薦します。私はその間に大使館のすごく偉い人と面接をして、さらに日本の文部科学省でも審査を受けました。

阿部川 そして大阪大学日本語日本文化教育センターで学部留学生プログラムを受けたのですね。

ビプルさん そうです。そこで日本語と物理、化学、数学を学んで、その後試験を受け、試験の点数によってどこの大学に行けるか、大学にそもそも行けるかという審査がまたさらにありました。

阿部川 何回試験させるんだっていう……。でも、それらをパスして、大阪大学の工学部へ進学したのですよね。専攻は情報工学。1番勉強したのはどんなことだったんでしょう。

ビプルさん 確率や統計の科目ですね。すごい時間をかけて勉強した覚えがあります。今もかなり役に立っています。機械学習はほとんど確率統計ですから。

大学院から「言葉を解析すること」に興味を持つ

阿部川 その後、奈良先端科学技術大学院大学の大学院で情報工学を専攻されます。修士論文はどんなことを書いたのですか。

ビプルさん ソーシャルメディアのテキスト解析によって、「どういう音楽を聴く人がどういう感情を表現するのか」を調べました。ロックを聞く人は楽しい言葉をよく使うのか、悲しそうな言葉をよく使うのか、メタルやパンクを聞く人は言葉もきついのかとか。そういうことに興味を持って、解明したいと思って研究を進めました。


編集中村
編集 中村

 小学校のときは言語系に苦手意識があったビプルさんが、大学院では言葉の解析に関わるというのは面白いですね。言葉という定性的なものを定量的にすることは、翻訳はもちろん、AI(人工知能)などにも有用なので夢が広がりますね。ちなみに私は「答えが1つではない」という理由で国語(特に文章題)が好きでした。


阿部川 「ロックやパンクが好きな人は暴力的な言葉をよく使う」とか?

ビプルさん 確かにコミュニティーの単位で見ればそういう傾向は高かったんですけど、その人たちが別のコミュニティーに投稿するときは表現が変わっていました。だから、「人自体がそういう感じを持っているのではなくて、コミュニティーに合わせている」という結論が出ました。

阿部川 なるほど、ロック好きで集まっているときは強気だけど、1人になるとそうとは限らないと。

ビプルさん そうです。「言葉を使って言葉を解析して、何かを研究する」ということをやっていました。基本的にソーシャルメディアを対象にしていました、研究室の名前が「ソーシャルコンピューティング研究室」なので。

画像
ビプルさん自身も音楽がお好き

阿部川 在学中からお仕事をされていたのですよね。

ビプルさん クレブという会社で1年間、アルバイトをしました。溶接機器の研究開発で用いるソフトウェアなどを作っていました。

阿部川 もう完全にプログラマーですね。

ビプルさん そうです。基本的にそこでソフトウェア開発を学んだと自覚しています。山下さんっていうボス(上司)がすごく優しくて、面白くて、すごく丁寧に教えてくれました。

 クレブは外国語学部の友達に紹介してもらったんです。その友達も開発に興味を持っていてアルバイトをしていたのですが、たまたまランチ会みたいなもので会ったときに「ビプルもやれば」って紹介してもらいました。

阿部川 偶然といえば偶然ですけど、そういうのはやっぱ引き合うんでしょうね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る